友達だから――……、リオンのその言葉と共にちゅっと唇に軽く触れたものがあった。
それが、リオンの唇だと気付いたのは、口付けが終わった後のことである。
また別の日のことである。
友達だから、と前置きと共に再び口付けをされる。
エフラムは特に嫌悪感などはなかったので、リオンからの口付けはすんなりと受け入れていた。
――友達だからか……。
リオンが望むなら、応えてやりたいとエフラムは思う。
その気持ちは、ただ純粋なものである。
こうして唇を重ねている時、リオンが何を考えているのか、エフラムには分からない。エフラムも何を考えればいいのか分からないので、無心である。
この行為が、特別なことを意味することは互いに理解はしている。
リオンが求めているのならば、それで構わないと思う。 唇を離すと、もう一度口づける。
エフラムはリオンが満足するまで、それを受け入れるつもりだ。
初めての口付けは、リオンに座学を教えてもらっている時のことであった。
エフラム、と名前を呼ばれ、どうした、と答えれば、リオンはどこか神妙な面持ちで「友達だから」と呟き、エフラムへ口付けを贈ったのだ。
ただ軽く唇が触れるだけのもの。
たったそれだけのことなのに、リオンの唇はいつも震えている。
緊張しているのだろう、そう思うとエフラムの心もリオンと同調するように固くなる。互いの緊張を解く術は分からないが、この瞬間は心地良いものでもあった。
「はっ…」
僅かに開いた唇の隙間から、吐息が漏れて重なり合う。
重ねただけの口付けは、リオンの方から離される。
それを名残惜しいと思い、エフラムは何か声を掛けようとするが、何を言えばいいのか迷ってしまう。
エフラムの目が泳いでいることに気付いたのか、リオンが口を開く。
「……また、していい……?」
「あぁ」
エフラムが短く答えれば、リオンは再び唇を寄せてくる。
柔らかで湿った唇の感触――……。
この先のことを、考えてしまうと少しの戸惑いが生まれる。
――触れてみてもいいだろうか。もっと、リオンを求めてみたい…。
いつもはリオンから求めてくるが、エフラムもまたリオンを求めてみた。
手を伸ばして、リオンの髪へと触れてみる。
髪を何度か梳くと、驚いたようにリオンの身体が揺れる。
ちゅぷっ、と舌がエフラムの唇を舐めてくる。
「!」
それが合図のように、エフラムは口を開けてリオンの舌を招いた。
「…っ、ぅ」
互いの舌が触れて、リオンの震えが増していく。
くちゅっ、ちゅぶっ、ちゅぷくっ……。
「んっ、」
口の中を探られ、普段他人に触れられることのない場所を刺激されると、妙な感覚が生まれる。エフラムはその感覚に、恐怖を抱いた。
自分の知らない所を暴かれていく。心の奥底が震える。未知の感覚を受け入れる。
エフラムの中で、期待と恐れが入り交じっていく。
口腔を滑るリオンの舌は、まるで別の生き物のようだ。
「ぁ、ぅっ」