パラロイ軸ファ×モブ♀(書きかけ)SEE THE WORLD2開催おめでとうございます!
イベスト何度か読み返しましたがやっぱり最高……!そしてどんな世界線でもファウストが大好きです。
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※捏造設定多数※
◆捏造世界観設定
アシストロイドの普及によって(特にハイクラスの)婚姻率、出生率が低下、人口の大幅な減少が危惧されている。
それに伴い、出産証明書の提示で報奨金がもらえるようになった。
出生率の減少は緩やかになったが、一部で報奨金目当ての出産や育児放棄が増え、養護施設で暮らす子どもの数は増加している。孤児が集まってできたスラム街がある。
◆こんな話
スパイ疑惑を掛けられた新人研究員♀の調査のため送り込まれた猫型アシストロイドを通して顔のない交流をしていくうちに、なんやかんやに巻き込まれてめちゃくちゃ好きになっちゃう感じのいつもの小説です。
ではめっちゃ中途半端ですが書きかけの本編どうぞ!反応くれたら頑張って続き書きます!!!
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「はぁ……嫌だなあ」
フォルモーント・ラボラトリーに多数ある部屋の中で、殊更厳重なセキュリティに守られた一室。機械の発する寒色は呼吸に合わせて上下する胸のように、緩やかな強弱を持って個室にしては広い室内に光を放っていた。
青白い光が表情の深刻さに拍車を掛けている。心底、本当に、心の底から嫌なのだろう。フィガロは先ほどから「嫌だ」とため息しか発していなかった。
傍らでよしよしと頭を撫でていた愛らしい顔のアシストロイドは、オーナーとは似つかない明朗な声を掛ける。
「大丈夫じゃ、フィガロちゃん!視聴者が何千何万と居るニュース番組のインタビューも完璧にこなせるんじゃから、たかが数人相手に数分喋るくらい、何てことないって!」
「何てことありますよ……。不特定多数相手のインタビューだって嫌ですけどね、あれはモニター越しでしょう。これは対面じゃないですか。数人だろうと心労の度合いは段違いですよ」
「未起動の人型アシストロイドが並んでると思えばいいんじゃない?討論の場じゃないし、あっちは黙って座ってるだけ。倉庫に並んでる出荷待ちのロイドたちとそう差はないじゃろう」
「わかりませんよ。ワーキングクラスの連中ってハイタッチだの握手だのハグだの、やたら気軽に触れようとしてくる層が居るでしょう。そういう奴らにはアシストロイド依存になる人間の気持ちなんてわかりっこないんですから」
はあ、ともう一度ため息を吐いてから、天井のプレートを見上げて訊ねた。
「で、何人でしたっけ?今年度の新採用は」
「4人じゃ」
「多いな……」
「この規模のラボなら少ない方じゃろう」
「本当は一人だって取りたくないくらいですよ。アカデミアとの付き合いで採用をゼロにできないだけです。まあ……仕事なんでやりますけどね。希望を胸に入所してくる新人たちの心を掴んで、やる気を引き出すスピーチをします」
「頑張れ!フィガロちゃんならできる!」
「まあね……できないとは思ってませんよ。人前に出るのが嫌なだけです」
「嫌な仕事も立派にこなして偉い!終わったらめいっぱいよしよししてやるからの。……ところで、終わってからで良いのじゃが、我と同じ型のアシストロイドを……」
「それは余計です。やる気を削ぐ発言は止めて」
◇
街中に薄紅の花びらが散る。桜を模したホログラムがあちこちで弾けて淡いピンクを振りまくと、春が来たのだと実感する。
ワーキングクラスにも、ハイクラスにも、人間にもアシストロイドにも、春は平等に訪れる。そわそわした落ち着かない、不安と期待の入り混じった胸を押さえながら、研究所へと向かうバスを待つ。
リュックのポケットからパスケースを取り出して、きゅっと握り締めてみた。新品のパスケースは生地がまだ馴染まず突っ張っていて、緊張しまくっている私そっくりだ。
ちょっとレトロな感じのバスが来る。丸みを帯びたデザインは愛嬌のある生き物みたいで、少しだけ緊張が和らいだ。
『HELLO』の表示に、握っていたパスを翳す。どきどきする間もなく表示は『WELCOME』に変わった。車内は無人で、運転手さえ見当らない。窓側の席に腰を下ろすと、バスは静かに動き出した。
車窓から見えるにぎやかなホログラムたちが段々静かになっていく。光源が足並みの揃った簡素な電灯だけになると、目の前に巨大な施設群が現れる。フォルモーント・ラボラトリー……圧倒的な権威を持つこの研究所が、アカデミアを出た私の就職先だった。
いかにも「秘密がたくさんありますよ」といった雰囲気を醸し出している厳重なゲートが、バスの接近に伴って自動で門を開いていく。乗る時にパスを翳した瞬間に、私の情報はラボに送信されている。今頃ラボのどこかのモニターに、私のデータと位置情報が映し出されているはずだ。
「こんにちは。フォルモーント・ラボへようこそ!」
「あ……こ、こんにちは」
停留所の案内表示なのだろう。バスが描かれた緑色のホログラムの下で、男の人が待っていた。胸元にラボのロゴが付いた作業服を着て、愛想の良い笑顔を浮かべた、見るからに好青年といった感じの人だ。
研究者って取っ付きにくい人が多いのかと思っていたけど、メディアによく登場するこのラボの有名な博士といい、研究者とは意外とコミュニケーションスキルが求められるものなのかも知れない。
「……?どうかしましたか?」
「あっ、いえ!えーっと……なんでもない、です」
ほっぺたがぴくぴく震えてる。ああ、きっと引き攣ってしまってるんだろう。笑顔を作るのって本当に難しい。
人当たりの良いお手本のような笑みのその人は、じい、と私の瞳を見た。
「■■さんですね」
「あ、は、はい。そうです」
「データではアシストロイドの所有歴はなしとなっていますが、身近にアシストロイドの所有者は?」
「えっ?えーと、いません」
「アシストロイドと生活したことは?」
「な、ないです!そんな高級なもの、とても……」
庶民が一生働いたって買えるわけがない。だから、作る側に回ろうと……そのためにこの研究所に辿り着いたのだ。
「…………」
さらに数秒の間を空けて、その人はにこやかな笑みを作った。
「失礼しました。入所式の会場はこちらです。ご案内しますね」
「……?」
なんだったんだろう。もやもやした不安を残したまま、早足で後を付いていった。
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『先月から名前が挙がってた二人だけど、やっぱり黒だった。取り調べはしてるけど、簡単には吐かないだろうね』
『多いですね、最近』
『多いよ。これからも増えるだろうし、もう既に居るかもしれない。守りが堅ければ堅いほど、内から攻めた方が崩しやすいからね。気になることがあればすぐに報告して。きみ達の勘を信じるよ。挙動や言動に不自然さを感じたら教えて』
『はい』
『あとは……そうだ。入所式は無事終わったよ。明日から新人が入るから、各々フォローよろしくね。全員アカデミア上がりだし素性の調査はしてるはずだけど、スパイの可能性がないわけじゃない。ラボにとって大事な時期なんだ。今以上に慎重に目を光らせておいて欲しい。俺からは以上だけど、何か報告ある?』
『博士、実はちょっと気になることが』
『え、早速?きみ、新人の研修担当だったよね』
『はい。新人の一人にアシストロイド依存の傾向が見られます。今年度の新人は全員ロイド所有歴なしで、身近に所有者も居ないはずなので、気になって』
『どの子?データ表示して』
『彼女です』
『ワーキングクラスの下層だね。施設育ちで里親もなし。普通なら接点があってもペット型ロボットくらいのものだと思うけど』
『昨年スラム街で孤児と暮らす違法アシストロイドが通報・処分された事例がある』
『あー……あったね。違法で所持してる分までは把握できないからなあ……』
『ちなみにアシストロイド依存の傾向ってどんな?』
『相手を正視できないことと、会話時の心拍・呼吸の乱れ、体温の低下です』
『普通に緊張してたんじゃない?初日だし』
『その可能性もありますが、現在の所員の入所日のデータと比較すると少し反応が違うんですよね。平均よりも恐怖している。何に、かまではわかりませんが』
『なるほどね。不自然さを感じたら教えてと言ったばかりだし……調査してみよう。彼女がただの臆病な新人なのか、それともこの研究所の敵なのか、ね』
◇
「アシストロイドがもらえるんですか!?」
自分でも驚くほど大きい声が出た。私、こんな声量あったんだ!?
「あげるんじゃなく、貸し出しです。研修期間の補助としてね。これからアシストロイドについて研究するのに何も知らないんじゃ困るだろうってことで……今年度から新人に一台ずつ支給されることになったんだ。といっても人型じゃなく、小型のものだけどね」
「良い良い、全然良いです!寧ろその方が……あっ、いえ、貸して頂けるだけで、本当になんでも嬉しいです……!」
家庭用のペット型ロボットだって高級品なのに、小型とはいえアシストロイドなんて、私の住んでるボロアパートの家賃何年分なんだろう?
「あくまで研修の一環だから条件があるんだ。説明するから呼ぶよ。おいで」
シューと微かな音と共にドアがスライドして、廊下の向こうから四つ脚のロイドが顔を出す。
「猫ちゃん!!!!!!!!!」
現れたのは四角い顔に三角の耳が付いた、猫型のアシストロイドだった。
「貸出期間は三カ月。それまでは自宅に持ち帰ったり、ラボの外に連れ出しても構わないよ。……というより、できるだけ一緒に行動して欲しいんだ。研究のための貸し出しだから基本的には何をしても構わないんだけど、バッテリーを抜いたり分解するのは禁止。夜間もスリープモードにして、三カ月の間は電源を落とさないようにして。……聞いてる?」
「えーと、ずっと一緒に居ていいって……」
「三カ月間はね」
「三カ月も……!?」
「分解するのは禁止」
「しません!元に戻せる自信ないし……」
「アカデミアでは成績優秀だったんでしょう?後は電源を落とさない。しっぽの付け根にスイッチがあって、押すとスリープモードになるから。就寝時はそこを押して」
「わかりました」
「それから、期間終了後に猫型ロイドに関する研究レポートを提出してもらうから。レポートの詳細はデータボックスに送るね」
「はい」
「何か質問はある?」
「あ……この子の名前は?」
「動物型アシストロイドは基本的に個体名を持ってない。製造番号はあるけど、名付けを希望するオーナーが多いから。返却されたら初期化するから、期間中は好きな名前を付けていいよ」
「そうですか……わかりました」
「他に不明点は?」
「たぶん……大丈夫です。今のところ」
「よし。じゃあ呼んでごらん。きみの声を認識する」
「えっ、あ、えーと……お、おいで?」
匂いを嗅ぐように、液晶の猫の鼻がひくひく動く。それから助走を付けて、ロイドの猫ちゃんは私の腕に飛び込んで来た。
「わあ!うっ……可愛い」
「今日からきみがこの子のオーナーだよ」
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『嫌だ。断る』
『きみが一番適任なんだよ。猫型に詳しいし、抱えてる案件もそろそろ目途がつく頃でしょう?一応三カ月ってことにはしてるけど、白だとわかれば引き上げちゃっていいからさ』
『覗き見みたいじゃないか……』
『調査だよ。大義のためには多少罪悪感を捨てることも必要さ』
<つづけ……!!!>