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    フスキ

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    フスキ

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    水麿と静ちゃん巴ちゃん小説の続きです!巴→麿っぽい描写入りますがちゃんと水麿ハピエンです。おおきいこどもたちの話。

    #水麿
    mizumaro

    (水麿と静と巴2)恋はふたりだけ 水心子が静形に懐かれた。

    「水心子ぃ、膝枕をしてくれ! 午前は買い出しを手伝ったのだ!」
    「な、なるほど、それは労わねばなるまいな」
     突進してきた静形を宥めて、水心子が縁側に座る。外に足を投げ出した彼の腿に、静形は嬉々として寝転んだ。
    「……ずいぶん、仲良しになったね」
     静形を後ろから追って歩いていた清麿は、苦笑しながらそう呟いた。一緒だった巴形が、ふむ、と頷く。
    「清麿よりも水心子のほうが生存値が上だと知ってからは、一瞬だったな」
     脆いものを遠ざけようとする性質のある静形は、元々清麿にべったりだった。打刀の中では強い部類にあることで安心されていたらしい。しかし、まあちょっとした揉め事で輪に加わるようになった水心子を、彼は最初こそ小さい怖いと怯えていたが、水心子が存外頑丈であることを理解してからは坂を転がる石のように懐いていった。
     それで今ではべったりなわけだが、清麿には思うところがある。
     ──僕が水心子にべったりできない!
     その『ちょっとした揉め事』の中で、清麿はかねてから好意を抱いていた水心子と恋人として結ばれることができたばかりなのだ。仲間たちには秘密であるとはいえ、浮かれて然るべき時期なのである。それなのに、水心子のもとにはいつも静形がいる。
     しかし怒って関係を言いふらしたりする気にもなれないのは、かつての己が同じような状況を作っていて、水心子をさんざん悲しませたからだ。
     静形と巴形に囲まれることで水心子から離れようとした清麿を、彼は必死に忍耐して見守っていてくれた。最終的に二人もいる場で泣いてしまうまで、本当に耐え忍んでくれたのだ。
     それを思えば、身勝手に不満を喚き散らして水心子を困らせることはできなかった。彼はやきもちをたくさん妬いた末、静形と巴形のことを受け入れて今に至っている。大人なのだ。その愛情深さと懐の広さ、本当にすごいやつだと清麿は思う。思うから、笑ったまま俯くばかりだ。
     僕は、君のようになれるかな。
     相手に付属するすべてを受け入れて、飲み込んで、己の大切なものとできるだろうか。本当に水心子を愛しているならできなければならないこと。
     ……でも、僕はすこし、そういう素養が足りないかもしれない。
    「行かないのか、立ち止まって」
    「え」
     巴形が、長身の腰を折ってじっと覗き込んできていた。慌てて両手を振って、『行くよ、ごめんね急に』と笑う。それでも彼は、なにか言いたげに清麿を見つめる。
    「巴形、なんだい?」
     一緒に行こう、と手を引いて先にいる二人のところまで歩くと、彼は繋いだ手を見てなるほど、と呟いた。
    「なにがなるほどなんだ?」
     水心子の膝を枕にした静形が、気の抜けた顔で楽しそうに問いかける。無邪気だなあ、と思ってそれを見ていた清麿の手を、巴形はきゅっきゅっと何度も握って確かめるようにしてから、一言。
    「俺は、清麿が好きだな」
     そうして満足げに頷く巴形に、清麿は動揺をしつつも笑顔のまま『それは、ありがとう?』と返せた。それは褒められてもいいことのはずだった。
    「好きとはなんだ、そういう意味か!?」
    「そういう意味とはなんだ、静形」
    「いやっ、そう、意味があるだろう! 好きにも様々な種類があると……お前のそれはなんだ、清麿が恋しいというあれか!?」
    「し、静形」
     ついに起き上がった静形が巴形に詰め寄る。狼狽する清麿の手を取ったまま、巴形はまた頷いた。
    「そうだな、夜などとても恋しい」
     その言葉にキャーッと歓声を上げたのが静形で、固まったのが清麿で、……烈火となったのが水心子だった。
     彼は、すっくと立ちあがったかと思うと、こちらまで大股で歩み寄ってきて、繋がれたままの巴形と清麿の手に手刀を入れ剥ぎ落した。
    「なんだ、痛いぞ」
    「いいいいい、痛い、ぞ、ではない!!」
     彼はもはや蒸気機関車だった。今にも煙を上げそうな真っ赤な顔をして、涼しい顔の巴形に向かっていく。
    「よる、よ、夜に恋しいなどと、痴れたことを言うんじゃない! きよまろは、彼は欲を向けていい相手ではないのだぞ!」
    「別に欲など向けてはいないが……?」
     好きだと言うことはそれほどまでに罪なのか。そう、感心したように呟いた巴形に、水心子がぐっと息を詰める。
    「……悪いこと、……ではないが」
    「水心子……」
     呼びかけると、彼がこちらを見た。しかし目線を俯けて黙ってしまう。噛み殺すようにわずかに沈黙をしたあと、水心子は顔を上げた。
    「……いや。清麿に懸想するのは、なにもおかしいことでも悪いことでもない。だが、私が、それを許せないというだけだ」
    「許せないのか。何故だ、親友だからか?」
     親友というものは、他者との繋がりを認められないものなのか。純粋に、疑問であるように、巴形は問いかける。それに対して、水心子はまっすぐに相手を見ていた。
    「いや。私が、彼の恋仲だからだ」
     目を見開いた。清麿が、言いたくて飲み込んだ言葉。
     こいなか、とおうむ返しした静形の顔が、爆発的に染められる。水心子が立ち上がったことで半端な体勢になっていた彼だが、飛び起きて駆け寄ってきて、水心子と清麿を何度も交互に見た。
    「えっお、お、お前たちが、こい、恋仲、なのか、えっえっそれは、本当か清麿」
    「……うん、そうだよ」
    「えーっ、かっぷるというやつではないか……!!」
     大興奮、という様子で静形は声を上げる。頬に手を当てて、現代の女子高生かなにかのようだ。
     しかし巴形は、それがどうしたと言わんばかりのいつもの顔である。かんばせが整っているぶん迫力があり、その彼が口を開けた。
    「……それは、俺が清麿を好いていてはいけない理由になるのか?」
     ぐ、と水心子が息を飲む。たじろぐ彼は、それでも胸を張って返した。
    「なる。清麿の恋人は、私だ。私は、彼が懸想されていてそれを許せるような、大きな器は持ち合わせていない」
     ──ああ、そんなことはないよ。君の器は誰よりも大きいよ。僕が、一番知っている。
     なんだか泣き出しそうな気持ちで軽く俯いた清麿の耳に、それは滑り込んできた。
    「俺は別に、懸想をしているとは一言も言っていないが」
     それとも、好きだという想いはすべて懸想と呼ぶのか?
     巴形の言葉は、その場の全員の動きを止めた。んん?? と、静形。
    「……お前の清麿への好き、とは、どういうものだ?」
    「言っただろう、夜恋しくなると」
    「そ、それは懸想だろう」
    「懸想なのか? 手を繋いでいてほしいと思うのだが」
     それを聞いて、清麿はひとつ思い至って手を挙げた。こちらを向いた巴形に問いかける。
    「もしかしてだけれど、夜眠るときにさみしいから手を繋いでほしい、という意味の恋しい、なのではないかな?」
     その瞬間、ぱっと巴形の顔が華やいだ。表情を変えるわけではないのだが、彼は嬉しいときや感動した時、こんなふうにオーラのようなもので表現する。それはとても雄弁だった。
    「さすがは清麿だ……、そういうところが好きなのだ」
    「え、あ、ありがとう」
    「……つまり貴方は、清麿を貴方自身の保護者のように想っている、と?」
    「ああ、そういう言い方が正しいのか」
     一気に全員が脱力した。水心子は疲れ切った様子で腰を折り、膝に手をついて立っている。微妙に残念そうな静形を見ながら、清麿はなんとも面映ゆい気持ちで苦笑していた。

    「結局、大きいこどもが二人だったんだよね」
     夜の二人部屋、清麿が笑いながらそう言うと隣の水心子が肩にもたれてきた。
    「どっと疲れた……」
     とんでもないライバルが現れたかと思った。そう呟いて懐いてくる水心子の頭を撫でる。それは疲れただろう、本来他者と対立することは好きではないのが水心子だ。それが必要であれば逃げはしないけれど、それとこれとは別なのだ。
    「でも、……僕は、嬉しかったな。水心子って、僕のことあんなふうに想ってくれているんだね」
     つい笑みながらそう零したら、彼はぎゅうと抱きついてきた。頭を押しつけながら、そうだよ、と紡がれる。
    「僕は、できた刀じゃないから、君が取られそうになったら怒るよ。誰にも渡したくないって思うくらい、清麿のことが、大好きなんだからね」
     胸に注がれる、温かな愛情。くすぐったいのに安らかで、それなのにどこかが疼くような、不思議な感覚。きっと水心子とでなければ味わえないもの。
    「うん、……誰にも取られないよ。僕が、君だけのものでいたいんだもの」
     抱き返すと、より強くいだかれる。腕に込められる力も、全部が愛なのだと思ったら幸せすぎておかしくなりそうだ。……でも、おかしくなるのが、幸福ってことなのかも。
    「きよまろ、……甘えてもいい?」
     もうすでに甘さがすこし滲んだ声にそう尋ねられて、うれしさを隠しきれもせずうんと頷く。すると彼は身体の位置を下げて、清麿の腿を枕に寝転んだ。
    「水心子?」
    「……ずっと、羨ましいって思ってて……」
     ぼくのきよまろなのに、巴形殿と静形殿しか寝心地を知らないなんてずるいよ。
     ずるい、のって、誰のほう? 清麿は頬を熱くして、水心子を見下ろす。つい手のひらで顔を隠してしまって、彼に引き剥がされた。隠さないでよ、と。
    「……すごい、清麿の膝って、細いのに柔らかいんだな」
     ふにゃりと笑うきみがかわいくて、僕までふにゃふにゃな顔で微笑んでしまった。この空間も、もう蕩けているのかもしれない。
     すこしだけ硬い髪の毛を撫でる。それなのに彼の表情は和らいで安心しきっていて、手を伸ばし頬に触れてくる手も温かい。やさしい時間が流れていく。
     すれ違いから始まった恋だから、せめてこれから先はそんなふうに寂しい思いはしないでいいようにしよう。持っている愛を、君に伝えて、君から伝えてもらったものは全部受け止めて。そうやって寄り添って生きていきたい。
     誰を間に挟んだとしても、特別な想いで僕たちは誰よりも傍にいられる。それはきっと、ものすごく素敵なことだよね。
    「……きよまろ。あのさ」
    「うん?」
     なあに、と首を傾げると、君の頬がじわりと染まる。
    「……一番近づける、夜更かし、したくない?」
     その意味が、分からないほど無知でもない。腹の底から湧く熱を、恥ずかしさを、どうにかしてほしくて、水心子に縋るように服を握った。
     近くにいかせて。空気さえ、入り込まないところまできて。
     伝えた言葉は、すこし皮の剥けた唇に吸い込まれ、ふたりきりの夜が更けていく。
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    フスキ

    DONEまろくんが天使だったパロの水麿、すいくん風邪っぴき編です。
    ひとは弱くそして強い(水麿天使パロ) 僕の天使。嘘でも誇張でもない、僕のために人間になった、僕だけの天使。
     水心子は、ほとんど使っていなかった二階の部屋に籠もり、布団をかぶって丸まっている。鼻の詰まった呼吸音がピスー、ピスーと響くことが、いやに間抜けで、布団を喉元まで引き上げた。
    「……水心子」
     僕だけの天使、が、ドアの向こうから悲しげに呼びかける。
    「入らせて。ね、顔が見たいよ」
     清麿は、心細くて堪らないような声でそう言った。ぐっと息を詰める。顔が見たい、のは、こちらだってそうだ。心細くて堪らないのだって。けれど、ドアを開けるわけにはいかない。
     水心子は風邪を引いてしまった。もとより人である水心子は、きちんと病院に行き診察を受け、薬を飲んで今ここで寝ていられる。けれど、一緒に暮らす清麿は、元が天使だ。医療を受ける枠組みの中にいない。もし彼に移してしまって、悪化してしまっても、水心子には術がない。天使だったのが人になった身なのだ。病院で診られて、もしどこかに普通の人とは違う部分があって、それが発端となり彼を失うことにでもなったら。
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