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    ヒョウ

    @fu_hail

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    ヒョウ

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    一生外せない結婚指輪をつける激重ウツハン♀を書いてる。書き上がる気が全くしないけど…
    愛弟子の武器は太刀。モブが出てくる。グロいっちゃグロいかもしれない

    #ウツハン
    downyMildew

    未定火の中から苦無を取り出し橙色に光る刃を見つめながら向き合う男と女。
    男は女の左手の薬指に焼ごてのように刃先を押し当ててぐるりと一周。
    皮膚はじゅうじゅうと音を立てて焼け女は痛みに呻きながら男の肩をぎりりと噛む。
    女の指に一生消えない痕が焼きついたら今度は男の薬指に焼けた苦無を押し付ける。
    奥歯が砕けそうなほど強く噛み締めながら女がつけた肩の歯形に口付けて耐える男。

    誰もいない、二人だけの婚礼。
    薬指の『指輪』を重ねあい静かに口づけを交わす。

    その二人の影は轟音とともに消えていった。







    ―その一年前のこと。
    カムラが誇る英雄はギルドに入った救援要請に応じて溶岩洞にいた。ヤツカダキを目的としたハンターは突如としてラージャンに襲われて装備を失い虫の息。そこに駆けつけたのはカムラの英雄と、もう一人。すらりとしなやかな身体を持った長身の男。

    救援に駆けつけて早々救援を出した当人がラージャンに飛びかかられていた所を発見。時を同じくして現場に入った長身の男はラージャンに向けて弓を構えたが舌打ちをして弓を下げる。

    ―もう間に合わない。

    少し距離があるここにまでドオンと響く振動がその衝撃を物語っている。
    救援を要請したハンターがいるであろう場所から血飛沫が飛んだ。
    今ので死んだかもしれない。助けられたとしても意識障害や麻痺、または一生物の後遺症、それに体の欠損すら十分にあり得るような惨状。

    これで事足りれば御の字だと秘薬を準備する男。
    ポーチから秘薬を握り出したとき、女の声が木霊した。

    「気炎ッ万丈ォォォ!」

    太刀をかざしてラージャンの頭蓋に向けてその頭上から激しく振り下ろす。
    すんでのところでラージャンがかわすと、女は近くの大岩を中継して再びラージャンに向かって飛ぶ。持っているのは本当に太刀かという速度で下からラージャンの首を刈りその喉笛から赤い血が爆ぜるように舞った。女はそのまま瀕死のハンターを抱えて飛ぶ。

    激昂したラージャンは全身の毛色を変えて女の後を追う。瀕死のハンターを秘薬を持つ男の元に下ろしたらまた太刀を振りかざして飛ぶ。

    女にはまるで羽根でも生えているのか、と思った。

    重力などあってないように宙を舞い踊り獲物に斬りかかる姿。
    ハッとして男は瀕死のハンターに秘薬を振りかける。
    ハクハクと口は動いても胸郭が動かない。目は開いているのにどこを見ているのかわからない。四肢はだらりと下がり手も足もおかしな方向に曲がっている。それは全身の骨が砕けて内臓もやられ心臓が動いているだけでも奇跡の状態。到底、秘薬などで足りる状況ではない。
    男は静かにネムリ草を取り出す。目の前の死にゆく者に回復薬の類はもはや毒に等しいのだ。それよりも苦痛を緩和させられるものを与えるが情。

    遠くでラージャンがギャアアと鳴いた。ドスンドスンと巨体を跳ねさせ遠くに退散していく。すぐさま女がこちらに駆けてきた。

    「容態は!」と語気強く尋ね、それに対し無言で首を振る。
    女は瀕死のハンターに「何か言いたいことは!誰かに伝えて欲しいことは」と問いかける。
    「オイやめろ!もう寝かせてやれ!」
    制止を振り切りハンターの口元で何かを聞き取ろうとしている。肺をやられて声など出せるはずがないのだ。女に対して無性に腹が立った。
    ハンターは何か唇を動かしているが案の定声になどならず、そのうち唇は動かなくなって目は光を失う。動脈の拍動も触れない。瞳孔は開いた。呼吸、心拍ともに確認出来ない。即ち、死。

    見開いたままの目を手でそっと閉じ、状況を記した紙をフクズクの脚に結んでギルドへ飛ばす。
    少ししたらアイルーが荷台を持って現れるだろう。それに遺体を載せたら救援組の役割は終わる。それまで待機。

    の、はずだったのに。

    女は突然立ち上がり太刀を握った。

    「オイ、何する気だよ」
    「その人の道具がどこかに落ちているはず。探してくる」

    駆けつけた時、遺体となってしまったその男は丸腰だったのだ。

    「探してどうなるんだよ。まだラージャンがエリアから退避したって報せはねえぞ。じっとしてろ」
    「その人が遺したものを、その人が大切にしていた人に返すべき。私は行く」
    「お前ェ!さっきからいい加減にしろよ!」

    堪えらずに男が吠えた。
    「お前もハンターならわかるだろ!狩猟にでた時点で死ぬ覚悟は決めてんだよ!甘えこと言ってんじゃねえよ!」
    女はこちらをちらりと見た後青く光る糸を飛ばして飛んでいった。

    カムラのハンターが使う蟲。実際に見るのは初めてだ。

    それからどれほど経ったのか分からなかった。男にとっては途方もなく長い時間に感じていたけれど、本当はそう経っていなかったのかもしれない。
    ギルドから派遣されたアイルーたちがガタガタと荷車を揺らして走ってきた。ほとんど同時に女が戻ってくる。手にはボロボロのポーチと欠けて形を変えたライトボウガン。

    「…見つけたのか」
    「うん、ポーチのそばに、…これが落ちてた」

    女が紙を取り出す。それは写真だった。若い女と写る男。顔は鬱血し腫れ上がり見る影もないが、多分この遺体となったハンターなのだろう、と思った。
    女はアイルーに遺品をハンターの里に直接届けたいと申し出た。本来救援要請でそこまで求められることはない。救援が成功しようが失敗しようがその後の手続き、事後処置全てギルドが行う。男は苛々と目尻を吊り上げ舌打ちをし「俺も行く」と言った。この女が何かしでかすのではないかと思ったのだ。これ以上死んだ者をかき回すような真似をしようものなら俺が止めなければ、と思った。
    アイルー達はギルドに確認しますにゃ、と答えて荷車に冷たくなった身体を横たえるとギルドに向かって走り出した。






    初めて降り立つ村。溶岩洞で死んだハンターの故郷。その船着場にギルド関係者と遺族と思われる連中が立っていた。
    ギルドの職員から事の経緯が説明されその場で何人もが泣き崩れた。遺体の引き渡しとなり『それ』の状態から女子供は場を離れるように促される。
    その中で強い目をした女が一人。その顔は見覚えがある。あの写真の女。どういう状態であれ、私は迎えます、と答え凛と佇むその姿は美しい、と思った。

    救援から行動をともにしているあの女とともに遺体を覆う筵を剥ぎ、『それ』を露わにした。

    ギルド関係者や村の男から「ぐっ」とうめき声が漏れる。
    あの写真の女は何も反応しなかった。眉ひとつ動かすことなくただ『それ』をじっと見ている。

    「あの」

    カムラの女ハンターがぼろぼろのポーチと変形したライトボウガンを出した。

    「現場近くにありました。これはこの方のものではないですか?それと、これも…」
    写真を添えて渡す。
    途端に遺体を見ても微動だにしなかった女が泣き崩れた。

    しゃくりあげ、悲痛な叫び声をあげ、嘔吐をし、狂ったようにまた咽び泣いた。

    「ああああ!彼が死んだ!私も死ぬ!私を独りになど!ああああ!」

    果たしてこれが人の声だろうか、と思うような金切声がその場に響いた。美しいと思った女が化け物に変わってしまったようにすら思えた。
    やはり余計なことを、と女ハンターを睨んだが当人は狂った女のそばに寄りそっと腕を回して抱いていた。

    気にいらない。気に食わない。

    これが、カムラの女ハンターの第一印象だった。






    それから一月ほどが流れて再び戦場であの女と出会った。偶然、同じ狩場で同じ獲物を追っていたのだ。内心舌打ちをしたが思いがけず今度は互いに息が合い恐ろしいほどスムーズにことが進んだ。こんなに楽に進められる獲物などではないはずなのに欲しいと思うタイミングで近接攻撃を入れ欲しいと思うタイミングで粉塵を巻く。この女には心を読む能力でも備わっているのか、と本気で思ってしまうほどに。

    本当にあの時の女か、と思った。
    獲物が生き絶えた後に、男は静かに女に名を聞いた。







    「教官!ただいま戻りました!」
    カムラに戻ってすぐにいつものように教官の元に駆けていく。
    教官は大きな腕をいっぱいに伸ばして弟子を迎え入れる。いつも通りの光景。
    ふと教官―ウツシ―は弟子の首元に鼻を当てすん、と鳴らす。

    「誰かに会った?」
    「よくわかりましたね。前に溶岩洞の救援で一緒になったハンターが今日たまたま同じ獲物を追ってたんです」
    ウツシはまるでむくれたような顔で「溶岩洞の救援って、男だったよね」と問うた。

    「ええ、まあ…」
    「愛弟子、同じ獲物を追っていたと言っても油断してはいけないよ。あまり男の近くに寄ったり不用意に声をかけてはいけない」

    ぐっと顔を近づけてそんなことを言う師に「大袈裟ですよ!」と返して弟子はくるりと振り返った。物心ついた時から恋心を抱いていた相手にそんなことを言われれば顔が燃えてしまったのではないかと思うほどに熱くなる。
    翔蟲を飛ばしてテラスから飛び立つ弟子に「待ちなさい!」と呼び止める師。その誰が見ても両思いの二人を療養中の女ハンターは呆れたように笑って見ていた。



    ある日、いつものように朝から集会所に行けばウツシは誰かと話し込んでいた。ピンと真っ直ぐに伸びた髪をサラサラと靡かせる爽やかな女性。ロンディーネだ。
    二人はすぐに弟子に気付いて師が呼び寄せる。

    「待っていたよ!君に用事が合ったんだ。一足先に君の師匠に許可を得ていたところだよ」
    「許可?」

    なんだろう、と師を見れば赤い顔で頬を掻いていた。

    「今度、私の友人がここカムラへ寄ることになってね。…デザイナーをしているんだが、ぜひこの地で新たなドレスをデザインしてしたいと意気込んでいてね。その作品のモデルを探していたんだ」

    そのモデルを是非君にお願いしたい、と美しい顔でロンディーネが笑った。

    「私よりヒノエさんやミノトさんの方が適任ではありませんか?ヨモギちゃんだって…アヤメさんも!」
    弟子が里の美人の名をそれぞれ挙げていくとロンディーネが首を横に振りながら言う。

    「友人はウエディングドレスを専門とするデザイナーでね。君なら相手役もいるし君が適任だよ」

    そう言って横に立って居るウツシを見てパチンとウインクをする。

    「ウエディングドレス…?」
    「婚礼衣装、だよ愛弟子」

    ウツシの言葉にかあっと顔が熱くなる。
    「相手役って…」
    「…俺」





    …っていう話かいてるとこです
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