「うお、風やば!寒!」
練習を終えて体育館を出た途端、夜風に全員で身をすくめる。
秋の入り口は寒暖差が辛い。でもさすがに今日の寒さは急激すぎる。
「ホットドリンク持ってくればよかったな…」
「というか上着もない、寒い」
「走り込みして帰ればあったまるかも」
「いやそれができる元気あるのは佐倉だけだって」
わいわい声は上がるけど確かに走って帰る元気はない。
テスト期間前最後の練習だった今日は中々にハードモードだった。
かなりお腹も空いてるしこういう時にはもちろんあれだ。
「肉まん食べたい…」
つぶやけばヒロが勢いよくこちらを振り向いた。
「それだ!食ってあったまろう!」
「そういってアイスも前買ったよな‼金あんのか⁉」
「おっと石田、その言葉は野暮ってもんだぜ」
「何でだよ⁉」
「今日は木戸の誕生日だからな!主役がご所望なら出しましょうとも!」
「あっそうじゃん、木戸おめでとう」
部費の財布が取りだされたのと一緒におめでとうの嵐も巻き起こる。
本気で食べられると思ってなかったから戸惑いがすごい。
ちょっと体の内側から温まってきたかもなんて言葉は言わないことにした。