【教令院七不思議】『噂好きな花』その花は、突然現れては噂話を欲しがる。
ただ、どんな花かって情報はあまり無いみたい。
語る人によって大きさも色も種類もバラバラなんだよ。そこだけ語り手が設定し忘れたのか、本当に定まっていないのかは分からないけど、植物として絶対にありえない生え方をしているからすぐに分かるんだってさ。
例えば鉄線の上とか、机の裏とか、人の耳の穴とかね。
……うん、本当に場所は様々なんだ。
『噂好きな花』は対象者を定めると、その目の前に出現する。
可能であれば蔦を伸ばしたり、根を這ったりして対象者が逃げないように囲い込むんだ。そうして噂話を強請るらしいんだけど……最初の一人はどうやって会話できない花が求めているものが噂話だって分かったんだろう?まあいいや、それで、満足のいく話が聞けるとあっさり帰っていくんだって。
中々花を満足させてあげられなくて、朝まで記憶を掘り返し続けた人もいるそうだ。
花と同じように求める噂も形式は無くて、遊学中の友人への推測や人伝いに聞いた片思い相手の事、まさにこう言った七不思議のような余談で抜け出した人も居る。
でも、僕が聞いた話をまとめると総合的に「根も葉もない話」が好みだったみたい。
ね、本当に困った花だよ。そんなもの集めてどうするんだか……ああ、でもこの話を友達にした時、彼は敏感に警戒していたな。
話が逸れてごめんね。僕の友達はマハマトラに所属していて、スメール中の情報を常に探っているんだ。
彼からしてみればこの『噂好きな花』はとんでもない危険因子だったみたい。
どうしたら遭遇できるんだって探し回って、ついにはパルディスディアイで張り込みを始めてね。あの時は大変だったよ。
でも確かに、そう言われてみるとぞっとしないね。
当時は雑談だって聞き流しちゃったけど、もしも『噂好きな花』が誰かが生み出した機械生命体で意図して情報を集めていたら──うーん、そう思うとなんだかソワソワする。
一応伝えておいたほうがいいかな……?
え?「もし花が噂話に満足してくれなかったらどうなるのか」って?
僕が知る限り、全員花から解放されていたみたいだけど……多分、誰にも分からないと思う。
だって満足させられなかった結果を知るには、満足させられなかった本人に語ってもらうしか手段が無いからね。