ムーサ 秋、國久さん(R).
ふわり、と香る煙草と青臭い香りで秋は目覚めた。
どうも情事の後にそのまま眠ってしまったらしい。
肌の至る所がガビガビする気がする。
隣には國久が自分と同じように裸で寝ていたのでかけっぱなしの眼鏡を外し、タライに水と手ぬぐいを用意し、手と自分の身体で手ぬぐいを温めてから彼の身体をぬぐい、浴衣を着せた。
ついでに自分の身体も簡単に清め、シャツを軽く羽織ったあとに國久に布団をかけ、もしゃもしゃの頭を撫でていると、ぐい、と手を引かれ布団に優しく押し倒された。
「帰るのですか?」
一言掠れた声が掛けられた。
「はい、こんな夜更けまでお邪魔してしまいましたから……着替えたら失礼します」
静かに答えると、何も言わず着ていたシャツを捲られ、小さな胸とはだけた太ももをまさぐられた。
再度襲い来る官能の波を煙草と少し饐えた香りのする頭髪を抱き抱えて堪えたが、國久の指と舌が肌の上を這う度に身体の中心から蜜が溢れ、嬌声が漏れそうになる。
指を噛んで堪えようとすると字書きの指は大事にしなさい、と噛んでいた指を外されてしまう。
普段の粗野な姿とはうらはらな國久に丁寧に身体をほぐされ、何度も押し寄せる波に唇を噛んで耐えていると秘部にくちり、と熱いものが宛てがわれ、ゆっくり体内に押し込まれる。
「あっ……んんっ」
ずるりと入ってきた熱と圧迫感と動かれるたびにゾクリとするような快感に堪えられず声が漏れた。
それを艶のある黒曜石のような瞳が優しく見つめる。
勘違いしてしまいそうな程優しいその視線から目を逸らす為に自分から唇を重ね、煙草の香りのする舌と自分の舌を絡め、唾液を啜る。
体位を変えながら何度も揺さぶられ、汗ばんだ肌から流れる汗と体内から出る粘着質な水音が部屋中に響く。
國久の雄は秋の体内の善い場所を的確に見つけ、容赦なくその場所を抉る。
受け入れている部分がその度にきゅきゅっと収縮し、体内にある楔に絡みつき、蜜が結合部から滴り落ちた。
我慢出来ずに小さな声が何度も何度も喉の奥から溢れては消えてゆく。
どれくらい揺さぶられ、まさぐられていただろうか?
國久の下半身の律動が早くなり秋の絶頂を迎えたそこにどろりとした熱が広がると、彼の薄い身体がどさりと崩れ落ちた。
荒い息を整えているとくしゃり、と頭を撫でられ、触れるだけの口付けの後に「気持ちよかったです。秋さんありがとう」と微笑まれる。
返事に困って視線を逸らしているといつの間にか寝息が聞こえ、それにホッとしながら秋は彼の浴衣の胸元を整える自分の指先を見つめ、思いを馳せた。
恋愛関係があるわけではない、ただ近くにいたから、拒まないから、拒まれ無いからこそある関係……最初から終わりがある関係だと分かっていても女性としての歓びを知れた事は嬉しい。この様に身体を求めらる事は嬉しい事であるとしってしまった。
好きになって欲しいとは思わない。
幸せになれるとも思っていない。
ちゃんとその辺は弁えていると思っている。
……だからもう少しだけ一緒にいたい。
声にならない願いをそう願いながら布団にそっと潜り込み、寝ている國久の胸元に頭を寄せて秋もゆっくり瞳を閉じた。