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    マンスリー左寂お題企画(@319_1month)様のお題で書いた左寂です

    #左寂
    leftSilence
    #monthly左寂

    左馬刻が寂雷の家を訪れる時、大抵は何処か有名な飲食店の紙袋をその手に携えている。気を使わなくともいい、と伝えても自分が食べたかったから、と言われるので、近頃は寂雷も素直に楽しみにしている。
    今日の手土産は老舗和菓子店の月見団子で、夕食後、せっかくだからと縁側に持ち出し座布団を二つ並べた。見上げた夜空には星の光を潜ませるほど煌々と輝くまるい月が浮かび、庭先のススキが秋風に揺らされながら黒い影を伸ばしている。
    「お酒が飲めれば、月見酒というのも風流だと思うのだけどね」
    一緒に持ってきた急須で寂雷がお茶を淹れる横で、左馬刻が団子をパクリと口に入れた。何回か咀嚼し飲み込んだ後、湯呑みを手にする。
    「団子には、酒よりこっちの方が合うだろ」
    ズズ、と音を立てて緑茶を啜るその横顔は涼やかな光を反射し、月暈のように淡く輝いている。その美しさに目を奪われ、寂雷は無意識に手を伸ばしその唇に自分の唇を寄せた。月見団子の優しい甘さに、きゅうと胸が疼く。
    「センセーからなんて、珍しいな?」
    「……狼男は、満月の夜に正体をあらわす、と言うだろう」
    蒼い瞳が情欲を帯び、まばたきと共にしっとりと濡れる。秋波を送られた左馬刻は、団子をひとつ摘み、それを寂雷の口の中に押し込んだ。自分も二つ目の団子を頬張り、先程よりも早く飲み込む。紅い瞳が、炎のようにゆらりと揺れた。
    「なら、これはさっさと食っちまおうぜ」
    寂雷は上手く火を灯せたようだと満足げな笑みを浮かべ、押し込まれた団子を飲み込んで次の団子に手を伸ばした。満ちていく胃とは裏腹に、腹の底はぐるぐると疼いてひたすら飢えを主張する。この飢えが満たされるまで、もう少しだけ、時間がかかりそうだ。
    (あと、四つ……)
    残りの数を数えながら、二人は黙々と月見団子を口の中に入れていく。飢えた獣のように貪欲なその姿を、たっぷりと満ちた月だけが、静かに見守っていた。
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