クウラの秘密
月明かりが辺りを照らし出す夜。
自分と夜番しか起きていないことを確認したクウラはそっとアジトを抜け出した。
目指す先は数km先。バイクで行けばあっという間だが、あいにくと数年前からガソリンは空だ。
そして、その確保の優先順位はかなり低い。
空っぽの小麦袋。ボロボロの衣類。すぐ底を尽く火薬類。壊れかけの家具。移動手段はそれらを全てクリアして、初めて悩む必要のある贅沢品だ。
そして、それは恐らく、この先一生手に入れることのないものだろう。
ぐっと砂を踏みしめながら、一歩一歩前に進む。砂漠の夜は寒い。もう一枚羽織ってくれば良かったという後悔と、そんなものどこにあるのかという自嘲が混ざって、乾いた咳になった。
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