お花屋さんなおたきワンシーンシナリオ「それは一輪の」
□商店街 花屋 店内 夜(20時前)
商店街にある小さな花屋。閉店間際、外に出していた花は中に仕舞い、扉も閉まっている。
店内でクローズの作業をしていた多喜二。エプロンをしている。
カラン、というドアのベルの音。多喜二、顔をあげながら
多喜二「今日はもう閉店で…」
気づいて止まる。ドアの前には直哉が立っている。スーツに鞄。
直哉「花を、買いたいんだが」
<ここでタイトル>
多喜二「こんな時間に珍しいですね。仕事帰りですか?」
直哉「あぁ、どうしても今日欲しくて」
直哉、店内に入り、花を見ながら多喜二の方へ近づく。多喜二、閉店作業をやめて、
多喜二「なんでもお包みしますよ。どれにします?」
直哉、少し言いづらそうな、照れて視線をそらしつつ
直哉「その、今日は、記念日なんだ」
多喜二、驚きというよりも、思考が止まる。気づかず続ける直哉。
直哉「どの花がいいかわからないからさ、お前の好きな花を見繕ってくれねぇかな」
多喜二、言葉が出ない。直哉、それに気づいて視線を向けると多喜二はハッとし、取り繕った笑顔で、
多喜二「贈り物ですか?」
直哉「あ、まぁ、そんなところだ」しどろもどろとしている
多喜二「…かしこまりました」
と花を選び出す。色んな花を手に取って行く多喜二の様子を穏やかな表情で眺めている直哉。
ほぼ花束が出来上がっている。多喜二、最後にマーガレットを1本差す。
その花を物憂げに見ている多喜二。
□花屋 店の前
直哉、花束を手にしている。
直哉「こんな時間に悪かったな」
多喜二「いえ、ありがとうございました」
多喜二、お辞儀をして直哉を見送る。帰っていく直哉。
その後ろ姿を見つめている多喜二。
□商店街
花束を抱えて嬉しそうな直哉。スマホが鳴り、出る。(スーツのジャケット内ポケットから出す?)(電話相手の声は表示なしで直哉側のみ)
直哉「久しぶり。元気してた?」
直哉「はは、この歳になって親に誕生日を祝われるのはむず痒いよ」
直哉「え?うん。今日は花を買ったよ」
直哉「…とても、綺麗で愛おしいんだ」
大事そうに花束を抱える。(マーガレットに目が行くような配置にする)
□花屋 店内
店の奥(電気が消えている)で本を見ている多喜二。花の図鑑。
ページのアップ。そこにはマーガレット。花の写真の下に「花言葉:心に秘めた愛、片思い」と書かれている。
多喜二、本を閉じ、
多喜二「…ばか」
と小さくつぶやく。(自分の気持ちに気づかない直哉に対して、そしてこんな花を混ぜ込んでしまう自分に対して)
おわり