再訪、きさらぎ駅『―――鉄道をご利用いただきありがとうございます。各駅停車、―――行きです』
「……ん……」
いつの間にか眠っていたらしい。電車内の放送の声で意識が浮上する。
パチパチ、と瞬きを数回。
目の前の座席には誰も座ってない。……それどころか周りを見渡すと車両の中には自分以外誰もいない。
(……あれ……?この時間のこの電車こんなに空いてたっけ……?)
言いようのない不安感を覚える。
『次は、『きさらぎ駅』、『きらさぎ駅』……お出口、左側に変わります』
再び車内に放送が流れる。その内容に、僕は弾かれるように座席を立った。
窓の外を見れば夜よりも深い闇に濃い霧が出ていた。
「……っ」
反射的に普段持ち歩いている仕事用鞄の中を確認する。
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