「オレ達より先にいなくなってしまうからと言って、ポケモン達を愛さないなんてないだろう？」
「忘れる事ができない程に傷つくのも、胸が張り裂けそうな程に悲しいのも、それだけ真剣に心から彼らを愛した証なんだ」
「生きている限り、誰もがいつかは居なくなる」
「傷つくのを恐れて何もせずに、愛してると伝える事もできずに喪ってしまう方がオレには耐えられない」
「好きだキバナ」
「キミを愛してるんだ」

「オ、レさまも……ダンデが、すき…」

ずっとずっと秘めておかなければと、消してしまわなければと思っていた想いを口にしたら、ポロリと涙が溢れた。
オレさまの想いのようにポロポロと次々に溢れる涙はダンデを滲ませた。

「キバナ…」
「す、きだ…オレさま…ダンデが、すきだよ…」

壊れた蓄音機のように、口からは好きだという言葉しか出てこない。
自分の手で涙を拭っても、ダンデが優しく指で拭ってくれても、一瞬視界が晴れるだけで
次の瞬間にはまた涙で滲んでいた。
このまま泣き続けたらダンデに呆れられてしまう、と思っていたら、首の後ろにダンデの手が触れた。
そのまま抱きしめられる形で、ダンデの肩にオレさまの頭が、ぽすりと乗った。

「ダ、ンデ……っ、濡れる…ズッ…」
「濡れても乾くから大丈夫だぜ」

男前ぇ…。
オレさまが好きになった男は、いつだってカッコいい。
強くて優しくて可愛くてカッコいい。
そんなパーフェクトな男は、オレさまの事が好きなんだって。

夢みたいで、嬉しくて幸せで、胸が苦しくて温かくて、心臓がドクドクうるさくて止まりそうだ。
涙は止めたいのに、ずっと止まらなくてボロボロボロボロ次から次へと溢れてくる。
ダンデの服がびしょ濡れになっちまう。
色々言いたい事もあるのに泣き過ぎてしゃっくりしか出ないし、鼻も詰まって息も苦しい。
ダンデ、鼻水ついたらゴメンなぁ。
キミ、干からびてしまわないか？なんて笑って、ダンデがオレさまの頭を撫でてくれる。
優しい手に、また泣けてくる。
オレさまが干からびたら、オマエの所為だからな。
ちゃんと水分与えて戻してくれよ。

「キバナ、そろそろ顔が見たいぜ」
「…………ヤダ」

きっと、すっげぇ不細工になってる。
ドラゴンストームキバナ様が、愛しい男にそんな顔を見せるなんて許さない。
泣き過ぎて目も開かないし、鼻も垂れてる。絶対。
ダンデに見られたくない。
肩を掴まれたと思ったら、勢いよくダンデから剥がされて驚いた。
驚き過ぎてボロボロの顔を隠すのも忘れて、ぽかんとダンデを見てた。
オレさまの様子を見て、ダンデは眉をハの字にして微笑んだ。

「〜〜〜ヤダって言った！」
「ハハハッ！すまない！」

慌てて顔を隠したオレさまにダンデは笑ってタオルを寄越してくれた。
勢いよくそれを奪い取って顔に当てる。
少しだけ目を出して、ジトリとダンデを睨む。

「キミ、かわいいな！」

なんだよその笑顔！オマエの方が可愛いんだよ！
オレさまダンデの前ではカッコ良いオレさまでいたいのに！
恥ずかしいのと嬉しいのと悔しいのと怒りで頭の中がグチャグチャだ。
顔をタオルで覆い隠す。

「キバナ」

名前を呼ばれて手首を掴まれたと思ったら、手の甲に柔らかいものが当たった。
今の、ダンデの唇？
オレさまの手首は掴まれたまま下に降ろされ、それと同時にタオルも顔から剥がれる。
泣き過ぎて腫れぼったくなった目に映ったのは、柔らかく微笑むダンデだった。
そっと両手で頰を包まれて、ダンデが背伸びしてオレさまは少し前に屈んで
美しいトパーズの瞳が少しずつ閉じられていくのを見て、オレさまも目を閉じた。
柔らかい、温かい唇が、ゆっくり優しくオレさまの唇に触れた。
温もりがひとつになって心地いい。
それとは裏腹に心臓が凄い音で鳴ってて落ち着かなかった。