(できちゃったな)
使用済みのゴムの口を結んでごみ箱に投げる。終わったあとのことは終わってから考えればいいと言ったのは他ならぬ二葉の方であったが、想像していたよりも気持ち良かった快感の名残しかないことに自分で驚いていた。
(後悔とか、思ったよりしないんだなあ)
それはもっとあとから襲ってくるものかもしれないが、充足感を噛み締めながら未だベッドに伏したままの兄をちらりと見やる。
「兄さん、大丈夫?」
もう少し優しく扱うつもりだったのだがあとのまつりだ。枕に顔を埋めたまま兄は微動だにしない。
「にいさ、」
「生きてはいるから静かにしろ」
掠れ声は思っていたよりも刺々しい。最中はあんなにも淫らな声で乱れていたから、兄もきっと気持ちいいのだろうと思っていたけれども。
「……ごめん」
ここにきて少しだけ後悔が滲む。無理をさせたのだろうし、もしかしたら途中本当に嫌がっていたのかもしれない。それは二葉にとって不本意だ。