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    Go_neXt_T

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    梶ちゃんの死ネタ。※このあと無事かけろーに保護されました。

    梶隆臣が死んだ。
    遠い地でフロイドを庇って挑んだギャンブルで、勝負には勝ったがいつかの島のように出血を伴う結果であった。内戦の続く異国ともあり、日本の賭郎を呼ぶ間など無かったのだろう。荒くれ者達の用意した場では不利であり、それでも勝って見せたが、怪我が重く逃げるには相手の数も多過ぎた。
    勝負前にフロイドと逃走経路を打ち合わせており、梶が賭けで追手と時間を稼いでいる間に相手の目的であるフロイドを逃がそうという段取りだったと言う。
    結果フロイドと梶に追手が分断したのもあり、フロイドは逃げ切ることが出来た。
    その後、梶に渡していた連絡用の携帯の位置がロストしたのを見、梶が失敗したのだと悟った。

    『もしもの為に言っておくが俺が危なくなったらこの携帯を壊して位置を消す。
    そうしたらお前は俺が死んだのだと理解しろ。
    危険が迫っているだろうから嘘喰い達と合流することだ』

    そう以前に伝えておいたその逆を梶はやってみせて同じメッセージを伝えたのだ。
    どうしようもなかった。
    その廃ビルを後にし、出来るだけの組織の情報とその廃ビルにあるだろう遺体についての情報を日本の賭郎のトップへと流した。

    嘘喰いがその廃ビルへ訪れたのは随分後になってからだった。
    どこかで生きている、もしくは人質かと信じたかったからだ。
    かの組織を賭郎を率いて武力も数も揃えた上で賭けに勝ち、組織を取立てた。そこの人質の中に梶は居なかった。
    武装組織にそうそう賭けで挑む輩など日を空けずやって来るはずがない。
    半ば拷問にも近い方法で問い詰めるととっくに殺したと男は言った。
    あの日、あの場で。

    "ギャンブルがなんだってんだ。
    金目の物を持ってるわけでもない、アジア系とは思っていたが日本人とは思わなかった、人質としてこんな使える奴だとは思わなかった。
    勝敗なんて銃だろ、うるせえって撃ったよ。そしたらアイツゾンビみてぇに血だらけの癖に離しやがらねぇ、気味が悪くっー"
    スラングだらけの丁寧とは全く言えない言葉を語る口をどう止めたのかはもう憶えていない。元より死体の数を数える性分でもない。
    信じられないからその足で事が起こったビルへ行った。
    少し前の紛争に巻き込まれたまま廃ビルになっているので屋根は崩れているところが多く、陽光が暖かく差し込んでいた。
    自然、立ち入られるルートも限られ、そして発見も早かった。
    大きな鳥が何羽も集まっていたから。
    追い払って見るとそれは一部だった。
    日を置いて啄まれても目立つ複数の大きな銃痕はショットガンか?
    陽の光に照らされて明るい廊下でそれは黒く落ちていた。
    気づいたのはその黒色がカーペットのように廊下を続いていることだった。

    ああ、もう分かってしまう。
    彼は生きたんだ、必死に…。
    撃たれ激痛でも離さなかったんだということを。
    フロイドを逃す事こそが彼の賭けの勝利条件だったのだろう。
    彼は1人で護りきったのだ、賭けもルールも、命も。
    悲しいことにそれは彼自身を蔑ろにした結果だった。
    自己犠牲や献身なんか画面の中の話なのに。
    彼はそういう形でしか大事なものを護る術を知らなかったのだろうか。
    ビルの出口の程近く、酷い腐臭と数多くの虫が集っている中心に、ひときわ大きな欠片があった。
    顔は原形を留めず、下半身は無くなっていた。指は歪な形で固まっており、最後まで引き止めようと離さなかったのが窺える。かろうじてその体躯に黒い布を身に纏っているのが、梶隆臣なのだと実感させられた。
    酷く傷んだ状態の遺体に持って帰るのはこの欠片にしようと決めた。
    かの優しく強かな博徒の青年の、脳も心臓もちょうど揃っていたから、葬式を挙げるにはこの部分が1番いいと思ったのだ。
    日本に帰って、青い空に煙に変わって昇っていく彼を見ながら、やっぱり彼のこの部分を弔ってあげられてよかったと沁みる涙に思った。







    僕の記憶は薄っすらしている。
    よく、僕がぼーっとしていることを先生?たちは何か言っているようだったけど、まだ喋っている内容は難しくて僕には分からなかった。
    みんなそろって園内の砂を駆けて、端っこに生えてるたんぽぽの綿毛やダンゴムシとかミミズで遊んだりする毎日。
    僕の身長より高い柵で覆われたこの箱庭の外は知らない。

    けど、そういうのとはちがう思い出が僕には考えるちからがついた時からあって。
    夢を見たときみたいにうまく思い出せないけど、でも、なんだか忘れちゃいけない気がするから、よく思い出すようにしてる。
    それに、その思い出はすっごく胸のあたりがほわほわしていっぱいに満たされるんだ。
    お日様の当たる窓辺で昼寝するのよりずっとあったかい感じが胸の中にいっぱいになる。
    宝物の記憶。
    僕が高いところから見下ろすようなかたちで、下にいるのは沢山の人たち。
    みんな、悲しそうにしている。
    笑ってる人は1人もいない。
    それでもなんだか僕は嬉しくて。
    いっぱいいる人たちが皆んな僕の為に集まってくれてるのを知ってるから僕は嬉しかった。
    ほんとうに色んな人でいっぱいで、皆んな黒い服なのに同じような顔の人が全然いない。
    幸い空を飛んでるような状態だから皆んなの顔をじっくり覗いて周る。
    暗そうな顔をしてるこの人はいつも暗そうなだけ。でも、今日は僕のためになのかな?シャボン玉を飛ばしてない。
    仏さまみたいな顔をした人も表情が分からないのはいつものことだけど、空を仰いでくれてる。飛んでる僕のことを見えないけど想ってくれてるのかな、だったら、嬉しいな。
    鼻が高くて髪の色が先生や僕とは全然違う人。先生が見せてくれるえいごのテレビで見た人と雰囲気が似てる。あんまり黒服が似合ってないなぁと笑っちゃった。でも、あんまりにも顔が悲しそうで、目が赤くって、ああ、また手のひらで顔を覆ってしまった…。小さく、小さく謝るのが聞こえる。謝らないで…僕はあなたのことを守ることが出来て本当に良かったって、顔をまた見れて安心したのに…。あれ、えっと…?何から守ったんだっけ、それはいつも思い出せないんだよね。
    それから、いつも最後に彼を見る。本当は上から見た時からいちばん目についていたんだ。だって真っ白な髪の色だから。まつ毛まで白い。
    でも、なんて声を掛けたらいいのか分からなかった。そんな顔をしないでほしい、すっごく悲しそうで。
    だから届かないって分かってても胸がぎゅってなって、何度も何度も彼の名前を呼ぶんだ。
    でも届かないから彼はずっと悲しそうな悔しそうな顔をしてて、ああ、僕はここにいるのに、って。
    いつもここで体がぐわっと浮いて、それ以降は思い出せない。
    分からない、会ったこともない人たちの思い出。でも夢だとは思わないから思い出であってるんだと思う。


    ある夜、なんだか目が覚めて寝つけないからお水を飲みに行こうと廊下を歩いていたら、廊下の窓からそれは見えた。
    桜の木を照らす街灯で闇の中を目をこらしても間違いない。
    園の柵がちょっぴりだけ開いていた。
    どきどきした、多分悪いことだと思う。
    でも思い出のなかの彼らに会いたかった。
    僕は廊下をキッチンとは反対側にこっそり歩いて運動靴に履き替えて、園の外へ飛び出した。
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