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    chunyang_3

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    chunyang_3

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    CQL話数ワンドロワンライ1回目(1~10話)。1話〜2話にかけての含光君と思追の話です。50話まで見た人向けの話になってしまいました。CQLはあの曲を知ってる思追くんというのがとても好きです。
    ※画像で上げたものと基本的に同じですが、表現などを手直ししています

    #CQL話数ワンドロワンライ
    #藍忘機
    blueForgottenMachine
    #藍思追
    lamSiChou

    懐かしき調べ 莫家荘に邪祟退治をするためにやってきた藍思追と藍景儀をはじめとする藍家の子弟達が西院で迎え撃つべく準備を進め、手筈通りに位置に着いた頃には陽が落ちていた。
     庭を囲むように屋根の上に立ち、招陰旗を手に景儀と並んでその時をいまかと待ち構えていた時だった。張りつめた空気の中、気配に集中するように目を瞑っているとどこからか何か曲が聞こえてくる。これは笛の音だろうか。音は聞き慣れないが、この旋律はどこかで聞いたことがあるような気がする。
    「景儀、この曲どこかで……もしや姑蘇の調べか?」
     いつどこで聞いたのかは分からない。分からないながら、旋律が胸に響く。
    「どこかで聴いたことがある」
    「そんなはずないだろ。こんな下手な曲、聴いたことがあるわけない」
     景儀の言うことはもっともだ。笛と言っても音程も不安定だし、まるで草笛を吹いているようにも聞こえる。けれど思追はこの曲を初めて聞いた気がしなかった。
     思追は姑蘇藍氏の一人として、他の門派の者に比べれば沢山の曲を知っているはずだ。記憶にある数々の旋律の中から思い出そうとしてみるが、ぼんやりとしていてどこで誰の演奏で聴いたのかを思い出すことはできなかった。旋律を追いかけながら、どこで聴いたものかを探りだそうとしている間に演奏は止んでしまった。一体どこで聞いたことがあるのか気になったが、待ち構えていたものとは異なる物の襲来によって、目の前のこと以外を考える余裕が無くなった。だから眩しい朝を迎えるまで、そんなことがあったことをすっかり忘れてしまっていた。
     記憶の片隅に追いやられていたその旋律は、思わぬ形で思追の記憶に蘇った。莫家荘の始末がひと段落した翌朝、含光君の姿を見た時、何故かこの旋律のことを含光君は知っているのではないかという気がしたのだ。どうしてそう思ったのかも分からなかったが、思追は思わず含光君の衣に手を伸ばしていた。


     陰虎符が再び世に現れたと考えて良いのだろうか。本当に魏嬰、お前なのだろうか。そう考えながら霊識が宿った剣を朝日にかざし見た藍忘機が剣を仕舞っていた時だった。
    「あの、含光君!」
     思追の声に振り向くと彼にしては珍しく何か言いたげな顔をしていて、その上藍忘機の衣の袖を掴んでいた。
    「……どうした」
     藍忘機が問えば、思追はまるで袖を掴んでいたことに自ら驚いたようにその手を隠すように引いてしまった。
    「あっ、いえ、すみません。何でもありません」
     焦った顔を隠すように拱手をした思追はいつにも増して随分と深い礼をしていた。
    「含光君、それでは私たちも大梵山へ」
    「……? ああ、行こう」
     藍家の他の子弟達の元へ出立を伝えに向かった思追の後ろ姿を見ながら、そういえば魏無羨には何度か袖を引かれたことがあったけれど、小さな彼に袖を掴まれたこともあったのだった。

    「熱が下がらないせいで中々寝付けないようで……」
    「そうか」
     連れ帰った小さな体は熱にうなされていて、今にも命が無くなってしまうのではないかという心配もあった。けれど、藍忘機には心配すべき者が他にもいて、その者の為にもこの小さな命を喪う訳にはいかなかった。いずれにせよ、医者でなければこの命を生かすことはできないだろう。
    「すまない、この子のことは頼んだ」
     そう医者に言い置いて藍忘機は背を向けようとしたのだが、何故か後ろに引っ張られるのを感じて足を止めた。
    「…いか、ないで」
     藍忘機の袖を掴んだのは高熱に苛まれている小さな手だった。
    「おいて…いかないで……」
     藍忘機は今すぐに行かなければならないのに、衣を掴んだ手を振り払うこともできずに固まってしまった。どうすれば良いのか分からないまま、小さな手を両手で包んでから衣からゆっくり外し、寝台に近づいた。片手でその小さな手を握ったまま、慣れないながら宥めるように優しく額に触れた。触れた手に伝わる体温は高く、早く熱を下げないと治ったとしても後に何か影響が出てしまうかもしれないことは医術の心得がそうある訳ではない藍忘機にも予想できた。
    「大丈夫だ。早く良くなるためにもお前は寝なければ」
    「……眠ると怖い夢を見るから、やだ」
     そんなことを言われてもと思わなくもないが、藍忘機が近くにいることが役に立つとも思えない。どうしたら良いのか、何か解決方法があるならばと藍忘機は直接問いかけてみることにした。
    「では、どうやったら眠れる?」
    「歌、うたって……」
     こんな風に歌をせがまれるのは、二度目だ。流石は彼が自分が産んだと言うだけはある。夷陵の茶屋で笑っていた彼の顔を思い出し、思わず少しだけ口元を緩ませてしまう。
     歌うのはあの曲にしようか。熱で汗ばんだ髪を撫でながら、心に浮かんだ旋律を口に乗せた。


     大梵山に向かうのは彼と共にいたあの頃以来だ。陰虎符に大梵山、こんなに胸騒ぎがすることが重なるのは単なる偶然なのだろうか。
     突然現れた剣霊に一体どこに連れて行かれようとしているのかは分からない。あの日、彼に聞かせた歌をいつかまたどこかで演奏する機会があるのかも、今はまだ分からないままだ。
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    chunyang_3

    MEMO観音廟の後、藍忘機と別れ一人で旅をしている魏無羨が蓮花塢に立ち寄って金凌と出会う話。CQLを見終わった時に全て終わった後の金凌と魏無羨が再会するのを見たいなと思っていたのですが、魏無羨から両親の話を聞く話になりました。※原作の番外編の再会とは異なります。
    話を聞かせて 目の前に広がる蓮の花の咲く景色を瞳に映し、魏無羨は大きく深呼吸をした。早朝の水辺の空気そのものを吸い込んだような清々しさに、自然と顔が綻んでしまう。朝食を売る屋台の呼び声が聞こえ、波止場の街には既に活気がある。
     この世から消えてしまってからの十六年。決して短くない時の流れの間に変わってしまったことも変わっていないこともある。蓮花塢には少しばかり前にも来たけれど、その時はこんな風に優しく吹く風を感じる余裕は無かった。慌ただしく走り抜けるばかりだった景色が、今は目の前に悠然と広がっている。
     今になって思えば、魏無羨が帰る場所というのは元々この世には無かったのかもしれない。ここ蓮花塢は幼い頃から育った場所でとても大事でかけがえのない存在であることは今も昔も変わらないけれど、魏無羨が帰る場所では無くなってしまった。それは、江澄に江家を破門される前から頭では理解していたことだったが、こうして訪れてみると改めて実感する。
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    chunyang_3

    MEMO景儀と思追の出会いの妄想です。思追が温寧と温家の弔いを済ませ雲深不知処に戻った頃に、魏無羨も雲深不知処に留まる様になったという時間軸の設定です。うさぎと一緒に人参を食べていた頃の思追くんと景儀の出会いの話を書いてみたくなって書きました。
    君と兎と しんと静まり返った蘭室を前にして、藍景儀は柄にもなくとても緊張していた。今日は景儀にとって初めての座学だ。随分前に蘭室には遊びで入って良い場所ではないと叱られてからは一度も近寄っていないので、この建物に来ること自体、ちょっと尻込みしてしまう。
     同じ年頃の藍家の子弟が中に入って行くのに続けて景儀もその静かな空間に足を踏み入れた。周囲を見回してみると、どうやら空いている席に座って良さそうだ。
     こっそり息を吐いて、周囲を見回す。近くに誰か景儀が知っている友達がいると安心できるのだけれど来ているだろうか。そう思って既に座っていた隣の席の少年へと視線を向けた景儀は、視界に入ってきた横顔に思わず息を呑んだ。まるでお手本のように姿勢良く座っていた景儀と同じ白い藍氏の校服を身に纏った少年も、隣に誰かが座ったことに気付いたらしい。軽く横へ顔を向けたことで、景儀と顔を互いに合わせることになった。その顔を見て、景儀は思わず叫ばずにはいられなかった。
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    chunyang_3

    MEMOCQL話数ワンドロワンライアンコール開催分。2周目に見る1話の魏無羨が過ごす夜の話です。2周目ということにすれば、これまでのことを思い出しているんだろうなぁということがネタバレ有りで書けるのでは!?と思い立って書いた話です。草笛で奏でる旋律は全てを失った魏無羨に残された魂に刻まれたものなのだろうなと思えてとても好きです。
    ※画像で上げたものと基本的に同じですが、表現を手直ししています
    残されたもの 魏無羨はこれでも一応途方に暮れていた。
     今の状況で途方に暮れない人はほとんどいないだろう。一度死ぬ前の魏無羨なら、もう少しは不遜な態度でもしてみせたかもしれない。とはいえ、一度魏無羨はこの世から消え、死んでいる間に十六年も時が経っていたらしい。そんな事態なのだから、魏無羨だって多少は途方に暮れても許されるのではないだろうか。
     せめて魏無羨をこの世に蘇らせた莫玄羽が詳細を書き残してくれていれば良かったのだが、どうやらそこまでは考えなしだったのか、それとも詳細を書くことを躊躇っていたのか。
     魏無羨の魂を呼び寄せ、己の魂魄を犠牲にした莫玄羽は魏無羨に負けず劣らず周囲に敵しかいない状況ということは否応なく理解した。一体何をして金家から追い出されたのか詳しくは分からないが、金家にも莫家にも居場所がなかったことだけは確かだ。そんな莫玄羽と一度話をしてみたかったなと思う。もし話が聞けたなら、怨んでいる相手くらい分かるようにしておいてくれとか、陣の描き方のちょっとした間違いなんかを説教してしまうかもしれないけれど。
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    chunyang_3

    MEMOCQL話数ワンドロワンライ5回目(41〜50話)。50話の思追と温寧です。番外編も含めて叔父さんって呼んでるの良いなぁと思っています。思い出さない方が良いと思っていた温寧が、二人で一緒に走って追いかけるんだなぁというところが改めて嬉しいなと思いました。
    焔つなぐ 少し前からもしかしたらと思うことは幾度もあった。己が一体どこの家に生まれ、父母亡き後に一体誰と一緒にいたのか。
     思追は幼き日のことを覚えていなかった。けれどそれは忘れていただけだったのだ。もう会うことは叶わないはずだった人に出会ってから、忘れ去られていた記憶は少しずつ断片的に焔が灯るように蘇っていた。真っ暗な夜空に散らばっていた小さな灯りは、輝く星が互いに繋がり星座を描くように、段々とその全容を理解することができるようになっていた。
     観音廟の外に出ると、思追は駆けつけた他の子弟達に囲まれ、無事を喜ばれながらも観音廟での事の顛末を聞かせてくれとせがまれた。温寧を追いかけて辿り着いてからのことだけでも、思追が説明することは難しい。ましてや金光瑶がどのような人物であったのかを語ることもできそうにない。十六年前に起きたことについても同様だ。それでも、この目で見たことや感じたことはしっかりと覚えておきたいと思った。だからこそ、今はまず不確かな己の過去と向き合いたかった。
    1910

    chunyang_3

    MEMOCQL話数ワンドロワンライ4回目(31〜40話)。39話の刀霊に対面する藍曦臣はどんな気持ちだったのだろうかというのが気になって書いた話です。原作読んでから見るとあの再会シーンだよなぁとも思うところ。この時になって初めて兄上は金光瑶に対する疑念の欠片を抱くのかなと思いはするんですけど、水面が初めて揺らいだ時だったのかもなぁと感じます。
    揺らぐ心 藍曦臣が弟からの知らせを受けて宿に辿り着いた時、藍忘機と莫玄羽はまだ宿に着いていなかった。今ここにいるのは知らせにあった義城で遭遇したという各家の子弟達だろう。若者達は徐々に宿の門の前に集合しつつあった。
    「沢蕪君!」
     藍曦臣に気付いた藍氏の子弟達が近付いてくる。揃って礼をした彼らを見回して、皆無事そうなことに胸を撫で下ろした。
    「忘機はどこに?」
     藍曦臣が問うと、手前に居た藍思追と藍景儀がそれぞれに口を開く。
    「含光君と莫先輩は街を見てくると言っていました」
    「集合の時間を過ぎたのに、まだ戻ってないんですよ」
     景儀が少々不満そうなので、どうやら二人は随分とゆっくり街を見ているらしい。仲良くしているのなら良いことだ。弟がそんなに仲良く連れ立って歩きたいと思う相手などいるのか……と、そこまで考えて頭を振る。これはあくまで仮定の話でしかないし、確証はない。
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    chunyang_3

    MEMOCQL話数ワンドロワンライ3回目(21~30話)。28話の夷陵で再会した忘羨と阿苑の話です。剣と刀で2本買ってもらったんだなぁなんてことを思いながら書きました。
    ※画像で上げたものと基本的に同じですが、表現を手直ししています
    夷陵での再会 子どもがずっと乱葬崗にいるのは良くないかもしれないし、阿苑なら温氏だと誰かに気付かれることもないだろうと、魏無羨は街の様子を見せるためにも阿苑を夷陵の街に連れてきていた。目を離したほんの一瞬でいなくなった阿苑に肝が冷えたのは一瞬で、阿苑はなんとあの雨の中で別れたきりの藍忘機の足元でわんわんと声を上げて泣いていた。
     久しぶりに遭遇した見知った顔が、阿苑を泣かせているなんて思いもしなかった。あんな別れ方をしたのに、再会がこんな笑える場面だなんてことも思いもしなかったけれど。お陰で声を掛けることに悩まずに済んだし、冗談を言って揶揄って、まるで何もなかったかのように話をすることができた。
     屋台の玩具屋の前で足を止め、阿苑に玩具を見せてひやかした。乱葬崗には玩具などないし見せてやるくらいしてもいいだろう。しかし、阿苑に玩具を見せて喜ぶ姿を見た藍忘機は、なぜ買ってやらないと不満気に疑問をぶつけてくる。そりゃあ、お金があったらいくらでも買ってやりたいが、今の魏無羨にはなかなかそうもいかない。
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