雪鶴の過去話妖刀、雪鶴(ゆきのつる)。
その刀が納められていたのは、遠い北国の山奥にある小さな神社(かむやしろ)。今から300年程前のこと。その地は、冬は重すぎる雪に覆われるため、小さな集落はあれど人の出入りも滅多に無かった。そんな土地柄、冬季には大雪被害も多かった為、人々は神社を建て神を祀った。豊作祈願を、除災招福を、この地を離れ奉仕する家族の安全を、祈った。
雪鶴は、ある時そんな小さな村の集落に立ち寄った旅人が、帰路を安全に帰れるようにと奉納した事からこの地に納められたという。都の名のある刀匠に打たれたらしいそれは、刀身は雪のように白く、拵えは氷のように澄み輝くうつくしい刀だった。雪鶴が奉納されてからは気候も例年より穏やかだった為、今年の冬は穏やかであれば良いと、人々は願っていた。
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