聖夜の勢い もうすぐクリスマスだとマトリフが気付いたのは、そのクリスマスのたった数日前だった。
普段の暮らしが人里離れた洞窟暮らしで、一緒に暮らしているガンガディアも人間の習慣に疎いものだから、クリスマスなんてイベントの存在はすっかり忘れていた。
マトリフは久しぶりに来た街がきらびやかに飾り付けされているのを見て、そういえばそんな季節だと思い出したのだった。
といってもマトリフも特殊な里の育ちであるから、クリスマスには馴染みがなかった。これまでクリスマスを楽しんだ記憶もない。だが今は恋人になったガンガディアと一緒に暮らしているのだし、少しくらいそれっぽい事をしてもいいかと思い立った。
そして迎えたクリスマス当日。マトリフは上機嫌で数日前に買った酒瓶のコルクを引き抜いた。それをガンガディアが目敏く見つける。
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