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    黒凪 傀

    @kuronagi1014
    マレシル中心にシル右書き手。バスターズとかも書いてます。ここでは俳優パロ連載したい。

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    黒凪 傀

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    アンケ取ったら半分くらいマレシルだったのでマレシルで良いよねってことで。過去編。

    俳優パロマレシル♀過去編(シリアス)※俳優パロ
    ※マレシル♀過去話
    ※シリアス



    最初の記憶は、美しいオーロラ色。
    その色に誘われるように駆けだした自分と、親代わりの護衛と。
    物心ついてから、それが両親を亡くした日の記憶だと知った。
    あの色を見に行かなければおそらくは自分たち二人も死んでいた。それくらいはわかった。
    今もリリアの背に残る傷と共に、マレウスの内には一つだけ引き攣れたような痕が残る。
    あの日、駆け寄らなければ。その足を止めさせなければ。
    彼女は、普通の少女で居られたのではないかと。



    俳優としての道を歩もうと思ったのは、結婚前に女優だった母の面影を追っていたからなのだと。顔も写真でしか思い出せない両親の姿を見ながら思う。
    愛らしさと高貴さの混ざったマレウスの容貌は彼を無二の子役として頂点へ押し上げた。
    王子や人外、或いは神に類するもの。
    なかなかに演じ切る俳優を選ぶその役柄を、彼はまるで息をするように己のものとした。
    幼いながらの美貌と、天性の演技力。若干十歳にして広告の起用率と好感度はトップを走る。
    茨の王子様、の二つ名は眠り姫の王子を主役に据えた舞台を演じたことからファンの間に浸透した。
    忙しさと警備の点でなかなか学校に通うことはできず、しかし常に傍に居てくれたリリアの養女となった彼女と共に励む勉学や仕事を苦と思ったことはなかった。
    けれどただ一度だけ。己の天命とも思った俳優の道を諦めようと思ったことがある。
    普段ならば絶対に漏れることのないマレウスの帰るルート。悪意であったかそうではなかったのはわからない。SNSに拡散してしまったそれに引き寄せられるように、人間が、殺到した。
    憶えていないはずなのに、あの両親を失った日の逃げ惑う人たちを幻視した。
    硬直した己を庇おうとしたのだろう彼女が、殺到する腕の一つに突き飛ばされるのを見た。
    『シルバー!!!』
    あんなにも、喉が張り裂けんばかりの声が出せたのだと、己のことを他人のように思う。
    打ち所の悪かった少女の頭。地面を染めた紅。ざわめきながら何もしない大人たち。
    彼女を抱きしめたまま泣いて、叫んで。救急車が到着して彼女と引き離されるときも『シルバーを連れていかないで』と混乱したまま泣いて。また、泣いて。
    「………………」
    すぅすぅとソファに身を横たえ穏やかな寝息を零す少女の頬に手を当てる。
    シルバーが目覚めたのは、あれから一週間経ってからだった。
    眠れず食えず、周囲に心配されながらもずっと彼女の傍で泣き続けた己を見上げ、白い包帯を額に巻いた少女は『マレウス様、どうなさったんですか!?』と、まずマレウスの心配をしてくれた。
    自分のせいで傷付いてきた彼女。僕と共に居ると不幸にしてしまうシルバー。
    彼女が二歳の時。僕が駆け寄ったために事件に巻き込まれ彼女は孤児となった。
    今回も、僕と一緒に居なければこんな風に傷付くことはなかった。
    それでも手放せないのだから、僕は多分、酷い男だ。
    安堵に泣いた十歳の僕を抱きしめてくれた彼女は、その後から眠るようになった。
    何の前触れもなく倒れ、数分から数時間眠り続ける。
    事故の後遺症は、あれから十年以上経つ今も治る気配はない。
    銀の髪を梳けば、ざり、と。指先に当たる違和感はあの時の傷痕だ。
    そこにキスを落として、己と一つしか年が変わらぬはずなのにまだ少女と言って通じる美貌を見つめて。
    幼いころ無邪気に籠めた熱はどろりとした欲へと変わり、マレウス自身を戸惑わせる。
    きっと、体だけ望めば。彼女はマレウスの願いを叶えるのだろう。
    『貴方にはもっと相応しい人が居ます』の声は、もう脳内で簡単に再生できるほど繰り返されてきた。
    それでも、彼女以外など要らない。
    フローリングの床に座り込んで、彼女の眠るソファに頭だけ預けて。
    普段ならばシルバーを彼女の部屋のベッドに運び、自分は自室で寝るはずが疲れていたのだろう。
    とてつもなく冷えた気配を纏う彼女の養父に叩き起こされるのはこれから三時間後。
    何もしてない、という弁解に『当たり前じゃ!!!!!』と説教を喰らったのは更にその後のことであった。
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