付き合いで遊i郭を初めて訪れた千がうっかり迷い込んだ路地裏で変な奴に絡まれたところ偶然通りかかった黒千に助けられるんだけど、お互い時間がなくて名前もろくに伝えられずに別れてしまう。
また黒に会いたいと思った千は再び遊郭に向かうんだけど途中で花魁道中に道を阻まれる。ひときわ高い歓声が上がる方を見て息を呑む。花魁姿の黒がそこにいたからだ。綺麗に着飾り化粧をしていて初めて会った時とは別人のように澄ましているが、見間違うはずはなかった。
昼間は町はずれの小さな古屋で子供相手に勉強など教え、夜は趣味の科学実験やカラクリなんかを作って過していた世間知らずの千でさえ花魁がどういうものか知っている。今までお金なんかに全く興味なく生きてきたが、それらが必要だとわかると色々な手やツテを使い金を集めて花魁に会いに行く。黒は千の身なりから生きる世界が違うとわかっていたから千を突き放すような態度をとる。どんなに心惹かれても、彼が自分を身請けできるような地位や名誉や金を用意することなんてできないのだから。
諦めるように促す黒。それでも千にテメーを手に入れる為の方法を一から探すだけだと笑われ、揺らいでしまう。千と過ごした一夜を大切な宝物にして、黒はすでに2度通っている若旦那の身請けを受ける決意をする。一度自分に会いにきてくれた。それだけで、かなりの借金をしてしまったはずだ。千が破滅するところなんて見たくなかったから。
若旦那との話がまとまりつつあったそんな時、やっと千も2度目の訪問を取り付ける。黒は身請けが決まっているから無駄金なんか使うなと警告しにこっそり千に会いに行く。そこで千に迎えに行くから大人しく待ってやがれ。と言われてそのまま2度目の逢瀬を果たしてしまう。店以外で男と会ったことがバレてしまい、黒には監視がつき、千にはありえないほど高い身請け金が提示されてしまう。
本来なら身請けが決まっている花魁を別な男に、それも法外な金額をつけて身請け話を持ちかけることはないのだが、千に手の届かない存在だと見せつけるだけの提示だった。
いくら千が自作のからくりなんかを売ったところで作れる金額ではない。
店前でそんな茶番を繰り広げ、千に2度と敷居を跨がせないため辺りの店や客に見せつける徹底ぶりだった。

若旦那に身請けられる日、綺麗に着飾り店を出ると両手を広げて立っていたのはスーツ姿の千だった。
怒り狂う元締めに提示された金額を耳を揃えてきっちり払う千。
騒ぎになり、ギャラリーが集まる中、提示された金額を耳揃えて用意したなら身請け話に応じろとヤジがとぶ。
皆の前で恥をかかせるつもりでやった茶番が裏目に出た。
地位は？と食い下がる元締めに1枚の紙切れを渡す千。それを見た元締めはさっさと行きな！2度と顔見せんじゃないよ！と黒を追い出す。
千はこの短期間で国の研究機関のトップになり、地位と名誉と金を手に入れていた。
もともと、オファーが来ていたが興味がなくて断り続けていたが、黒を手に入れるために必要なら話は違うとなったわけだ。
ただ、いきなりトップになりました。だけじゃ弱いと思い、いくつかの実績を作るのに時間がかかってしまったのだった。その、時間を稼いでくれたのが若旦那だった。
実は千と若旦那は昔からの知り合いで、千と取引をして花魁の身請けをするふりをして他の身請け話を遠ざけてもらってもいたのだった。
それら全部を、知った黒はもう千に降参するしかなかった。一生幸せにしろよ。と涙目になりながら千の腕の中に飛び込んだ。