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    フスキ

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    フスキ

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    堀清と兼さんが探偵やってるパロ、二話目!清光との出会いとか編!バトル含みます。
    このあとはちょっとずつ清光を成長させていきたい…清光が二十歳になったらシリーズ終わります。たのし!

    #堀清
    pondSnail

    堀清+兼探偵パロ 2 加州清光はいわゆる孤児だ。親から育児を放棄され、施設に入っていた子だった。
     生まれた時から、彼は一度も『いい環境』に身を置いたことがない。それなのに彼は心優しく強く美しい。出会った頃からそうだった。だからあれは清光が持って生まれた魂の高潔さなのだろうと堀川は思っている。

     そんな彼は今日もまっすぐに堀川を見ている。視線に気づきながら、堀川はなんでもない顔でブラックコーヒーを淹れた。
    「……堀川、胃が荒れるよ。一日に何杯も飲んでんだから、ほんとに痛くなっちゃうって」
    「大丈夫だよ。僕は大人だから、ね」
     口元で笑ってコーヒーを啜ればその子供は悔しそうに口を噤む。かわいいなあ。いけない大人に引っかかっちゃって可哀想に。遠いところでそんなことを思う。
    「国広ォ、オレにもコーヒー」
    「はーい。兼さんにはミルクもお砂糖もたっぷり入れようね~」
    「どういう意味だ喧嘩売ってんのか」
     分かっているくせに乗ってくれる兼定はまったくいい相棒だ。憎まれ口を叩くだけ叩いて、実際にはミルクだけを足してカップを差し出す。
     兼定が啜った。
    「……酸味強すぎんだよなあ。よくこんなん好きで飲むぜ」
    「お礼のひとつも言えない悪い子にはお茶請けあげないよ」
    「うっ……」
     取り繕うように、ありがとな、感謝してるってを並べてくる兼定を笑い飛ばして、堀川はクッキーの缶を開けた。覗き込んでくる清光に微笑みかける。
    「清光くん、こっちのラズベリーの好きだったでしょう。取っていいよ」
    「え、ほんと」
     清光は途端瞳を煌めかせた。しかしはっとした様子で手を引っ込める。
     どうしたのと問うと、返されるのは迷い顔。
    「……これ、兼定も好きだったじゃん」
     だから俺だけもらっちゃうのは。そんな遠慮を、今でも君は、僕たちにするから。
     ――ぎゅっと抱き締めると、彼が跳ね上がった。
    「えっ、な」
    「きよみつくんはいい子だなあ……!」
     抱えた小さな身体の頭をわしわしと撫でる。慌てる清光にゆっくり囁いた。
    「いいんだよ。兼さんはもう育ち切ってるでしょ、あんな可愛くないのよりも君が食べてくれたほうがクッキーだって本望なんだよ。清光くんがより綺麗に可愛く育つお手伝いができるなら成仏できるよ」
    「聞こえてんぞ国広」
    「く、クッキーは成仏とかないでしょ……」
     腕から離れた清光は、必死になって乱れた髪の毛を撫でる。堀川はにこにこ笑んで、彼の口へとラズベリークッキーを差し伸べた。
    「はい」
     ――僕らには、遠慮なんてしないでほしいな。
     じっと目を見つめた清光が、恐る恐る頭を伸ばしてくる。小さな口で、クッキーを挟んだ。
    「……」
     これでいいのと聞きたげな赤い瞳。笑って頷いて、彼のためのココアを淹れた。

    「じゃ、俺勉強するね」
    「うん。頑張っておいで」
     見送ると、奥の資料室に清光が入っていく。ぱたんと扉が閉められた。
     清光は小学生だが、小学校に通っていない。施設にいた頃は行っていたらしいけれど、どうやら生育環境が原因でいじめを受けていたようだ。事務所に来てから聞いた時、行きたくないと漏らしたので行かなくていいよと言った。彼は許されると思っていなかったようだ。驚いて顔を上げたその子に、でもお勉強はちゃんとしようね、と笑ったのが最初の約束。
     それを彼は律義に守っている。資料室は防音仕様なので毎日そこに籠もって勉強をしていた。時折堀川も教えるが、小学生の範囲の学習ならば彼は単独でもそれなりにできてしまうらしい。
     彼がいなくなった部屋に、兼定の複雑そうな声が響く。
    「……お前、いつまであいつをここに置くつもりだ」
     堀川はにっこり笑って振り返った。
    「……僕が、じゃない。あの子がここにいたいって言うんだよ、兼さん」
    「それはお前があいつを突き放さないからだろ」
     清光は堀川に恋をしている。もしかしたら初恋なのかもしれないような幼い恋。それを動機に彼はこの事務所にいることを選んだ。
    「僕はあの子を尊重しているんだよ」
    「尊重してるやつは、その恋心から目ェ逸らしたりしねえんだよ」
     硬い笑みをどう受け取ったのか。兼定はため息をついて、こちらに歩み寄ってきて堀川の頭をぽんと叩いた。
    「……まっすぐに向き合えねえなら、手放せ。じゃなきゃ、本音で返してやれ」
     ――あったかい手だなあ。どうして清光くんは、この人じゃなくて僕なんかを好きになったんだろう。
    「大人ほど、本音は言えなくなるものだよ。分かってるでしょ、……兼さん」
     また兼定のため息。まったく不義理なのは分かっている。それでも難しいのだ。
     子供のあの子を束縛したいほどの恋心なんて、伝えたって困らせるのは確実なのだから。

     清光と施設にいたほかの数人の子供たちは、二日間変死体と過ごしていた。

     所長や職員だった。憑り殺され亡くなって魂が抜けたところに、彼らを殺めた霊が入り込み肉体を動かした。さながらゾンビの誕生だった。
     そのゾンビたちに彼らは囚われた。他の子供たちは何が何だか分かっていなかったようだが、清光は幼少期から能力があったために事態の把握は早かったらしい。すぐに彼らが職員ではないこと、このままいれば自分たちも殺されかねないこと、分かっていた。
     けれど清光が外に助けを求めようとすると、他の子供たちが必死になって止めた。子供たちは、施設の職員が怖かった。虐待があった訳ではないらしいが、大人の顔色を窺うことに慣れてしまった子たちだ。何もするな逆らうな、と清光に懇願した。彼も、それを振り払えなかった。
    『きっとそのまま殺されちゃうんだって思った。あいつらに対して何かされるなら最後まで抵抗はするつもりだったけど、ぎりぎりまで耐えなきゃ先にあいつらの心が壊れちゃう。……なんで反抗するの、そんなことしたら殺されちゃう。それが口癖のやつらだったから』
     彼は一人で覚悟を決めていた。殺されるのを前提で戦おうとしていた。
     ――清光の恋の理由なんて、そんな孤独の場にたまたま最初に足を踏み入れたのが、堀川だったというだけのことだろう。
     他の依頼を終え、兼定と通りかかった施設の近くで異様な瘴気を感じた。施設からだ、と分かったので二人で向かい、静寂に包まれた扉を堀川が先に開けた。
     その中は異常な瘴気に満ちていて、膨れた禍々しい霊力はまるではちきれる瞬間を待っていたかのようだった。
     中にいた清光と目が合った。憔悴した仲間を抱きかかえていた彼は、堀川を見るなり叫んだ。『――危ない!』
     その瞬間、職員たちに憑りついた霊たちが堀川に向かってきた。あの時清光は堀川が殺されると思ったらしい。
     しかし堀川は『霊に物理攻撃ができる』能力者だったので、向かってきたものは何の躊躇いもなく殴り返した。そうしてから、あれこれ肉体があるな、と気づいたくらいで。
    『……え……』
     ぽかんと清光が口を開く。あの時のことを彼は、抗える訳がないと思っていたものが案外簡単に吹き飛ばされるものだと初めて知ったのだとのちに零した。
     倒れ込んで驚いている子供たちを視認して、堀川はうっすら状況を察した。そうして後ろから入り込んできた兼定に告げる。
    『兼さん、これ死体だ。死んでいる人に憑りついてる……こっち請け負うから、その子たち見てやって』
    『わかった! ……おい、その子大丈夫か』
     一番元気そうに見えたのが清光だったからだろう、兼定は彼に話しかけた。はっとした清光が口を開く。
    『……っ、二日、何も食べてないんだ。みんなあいつらの力に中てられて弱ってる』
    『まじかよ……外出るぞ、とにかく陽を浴びてから保護してもらわねえと』
     太陽光には一定の浄化の力がある。施設はカーテンが閉められて真っ暗だったことから、ゾンビたちも太陽を怖れていたのが伝わった。まず太陽光を浴びて、栄養を摂らなければこの子たちは死んでしまう。
     しかし清光は躊躇した。どうしたと問う兼定に、迷ってから泣き出しそうに零す。
    『……出たら、俺たち、どうなるか分からない。生きていけないよ……』
    『生きていけるよ』
     ぱぁん、とゾンビを殴り飛ばして、堀川は振り向いた。
     生への絶望を呟いたその子を見つめる。にこりと笑った。
    『君は幸せに生きなくちゃいけない。僕たちが、助けるから』
     ――だから、助けられたその先は、君の足で行きたいほうへ歩んでいこうよ。
     真っ暗な部屋なのに、清光が眩しそうに目を細めたのを堀川は今でも憶えている。鮮明に。

     そうしてゾンビたちは戦闘不能の状態になり、子供たちは外に連れ出された。
     陽光を浴びて、彼らが頬に色を取り戻す。それでも食べていない状態では危うい。兼定が救急車を要請している間も堀川は力を使った反動で壁に寄りかかっていたけれど、そこに清光がよろよろと歩み寄ってきた。
    『……どうしたの? さっき、話してた子だよね……ごめんね、ちょっと見えてなくて』
     その子はぐっと息を詰めた。撫でてやりたかったけれど、それだけ動くこともできそうにない。
    『頑張ったね。君が、あのゾンビたちに力を送って、抵抗していたんでしょう。子供たちには見えないように』
     それがなければ子供たちはもっと侵食されていただろう。太陽光ではどうしようもないくらいに。この程度で済んだのは、紛れもなく何らかの力での抵抗があったからだった。
    『……わかる、の?』
    『これでも、それなりに力はあるほうだから。……まあ、使うと、こんななっちゃうんだけど』
     あははと笑えば、笑えるところじゃないでしょと泣きそうな声。
    『……あんたは、変って、言わないの? こんな力、おかしいんでしょ』
    『君がおかしかったら、僕もだいぶおかしいよ。実態がないのも殴れちゃうんだからね、僕』
     君は僕を変だと思う? そう聞くと、彼が首を振り否定する音が聞こえた。口元が綻ぶ。
    『君は、他の子にはできないことをしたんだよ。君が守らなかったらみんな駄目だったかもしれない。君が助けたんだ。……すごいね、偉かったね。君はかっこいいね』
    『……かっこいい、って言われるより、可愛いのほうがいい』
    『あはは、そりゃあほんとに可愛いなあ』
     ぐす、と鼻を啜る音。横にその子が座ったのだと分かったので、少し身体を倒してそっと頭をぶつけた。
     ちいさな声が、それでも確かに耳に届く。
    『……ありがとう……』
     素直で、まっすぐな子だ。それが第一印象だったし、今でも変わっていない。

     他の子供たちは回復後、他の施設へ預けられた。中には両親が心を入れ替えたことで元の家に帰れた子もいる。しかし清光は、他のどこへも行きたがらなかった。
     彼は堀川に縋った。放すまいとする強い力で服を握って。
    『あんた、……行きたいほうへ歩いていけって、言ったでしょ。俺は堀川のところに行きたい』
    『……でも、僕は正式な保護者にはなれない。幸せになれるとは限ら』
    『堀川が、そんなこと言うの?』
     彼の突き刺すくらい直線的な視線。あの頃からその光は少しも変わっていない。魂の高潔さを、見せつけるように、君は僕を見ていた。最初から。
    『幸せにしてくれなんて言わない。勝手になってやる。そんで迷惑もかけない。……ね、この力、使えない?』
     兼定が静かに目を開いた。堀川は口を結ぶ。
    『俺、聴いたり伝えたりは得意なんだ。堀川みたいなことはできないけど、幽霊への交渉役? にならなれると思う。もし、役に立てたら』
    『危険だ』
     ゆっくりと、兼定が告げる。
     その通りだった。『聴く』ことも『伝える』ことも、上手くいかなかった場合の返りが大きい。幼い清光の精神では、壊されてしまう危険性だってある。
    『生きてえなら、やめとけ。死ぬ気ならもっとやめろ。オレたちはお前に生きて欲しくて助けた。それだけだ』
     兼定の言うことはあまりにも正論だった。堀川は何も言えなかった。
     幼いこの子が、確かに勇気を出して言ってくれていることだとは分かる。分かるからこそ止めるべきなのだった。この子は輝かしい未来を掴むべき子だ。わざわざ危険な場に身を置くことはない。
     目を伏せた時、しかし清光は笑った。やたら大人びた笑みだった。
    『……俺、確かにまだ弱い。子供だ。……けど、覚悟の決め方は、知ってんだ、これでも』
     その手は堀川の服を掴んで、絶対に放さないように。
    『死ぬつもりはない。でも、俺があいつらを助けられなかったことから目を逸らして生きたくもないんだ。だってそうしたら、きっとまた同じことを繰り返すよ。そうして何年もあとにあんたらとまた会って、また助けられでもしたら、……絶対後悔する。自己嫌悪にやられる。……ねえ、覚悟決めるべき時って、今だって思うんだよ』
     目を細めるのは、眩しいと思うのは、今度は堀川のほうだった。その子は兼定をじっと見つめて話した。
    『俺を、弟子にして。……この事務所、俺が継いでやる。……あと』
     そこで唐突に彼は言い淀んだ。啖呵を切るような話し方が一転もごもごとして、なんだろうと頭に触れてやると清光は堀川を振り仰いで、真っ赤な顔で。
    『……俺、堀川が好き! 堀川がお嫁さんにしてくれるまで、ここを出ていかないから!』
     ひっしとしがみついたまま、そんなことを紡ぐ君が、あんまりにも煌めいていて。
    『……どうせ、そっちが本音だろうが。ガキが』
     ため息をついた兼定が清光の頭に手をやり下へ押し込む。いでででと暴れる清光はそれでも堀川から離れようとしなかった。兼定から、またため息。
    『……国広、お前が決めろ』
     清光が堀川を向く。熱いまなざしに、勝てるわけもなかった。
     堀川だって、自分の内に芽生えたものが恋心であることなんて、分からないではいられなかったのだから。

     二時間後、昼を迎えた頃。清光が奥から出てきた。目が疲れたのか眉間を押さえている。
    「お疲れ、清光くん。お昼何がいい? うどんがあるんだけど、カレーうどんか焼うどんかで迷ってて」
     先程の兼定とのやり取りは悟られぬよう笑って口にすると、彼はとてとてと近づいてきた。仕方ないなあと袖をまくる。
    「どうせ堀川、両方食べたいんだろ。俺がカレーのほう作るから、堀川は焼うどんやってよ」
    「お、清光が作るのか! お前の料理うめえよな……国広は大味なんだよなあ」
    「美味しけりゃいいんだよ。そんなこと言ってると兼さんに任せちゃうけど」
    「俺は資料作ってんだよ! つうかお前がやるんだよこういう仕事は! 助手!」
     はいはい知らない知らないと清光の背中を押しキッチンに入る。エプロンをつけていると、もうすっかり慣れたように後ろを蝶結びにしている清光がやたら眩しく見えた。
    「……奥さんみたいだね」
    「え」
     振り返った彼の頬がぼっと染まる。ああやばい、口に出してた。

     君には言えない。まだ言えないことだけれど、いつか言いたいことがある。

     君が二十歳になって、それでも僕の傍にいてくれて、兼さんが何も言わなくなったら、――僕と生涯を誓ってくれませんか?
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    フスキ

    DONEまろくんが天使だったパロの水麿、すいくん風邪っぴき編です。
    ひとは弱くそして強い(水麿天使パロ) 僕の天使。嘘でも誇張でもない、僕のために人間になった、僕だけの天使。
     水心子は、ほとんど使っていなかった二階の部屋に籠もり、布団をかぶって丸まっている。鼻の詰まった呼吸音がピスー、ピスーと響くことが、いやに間抜けで、布団を喉元まで引き上げた。
    「……水心子」
     僕だけの天使、が、ドアの向こうから悲しげに呼びかける。
    「入らせて。ね、顔が見たいよ」
     清麿は、心細くて堪らないような声でそう言った。ぐっと息を詰める。顔が見たい、のは、こちらだってそうだ。心細くて堪らないのだって。けれど、ドアを開けるわけにはいかない。
     水心子は風邪を引いてしまった。もとより人である水心子は、きちんと病院に行き診察を受け、薬を飲んで今ここで寝ていられる。けれど、一緒に暮らす清麿は、元が天使だ。医療を受ける枠組みの中にいない。もし彼に移してしまって、悪化してしまっても、水心子には術がない。天使だったのが人になった身なのだ。病院で診られて、もしどこかに普通の人とは違う部分があって、それが発端となり彼を失うことにでもなったら。
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