合宿サタ伊伊吹がこんこんと隣で眠り続けている。いや、一度どころか複数回瞼が開いたはずなのだが、またすぐにソレを閉じて惰眠を貪っているのである。
ほんの少し肌寒さを感じて目を覚ませば、隣で眠っていた彼女が布団を1人で包むようにしていた。要は布団を剥ぎ取られていたのだ。
まあ、別に構わないかと思い、彼女が目を覚ますまで本を読むことにした。しかし、彼女は起きてこない。恐らく起きようとしていない。
休日、何も予定がないとこうなるのか。ほんの少し新鮮な驚きを抱えながら、寝ている伊吹の鼻をぎゅっと摘んだ。しばらくすると顔を顰めて呻き始める。当然だ。鼻で息をすることができないのだから。顔を横に振って俺の指から逃れようとしている。
「ははは」
「う…………ン」
しかし、彼女は目を開こうとはしない。人間というものは、危機が迫っていたとしてもこれほど隙だらけなのだろうか。それとも、彼女が特段に油断しすぎているだけなのだろうか。
「どちらにせよ、俺が守れば良いだけの話か」
そう静かに決意を固めて、彼は読書に戻っていった。