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    なかた

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    なかた

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    ショタルーク×ボイド筆下ろしエロの導入だけど、ルーク兄(演者は綴)×若ボイドの概念BLです

    #A3!

     ボイドは天才と呼ばれる錬金術師だ。
     ボイドの元で錬金術を学びたいと工房を訪ねてくる若者は後をたたなかった。けれど、希望者の中からボイドに弟子として選ばれた者は一人もいなかった。なぜなら、ボイドは「他人に何かを教える時間があるなら自分の研究のために使いたい」そう考えるタイプの天才だったからだ。
     そんなボイドだが、過去に一度だけ取り返しのつかない大失敗をしたことがある。仮説にミスがあり、工房の炉を大爆発させてしまったのだ。爆心地の一番近くにいたのは自ら実験の様子を見守っていたボイドだ。
     ボイドはとても美しい男だった。
     彼の整った顔立ちを見れば、誰もが容姿を生かして成功を収めることもできると認めただろう。しかし、爆発の衝撃で飛び散った破片は彼の左目を抉り、消えない傷を残した。それ以来、ボイドが人前で眼帯を外す事はなかった。
     マゼンダの瞳を奪われた事は客観的に見れば不幸だ。だが、あの時ボイドは命を失ってもおかしくない場所に立っていた。失うのが片目だけで済んだのは、不幸中の幸いとも言える。
     自分が生き延びる事ができるのはただ運が良かったからではない。ボイドがそう気づいたのは突き飛ばされるような衝撃を感じ、床に投げ出されてすぐのことだった。爆音を聞いた瞬間にボイドがいた場所には別の人間ってが倒れている。顎から滴る血を拭い、痛む身体を引きずりながらボイドはそちらに近づいた。
     既に息はない。肩から下は瓦礫の下に埋もれていたが、残った右目を凝らすと顔が確認できた。
    「はは、どこにでもいそうな顔だ」
     そう呟いた時、ボイドは頬を伝う温かい液体が血なのか涙なのか分からなかった。
     天才錬金術師・ボイドが自らの過失による爆発事故で失ったもの。それは正確に言うと己の左目とボイドを助けようと爆風の中に飛び込んだ友人だった。
    「俺は錬金術師のことはよくわからないけど、あんたのことはわかりたいと思う」
     ある日突然、ボイドの工房の扉を開けた男は、錬金術師志望ではなかった。最初こそ男の存在を煙たがっていたボイドだが、すぐに男は自分にとって有益な人間なのだと理解する。
     最初に宣言した通り男はボイドの研究の内容には興味を示さず、口を出すこともなく身の回りの世話を引き受けてくれたからだ。一つのことに夢中になると、ボイドは昔から衣食に意識がいかなくなる質だった。
     いつしかボイドの食事を作るのも、風呂に入れるのも、無理矢理寝かしつけるのも男の日課になった。工房にこもってひたすら実験を繰り返す世間知らずなボイドのために、男は外の世界の動きを伝えたこともある。ネタがなくなると男は申し訳なさそうに自作の物語を語ったが、ボイドは退屈な現実を知るより夢のある男の空想の世界に浸るほうが好きだった。
     彼には作家になる素質がある。そう感じていたボイドは男にいつもの作り話を作品としてまとめるよう勧めた。
     俺は顔も能力も平凡だから本なんか書いても売れないと笑う男のためにボイドは錬金術師でノートとペンを生み出す。それを受け取った男の満更でもなさそう表情は、ボイドの記憶に深く刻み込まれていた。
    「じゃあ、これに何か書いてみようかな」
     ボイドがその言葉を聞いた後、男は一本も作品を完成させることなくこの世からいなくなってしまったのだ。
     男はボイドにとって、友人と呼べる最初で最後の相手だった。その命を奪ってまで自らが生き延びてしまったことをひどく後悔した。
     何かに没頭していなければ気が狂ってしまいそうだ。少しでも気を紛らわせるためにボイドは男によく似たホムンクルスを生み出すことを考えた。
     研究をしている最中、使われなくなった調理場でボイドは一枚のメモを拾う。殴り書きのような文字で記されていたのは歳の離れた兄弟の会話のようだった。ボイドが書いたものではない。その時はふとボイドは男が自分には生き別れになった幼い弟がいると言っていたことを思い出した。
     男を生き返らせることはできないと分かっている。ならば彼と血を分けた弟を幸せにしてやろう。
     その覚悟を決めてから、ボイドが弟を見つけ出すまで、そう時間は掛からなかった。才能に恵まれた錬金術師は国家から手厚援助を受けることができるのだ。ボイドは財力を駆使して弟が親戚に預けられている事を突き止め、すぐに引き取り交渉を開始する。彼にあまり愛情を注いでいる様子のなかった親戚は、ボイドが大金をちらつかせると、あっさり弟を引き渡した。
     男の弟には親戚の家で呼ばれている名前があった。ボイドはそれを無視して彼にこう命令する。
    「お前は今日からルークだ。いいな」
     ルーク。それは男がメモに書き残した兄弟の弟の方の名前だった。
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