目の前が霞む。
いつもより地面がずっと近い。体のどこもかしこも痛くて、もう人の形すら保てなかったからだ。
ニンジャジャンはヒーローだ。でも、彼はたった一人きりで、いつだってどこにだって駆けつけてくれるわけではなかった。
悪者だってたくさんいて、先ほど子どもを襲おうとしていたような輩はニンジャジャンが倒すまでもないような小悪党だ。憲兵隊がきちんと働いていれば逃した子どもが呼んできてくれたかもしれないが、それは間に合わず僕はこうして満身創痍で行き倒れるはめになっている。
別に何を恨んでもいない。ただ体じゅうが痛い。呼吸するだけでズキズキと響くから、どこか骨が折れているのかもしれない。ヒーローじゃない自分はちっとも強くなんかないから、大したことのない悪党にこうやってボロボロにされるのだ。
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