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    そのこ

    @banikawasonoko

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    文責 そのこ

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    ⓒKonami Digital Entertainment

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    そのこ

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    ということで和議決裂後のナナミ。ナナミの日も近いというのに辛気臭い話を。ジョウイ、ナナミも連れて行ってやればよかったのにな。

    #幻想水滸伝2
    theWaterMarginOfIllusion2

    2025-07-01


     部屋に駆けこんで扉をきつく締めた。タイラギと同室の部屋は城の最上階にあるせいか、しんと静かだ。私の荒い息だけがそんなに広くない部屋を埋めている。
     わざと勢いよくベッドに倒れこんだ。そのまま腕を振り上げて振りおろす。あんまり干せていない布団から埃が舞い上がって差し込んでくる日差しにきらきらと光った。ぼふぼふと暴れまわるたびに埃が舞う。私に動かせるものなんて、私の手足ぐらい。私が影響を与えられるものなんて、埃の動きぐらいだ。
     泣き声がした。子供みたいに、うわーんって。
     それは私の声らしい。うわーん、って泣いてる。
     なんでどうして、って手を振り上げ、振りおろし、布団の上で足をばたつかせて泣きわめく。
     それを冷静な私が見ている。そんな感じ。
     ルカを倒した。クルガンって人が和議を申し込んできて、戦争は終わるんだと思った。嬉しかった。やっとジョウイに会える。いつジョウイとタイラギが戦うか、ひやひやしないですむ。ずっとずっと戦争が終わるのを待っていた。
     ミューズに行くのが楽しみだった。全然人のいないミューズの街を通り抜け、全然いい思い出のない議場までやってきた私とタイラギに、ジョウイは矢を向けた。
     違うの、あれは違うの。
     あふれる涙を枕に押し付けて、私は自分で見た光景を必死に否定する。ジョウイが私たちに矢を向けるなんて有り得ないもん。テレーズさんはなんか勘違いしてたんだもん。
     そうだ、隣にいたおっさんがジョウイをだましたんだ。タイラギが背負っているものが重たいのは知ってる。だから驚かすぐらいしないと、ジョウイが望むようにはならないって言ったんだ。
     ジョウイが望むように。望むように、ってなに。
     ちょっと顔を上げると、頬をぼたぼたと涙が落ちた。
     ジョウイが何を考えてるのか、私分かんない。ルカを倒せば全部終わるんじゃなかったの? そのためにジョウイは私たちから離れたんじゃないの? じゃあなんでこんな事になってるの。
     ごろりと寝返りを打って、お布団に沈んだ。拳をぎゅっと目に押し当てる。
     タイラギはジョウイのお願いを断った。一瞬も迷わず、私の顔を見もせず、ジョウイを睨みつけて首を横に振り続けた。背中には矢が向けられているのに、そんなことはお構いなしだった。
     あれは、ジョウイが撃たないと信じていたからだよね。ねえ、そう言ってよタイラギ。信じられなかったお姉ちゃんの代わりに、タイラギはジョウイを信じてよ。
     確かに経験したことなのに、信じたくなさ過ぎてまるで現実感がない。ジョウイがハイランドの王様で、ルカを倒しても戦争は終わんなくて、和議は全部嘘で。ジョウイは私たちをだましたんだ。
     だましてない。私たちをみんなから離して、それで三人で安全なところに逃げる手はずだったんだ。
     そうだよ。そうだといってよジョウイ。
     悲しいさみしい。胸が苦しくて呼吸ができない。
     ジョウイのこと、シュウさんは信じてなかった。だからビクトールさんたちに頼んだんだ。ピリカちゃんが居ればジョウイは必ず手を緩める。その通りだったね。ジョウイは優しい子だもん。
     優しい子なんだよ。
     だから仲良くできるはずなんだよ。どうして出来ないの。タイラギは頷いて、みんなでせーので武器から手を離せば良いじゃない。シュウさんがその機会を奪い取ったんでしょ!
     いろんな声が口からもれる。怒ってる。悲しんでる。
     裏切られた裏切られた。私はずっと我慢しているのに、みんながみんな私の我慢を無駄にしている。
     私はただ、タイラギとジョウイとずっとキャロで暮らしていたかっただけなのに。
     ドアが静かに開き、タイラギが部屋に入ってくる。泣き止まないと、お姉ちゃんだから。
     私は大きく息を吐き、ベッドの上に起き上がった。乱れている布団を直したくて手を伸ばすけれど、それよりも先にタイラギがそっと私の隣に座ってくれる。
     行儀悪く足を投げ出し、その上できつく手を握りしめる。そのまま倒れこんできて、私の肩に額を擦りつけた。
    「ごめんね」
     何を謝っているのか分からず、でも私は一つだけは確信している。
    「タイラギが悪い事なんてなんにもないから! 全部お姉ちゃんに任せなさい!」
     何にも出来ないのに。泣きわめくしか出来ないのに、頬は涙で濡れているのに、私はただお姉ちゃんという立場に縋るように口の端を歪めてみせる。
     寂しいのも悲しいのも裏切られたのも、全部タイラギのほうが辛いんだ。そうだ、そうに決まっている。我慢してるなんて思っちゃダメ。お姉ちゃんだから。
     タイラギの手が私の背中にまわって、ぎゅっと抱き着いてくる。ごめんね、ごめんねと繰り返す声は、悲しみよりも怒りのほうが優っているとどうしても思ってしまうのだ。
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