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    終局バレ
    人間として生まれ変わってすぐに感情をぶちっと引きちぎったタイプのロマニ。CPなし

    ほぼポエム注意

    きみはかわいいお人形 本当に本当に幸運なことに(あるいは不幸なことに)男はひどく優秀であったので。


     バチリ。と、己が人間へと変じる寸前ソロモンは世界の終わりを『見た』
     いつかは分からない。何故かは分からない。犯人さえも分からないが、己が原因だということは分かってしまった。

     人類滅亡なんてモノを見て、都合が悪いから見なかったことにしようとか、自分でなくとも他人が何とかするだろうとかそんな風に出来るほどソロモンという男は楽観主義でも悪辣さもそなえていなかった。何とかしなければ。そんな風に考えてしまうほど骨身まで望まれることだけで生きてきた男だった。

     というわけで産まれたばかりの名もなき男はさてどうしたものかと思考を巡らせ、あ、これ(感情)邪魔だな、と自然に思ってしまったのだ。
     まあ確かに一月後か一年後か十年後か五十年後か分からないような世界の終わりに走り続けるのに、手に入れたばかりの覚束ない感情はちょっとばかりではなく重い荷物だった。死後にようやく願えた唯一の望みでも?と自問する。もちろん。と即答した。手放すのは惜しかったが、ソレは手放せないほど育っていたようなものではなかったから。
     ブチブチと紐を引き千切るように、雑草を引っこ抜くように自分の感情とやらをゴミにしていく。天才ではなかったけど、まあそれくらいは出来るくらいには優秀な人間だったもので。


     さて、こうして神の機構は感情の残り滓がへばりついた人形となったのだった。





     ロマニ・アーキマンという名をもらった人形は、なんやかやと上手いことやっていた。
     人格は元のソロモンから威厳をいくらか差っ引いたものをベースに構築した。人間のふりは以前からやっていただけあって楽なものだった。かつて望んだような自由や感情は無かったけれど、捨てそこねた残滓のような感情でもロマニにはひどく新鮮で喜ばしいものだった。

     色んな人に嫌われて、色んな人に好かれて、それらをラベリングして対応していった。
     大概のサーヴァントには嫌われていたけど、マスターである藤丸立香とメインサーヴァントのマシュ・キリエライトとの関係にまでは影響が無いのでどうでもよかった。

     千里眼を持つ王が「無様なものだ」と告げてきたけれど、彼は協力してくれると分かっていたから特に気にしなかった。
     羊飼いの時代の己の前身の父とはろくな会話が無かった。協力的なサーヴァントだ。問題はなかった。今更愛を求める情緒は持ち合わせてなかった。
     友と呼んだ男に「本当は私のことも信頼なんてしてないんだろう?」と言われた。さすがに気まずさに目をそらせたけど、笑って許してくれた。泣きそうな笑顔で。
     夢魔に「キミってとんでもなくつまんなくて最高の男だよね」と言われた。お前に言われたくないと返した。お互い感情の無いのは承知の上だった。

     上滑りする言葉と、関係のない関係性。
     なるほど、影法師に願いなど贅沢にすぎる。ほんの少し可笑しくて、笑いを零した。





     締めくくりである。天に指輪を返してこの肉の器共々自分の不始末に引導を渡す。
     馴染みの少女を救えなかったことだけがチクリと胸が痛んだが、どうしても隙が必要だった。

     死は怖ろしくなかった。生きてもいないのだから当然である。でもまあ、悪くはなかった。ソロモンとして存在した生前より、よっぽど楽しい時間だった。うん。これはなかなか良い『人生』ってやつだったんじゃないだろうか。この気持ちは満足ってやつでは? 一人笑ってロマニは消滅した。





     碌でも無い。と誰がが呟いた。誰にも聞かれず消えてった。
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