彼女の心『前略 ウツシ教官
貴方が今、この手紙を読んでいるという事は、
私は、この世に居ないのでしょう。
深淵の双龍と相討ちでしたか?
教官の技術を全て与えて下さったのに、力及ばず倒せなかったのならば、
教官の手を煩わせる事となる事をお詫び致します。
不肖の弟子で申し訳ありません。
もう一つ、教官に謝らなければならない事があります。
私は貴方を恋い慕っておりました。
恩師に、斯様な不浄な想いを抱いてしまい、誠に申し訳なく思います。
死して尚、貴方を悩ませてしまう愚かな弟子を、お許し下さい。
貴方の幸せを心から願っています。
早々』
「…………」
愛弟子に言われた場所で茶菓子を探していたら、出てきた俺宛の手紙。
中身は、深淵の双龍を討伐しに行く前に書かれたものだろう。
「教官?ありました、か…あああああああ!!!」
顔を覗かせた愛弟子は、俺の手にある手紙を見るなり、物凄い速さで手紙を奪い取っていった。
彼女の顔は、真っ赤に染まっている。
「ねぇ、愛弟子。それ…」
「こここれはですね!ちょっと恐怖で錯乱してたというか!逆に興奮状態だったというか!」
「そこに書いてあったの、本当?」
「決戦を前に本音がついポロリと出たと言うか!死んだとして悔いが残ったら化けて出そうだなとか!」
「俺も愛弟子を恋い慕っているよ」
「いや本当にどうかしてたんですよ!本当に…………え?」
大きく見開かれた目が溢れそうだね。愛弟子。
「俺も、キミが好きだよ」
弟子に恋情を抱くなんて、俺も教官失格だね。