--『黒曜石の髪飾り』を手に入れました--
モンスターをやっつけてすぐ、視界の端にそんなメッセージが浮かび上がった。剣をなおした左馬刻が手を出すと、手袋の上に黒い石が2つ。
「アイテムゲット!やね〜」
「攻撃力を強化する効果があるようですね」
「それやったら、左馬刻が着けとくんがええな」
「おう」
黒い石を持ったまま、左馬刻が神宮寺先生の方をチラリと見る。視線に気づいた神宮寺先生が、左馬刻の手から黒い石を取った。
(何で、先生が?)
謎の行動をとる2人に戸惑っていると、神宮寺先生が左馬刻の三つ編みの留め具に触れた。
「せっかくだから、編み直しますね」
「頼むわ」
(何やねん、この空気は。編み直し?)
声に出さずに突っ込んでいるうちに、留め具が消えて緩く解けた左馬刻の三つ編みを、神宮寺先生が編み直していく。当たり前〜みたいな雰囲気出しとるけど、左馬刻、そんなん他人にさせるキャラちゃうやろ!?
「はい、出来ましたよ」
編み直された白い髪に黒い石が留まる。視界の端に左馬刻のステータスが浮かび、攻撃力の数値が上がった、のはええけど。
「左馬刻、自分…」
センセーに何させとんねん、と突っ込もうとして、言葉に詰まる。左馬刻が三つ編みをそっと撫でた、その表情があまりにも優しかったから、分かってしもた。
("他人"や、ないんか)
「なんか言ったかよ、簓」
「……いーや?"良かった"なぁ、左馬刻」
「おう、次行くぞ」
機嫌の良さそうに歩いていく左馬刻の後ろを神宮寺先生が着いていく。後ろから2人を見ると、気づかんかったのが不思議なくらいには、お似合いやった。
(盧笙に会いたなってきたわ……)
急に隣が涼しく感じる。結構厚着やのになあ、この服。
「何ボーッとしてんだ、置いてくぞ」
「あー、すまんすまん」
ま、神宮寺先生(こいびと)と一緒にいる左馬刻なんて、滅多に見れるもんやない。せっかくやから人間観察も楽しませてもらお、と心の中で勝手に決めて、2人の後を追った。