夜の集会所は、昼間とはまた違った賑わいを見せる。
「猛き焔ってったって女だろぉ!?俺が操竜してやるよ!」
男ハンターの卑下た笑いに、そこに居合わせた里の者は顔を顰めた。
そして、この里の猛き焔の恋人でもあるウツシの顔を見て、一斉に青褪める。
(((あの顔は殺る気だ!)))
里の英雄を貶した男が、どうなろうと別に気にはしないが、後片付けが色々と大変な事になるだろう、と里の者達が、どうしようかと悩んでいると、
「ただいま戻りました〜」
クエストから件の英雄が帰って来てしまった。
「愛弟…」
「お!英雄さんのお帰りじゃぁねぇか〜!」
「…誰ですか?」
酒臭い息を撒き散らして、男ハンターは狩人に近づく。
強かに酔っているようで、眉間を寄せた彼女にも、殺気を飛ばす彼女の恋人にも気付かないようだ。
里の者は血の海を覚悟し、酔ってない里外のハンターは顔を青くし、彼女の恋人はクナイを構える。
男ハンターが彼女の肩に触れようとした、その刹那。
青白い糸か体中に巻き付いた男ハンターが、床に転がっていた。
猛き焔と呼ばれる彼女だったが、その瞳は絶対零度のように冷ややかだった。
「教官!ただいま帰りました!」
「わぁっ!お、おかえり!愛弟子!」
満面の笑みで恋人に抱きつく狩人。
ウツシは驚きつつも、さっきまで放っていた禍々しい殺気を跡形もなく消し去って、愛しい恋人を抱き留める。
血の海を回避した事に里の者はホッと胸を撫で下ろし、狩人の英雄たる身のこなしの素早さに、里外のハンターは青かった顔を更に青くした。
狩人は芋虫のように転がる男ハンターには見向きもせずに、集会所にいる者達に挨拶をして、恋人に手を引いて集会所を後にした。
「愛弟子を操竜するなんて、俺以外には出来ないよ」
彼女は猛き焔。
どんなモンスターよりも強いのだから。