蹴り飛ばす意味すらなく 自分をベッドに押し倒し、覆いかぶさる新緑の色をもつ美しいサーヴァントをかすむ目で眺めながら、ロマニ・アーキマンは自身の心情の動きにソロモンであった頃との相似を見つけてひどく不快な気分になっていた。
どうしてこうなったと問われても、ロマニ・アーキマンにはいまいちよく分かってはいなかった。
根を詰めすぎだと仕事を取り上げられて自室に休憩に戻る途中、ダビデ王と行きあって、何を話したわけでもないのに部屋まで付いてこられて寝台に押し倒されて衣服をはがれようとしている。終了。
ダビデ王に特に欲情とか熱っぽい視線とかそんなものは見られなかったが(むしろいたずらっぽいというかなにか楽しそうではあった)、まあこれで寝かしつけてくれようとしているんだろうとか思うほど初心でも清い身でも無かった。
というかこの人は、目の前の男が息子?息子とは言えないまでも肉体の血縁的には紛れもなく実子のものだと分かっているのだろうか。自身が避けていたこともあり、そういった踏み込んだことをダビデ王と話したことは無かった。全てわかっていますよというような顔をしたかと思えば、飄々と本心を悟らせない人だったもので。
でもまあ、と緩やかに思考を巡らせる。
ソロモンだったときも『こういうの』あったよなぁ。
その時の自分は身体を作り変えていて、その時も確か自身が貴方の子であるとは伝えてはなかったけれど。
あの時、父は抱いている女が息子であると気がついていたのだろうか。今のこの男はどうであろうか。とりとめのない思考は、まあどうでもいいか、というところに帰結して、そうして自分はすっかりきれいに裸になっていた。
こういうところ、ちょっと人間味が足りてない気がする。と思うとめちゃくちゃ気分が沈んだが、まあ個人差個人差、ほらボクってまだ精神的には成長期だし。と言い聞かせたらちょっとマシになった。
心理的な問題は特になかったが、肉体的な問題があった。端的にいってめっちゃ疲れてる。
眠気はないが意識と視界が霞んでいる。ヤバのヤバであると言えよう。如何に偉大なるダビデ王に請われているとはいえ一刻も早く長く休息をとりたい。
「ダビデ王」「ん?」「ボク寝ますね。体は好きに使っていいんで」
おやすみなさい。返事も聞かずに体の電源をブチッとした。これぞ人類の英知、最効率の身体回復入眠である。そうと分かっているセックスくらいでは起きるつもりはない。さよならバイバイ。
おはよう。特にいい目覚めではないがそれなりに疲れはとれた。
ダビデ王はとっくに居なくなっていて部屋には自分一人だった。
きれいに布団は掛けられていたが、股関節とあらぬところが痛むのでまあセックスはしっかりしてったんだなと思う。なにせ相手はサーヴァントなので確証は残っていないのだが。腹を下さなくて便利便利。
汚れ自体はさしてないが、寝汗くらいはかいている。管制室に向かう前にシャワーを浴びよう。
そうして廊下に出た頃には、すっかりいつもどおりであった。
真実も事実も、何一つ価値はなく、路端の石のように転がるばかり。