凍える指先夏島 季節は夏。常夏の太陽の恵みを与えられた島
お前のいない部屋は何処か寒い
頬を撫でる汐風と耳に届くファミリー達の声。
視界を覆う古びた本のインクの微香が鼻を擽る
夏島の中でも温暖なこの島はバカンスにと買い上げた島だ。
続きの知識を得ようと本を上げた瞬間に頬に触れた指先の冷たさに僅かに眉が上がり、ソファーの背もたれで存在を主張する鴇色を引き寄せ身体を覆う。
幾分かマシになるがそれでも指先と胸の奥底に感じる冷たさは改善の兆候はない。
「あァ…寒ぃな……」
1人ごちる言葉は誰に聞かせるわけでもなく、夏の香りへと溶ける。ファミリー達と戯れれば改善されるかと腰を上げようとした瞬間、耳に届いた鳴き声に目をやる。相手の姿を知らせるソレに小さく笑いゆっくりと、ソレを起こしてやった。
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