これは──誰のだろう。
よく見れば、いままでバラバラに入れられていた皿たちも今は綺麗に重ねられている。水垢まみれで濁っていた銀色の流し台も、掃除したのか蛍光灯の光を反射している。この箇所だけまるで別空間のようだ。
そういえば先日、新しい助手が来るって聞いたような──
がちゃり。
ドアが開く音がして、パッとそちらを見れば、
「あら?」
目をパチパチと瞬かせ、不思議そうにこちらを見る人がいた。
「こ……こんにちは」
灰色のフォーマルスーツに、黒のパンプス。つややかなロングストレートの髪。自然な色合いの口紅。その人が身に纏うもののせいなのか、その人自身の雰囲気のせいなのか。廊下ですれ違った先生に会釈するような感覚で、その人にも反射的に挨拶をした。
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