ちゅんとハロウィン シャーロックとリアムが呼ばれたのは、ダラムを少し離れたこじんまりしたログハウスだった。珍しい木製の一軒家でいかにも避暑地の小さな別荘といった感じである。扉を叩けば中からウィリアムとシャロが顔を出した。
「いらっしゃい」
「お邪魔します」
中に入ると広々としたワンルームで奥に階段があり、上が寝室になっている作りなのだろう。早速リアムとシャロのちゅん二匹は自由に部屋を飛び回り、遊び始めた。
「いいのか? せっかくのハロウィン、兄弟と過ごさなくって……」
「大丈夫。二人ともロンドンで仕事でね……それに君と二人で過ごしたかったから」
「そうか……じゃあ、今日は二人だけだな……」
人目がないというだけで少しだけ大胆になってしまうのは仕方のない事だと思う。手を絡めて顔を寄せ、キスまで後もう少しというところで元気な鳴き声が部屋に響く。
「ちゅん! ちゅんちゅん!!」
リアムが思い切りシャーロックの頬に突撃してきたのだ。
「ぐっ!? リアム!! お前……口ん中噛むだろうが!」
講義するシャーロックに反論するかのように小さな翼を懸命に羽ばたかせて声を上げるリアム。
「リアムは相変わらずだね」
呆れて笑ってしまうウィリアム。せっかくの良い雰囲気が台無しにされたとシャーロックはリアムを両手に乗せてため息をつく。
「シャーロック。時間はあるから……ね?」
耳元で囁いたウィリアムに気持ちを見透かされて顔が赤くなる。
「そ、そんなことよりハロウィンだろ? 菓子とかあんのか?」
誤魔化すように尋ねたその瞬間。白い大きめのハンカチを被った何かがシャーロックの目の前に現れてちゅんと元気よく鳴いた。
「シャロか!?」
「ちゅん!」
「おやつが欲しいんだな……」
「ちゅん!」
「トリックオアトリートって言ってるのかな?」
「リアム、こいつらのおやつあんのか?」
「テーブルの所に……シャロ、まずはその布を置いて来た方がいいよ」
ウィリアムはシャーロックにちゅん達用のおやつの置き場を指差す。シャロは一度布を置きにリアムと共にソファの方へと飛んで行った。
「シャロはハロウィンがわかってんのか?」
「そうみたい……はい、二匹にあげてね」
シャーロックにおやつを手渡して、ウィリアムは自分たちが食べる為に買ったお菓子の袋を開けた。紅茶を準備すべく、キッチンに立つと程なくしてシャーロックから袖を引かれた。
「な、なぁ……リアム。あれ、どう思う?」
ちゅん達用のおかしを抱えたままのシャーロックはソファの方を指差した。ソファの上では二つの丸い物体が布の中で不自然に動いている。中からシャロの小さな鳴き声が微かに聞こえた。なにをしているのかわかりウィリアムは目を細め、頭を抱える。
「リアムがその気ならやはり僕も奪う事にします」
「は?……んぅ」
ウィリアムはシャーロックの顎に手を添えると少し上げて唇を奪う。突然の事に驚いたシャーロックは目を見開き固まった。
「リアム……」
「ふふっ……前に言ったでしょ? シャロもシャーロックもあの子のものだなんて耐えられないって。僕は君もシャロも大好きなんだから」
綺麗な微笑みをシャーロックに向け、ウィリアムはそう言った。
「相手は小鳥なんだから嫉妬すんな。それに俺はウィリアムのもんだしな」
ウィリアムの先程の言葉に答える様に、シャーロックは自ら彼にキスをした。