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    きみどり

    @kimi_0812

    かきかけ途中のログ投下場所なので、完成したものはpixivに体裁整えてまとめています。
    詳しい事はプロカを見て下さい。
    TRPGは全部ワンクッション入れているので、閲覧は自己責任。
    リンク一覧:https://lit.link/gycw13

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    きみどり

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    凪砂くん、茨ママのお仕事を手伝うの巻。
    オフの日デート匂わせてますけど、この凪茨まだ付き合っていないんですよ。

    #凪茨
    Nagibara
    ##底なしのこころ

    コズミックプロダクションの副所長室に、キーボードを叩く音と、電気ケトルが湯を沸かす音が静かに響く。
    「……茨、コーヒーのむ?」
    「ありがとうございます。頂きます」
    「……ずっと作業しているから、コーヒーをのむついでに一息いれたら?」
    Eveからこの間のロケのお仕事のお土産、と言って一口サイズの可愛らしいチョコレートの詰め合わせが、コーヒーと一緒にデスクの上に置かれる。
    「お気遣い、ありがとうございます……」
    「……考えごと?」
    「えぇ、まぁ」
    「経営のこと?それとも茨自身のこと?」
    「自分……ですね。心因的な不安を取り除かないと、最終的に解決には至らないと、頭では理解しているんですけど」
    眼鏡を外し、デスクの引き出しからメガネ拭きを取り出し、簡単な手入れを始める。何気ない、いつも通りのルーチンワークをして、少しでも気を紛らわせたい。
    「“ライブの成功”これこそが、自分が乗り越えなければならない壁だと思いますが……未だに自分の中でどう目標を立てればいいのか分からないままで。ライブの日を決めなければ、そこに向けての目標も計画も出来ないのは分かっているんですが……決められないんですよねぇ」
    「……茨にはアイドル以外の仕事もあるから、尚更だよね。茨、私にも何か手伝えることは無い?」
    「いえいえ!閣下に手伝って頂くまでもない雑用ですから!」
    「……雑用と言うなら、茨がやらなくてもいいんじゃない?」
    あまりにもド直球でド正論の凪砂の言葉に動揺して、ガチャンと手入れをしていた眼鏡をデスクに落とす。慌てて眼鏡をかけ直し、落ち着くためにコーヒーを一口。その様子を見届けてから、凪砂は再び口を開く。
    「……茨が事務所の副所長としての仕事をこなしている間、私だけレッスンできる時間があっても困る。ちょうど、今みたいなね。それなら茨がしなくていい仕事は他人に任せて仕事量を減らすか、2人で早く済ませるかして、一緒にレッスンできる時間を確保した方が有益だと思わない?」
    「ド正論すぎて反論の余地がありませんね!!!」
    茨はデスクに積まれている書類のひとつを手に取り、ぺらりとめくる。事務所に所属しているユニットの企画書だ。
    玲明・秀越の両校には自らライブを企画運営するという習慣は無いが夢ノ咲にとってはそれが当たり前で、いい意味で刺激を受け提出される事が多くなった。頭の硬い、老害達が見れば“自ら企画”の時点で憤死してしまいそうだが、そんな事を続けていたらあとの芽が育たない。だからこそ、副所長である茨が責任を持って見ている。ただし、急ぎの案件ではない事がほとんどなので、普段の仕事の片手間に、添削しているため、見ての通り山積みになってしまっている。
    「ふむ……。自分の仕事を手伝うと言ってますが、閣下はデスクワーク……やった事ありましたっけ?」
    「……ないけど?」
    「じゃあ何で手伝うとか軽々しく言うんですか?怒りますよ?」
    「だって……茨なら、私を上手に使えるでしょう?」
    「それは、どういう……?」
    「……茨の指示は的確で分かりやすい。一緒に活動する事になった時から、私いつも言ってたよね」
    あぁ、なんて身に余る言葉だろう。
    自分のためだけにやっていた、独りよがりだと思っていた事が、今こうして返されている事が、堪らなく嬉しい。
    「……いつも通り、私を上手に使って」

    ***

    (め…………めちゃくちゃ早く終わってしまった……!!!!!!自分、閣下のスペック見誤ってました!!!!!!申し訳ありません!!!!!)
    書類が片付き、広くなったデスクから凪砂へと視線を移せば、自分の働きっぷりはどうだったか?と聞き出そうな視線と目が合う。
    「えーっと、その……閣下、ありがとうございます」
    「……茨の役に立てて、何よりだよ。ところで、明日はオフの日だったよね?」
    「あっはっは☆(事務作業をするつもりでしたが)暇になりましたな!!!!!!!」
    「……久しぶりに、一緒に過ごす時間作れない?」
    これは、いわゆる、お誘いというやつか……!?殿下もジュンも、あの手この手で休ませたり、遊ばせようとしていたが、まさか閣下までそれに乗ってくるとは想定外だ。
    「仕事とか、レッスンとか、そういうしがらみをひとまず置いといて、羽を伸ばさない?」
    「閣下のお誘いに、自分が断る理由はありませんので、喜んで……というより、自分で良いんです?」
    手早く荷物を片付けながら、凪砂の返事を待つ。会話が無いまま時間だけが過ぎるので、様子を伺うように顔をあげれば、ばちりと視線が合う。溜めに溜めた、蕩けるような笑みを作り、その綺麗な唇が自分の名前を呼ぶ。
    「……茨“が”いいんだよ」
    その声を聞いた瞬間、頬も耳も、何なら顔全体が熱を持ったような感覚に陥った。何でしょう、この腹の底からこみ上がってくる、むず痒い気持ちは。もっと分かりやすく表現すると、嬉しくて顔から火が出そうだ。なんだこの頭の悪そうな表現は。
    「……か、閣下のお考えは、やはり、よ、よ…予測できませんなぁ!」
    分かりやすい動揺をしながら、茨は荷物を持って足早に部屋を出る。あまりに素早い行動だったので、呆気に取られ部屋の中で凪砂は立ち尽くす事しかできなかった。
    暫くすると、副所長室の扉が開き部屋の主が顔を覗かせる。
    「閣下、戸締りするので早く出てもらっていいですか?」
    「……待たせちゃって、ごめんね」
    そう言って茨の横に立ち、並んで歩く。
    ESビルの廊下から、正面玄関を出るまで、ずっとその距離を保ったまま凪砂は歩いた。
    眩しく、焼け付くような照明のもとで、鼓膜を震わせる歓声の渦の中で、そして、感情の渦巻く熱気の中で、確かに自分達は立っていた。この距離で、この立ち位置で。
    ステージの上で披露した愛の交歓、それを体が、心が、欲している。
    明日はオフだから何しようか?と茨に声を掛けながら、そっと自らの欲を頭の片隅に追いやった。
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