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    FKanimaguro

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    江澄と藍湛が仲悪いのが好き

    #忘羨
    WangXian

    藍忘機の閻魔帳 藍忘機はついぞ江澄の暴言に耐えかねて、糾弾するための証拠を集めているらしい、そんなまことしやかな噂が流れ始めたのは秋口深まる日のことだった。
     実際、江澄の言葉を書き付けている藍忘機の姿は色々な所で散見された。江澄の姿が見えなくなると、藍忘機はすっと手稿を取り出し何事かを書き付けているのだ。周りにいた子弟たちは、藍忘機が江澄の無礼な態度を書き留める、いわゆる閻魔帳をつけてるのではないかと顔を青ざめている。噂の出どころはそこだろう。
     一体、藍ニ公子は何をしているのだろうか、と。
     その答えはいつものように静室の中にあった。

     言葉が鋭く攻撃的な江澄だが、基本的に彼は寡黙で、身内以外と言葉を交わすことがまず少ない。
     夜狩の際にすれ違う江澄はまだ気まずいのか遠くから魏無羨の様子を見たらすぐ去ってしまうし、そのくせ魏無羨が不在の時にはどこにいると藍忘機に聞くようになった。まともに答える気が全くない藍忘機は所用があるでいつも誤魔化していたが、随分と甘い、寝て暮らしてる、だらしない、あちこち遊歴されてさぞお忙しいかとか、修練もせず怠けて酒ばかり食らい、働きもしない穀潰しだの聞くに耐えない言葉で不満を表し、藍家のことだから関係ないというとさらに青筋を立てて騒ぎ立てるので煩くて仕方がなかった。
     魏無羨はそれを聞くといとも容易く江澄の言い分を翻訳した。金凌から怪我したことを聞いたんだろうとか、夷陵老祖が市井に出た噂を耳にしたとか、お前とたくさん買い物してたのを見られたのかもとか、最近夜狩してないから気になったんだろうとか、彼の言葉からどうしてそれが導き出せるのか、全く藍忘機にはわからない。むしろ人の善意を抽出する天才だと藍忘機は思ってまた魏無羨のことを愛おしく思った。
     金凌だって多分ちゃんと受け取ってるよ、金凌も江澄の話をそのまま受け取ってないだろう? というから、藍忘機は金宗主はだいたい話を聞いてないというと、魏無羨はけらけらと声をあげて笑った。確かに、確かに! 言っても従わないなら聞いてないと同じだな!
     慣れたらわかる、あいつの口癖は足を折るだが一回も折ったことはないんだ。あいつの腕を折ったのはむしろ俺の方だな。馬鹿な奴。損しかしない。でも根はいいやつだ、魏無羨が江澄を藍忘機の代わりに罵ったりフォローするたびに、藍忘機の機嫌は地を這うようだった。弟だからと親愛を示す度に腹の奥で嫉妬が燃えていくのだが、何度教え込んでもどうやら道侶はいまだに存じ上げないようだ。
     そんな魏無羨に江澄と会ったというとどうだったと聞くから、いつも通り彼は罵詈雑言を繰り返して聞くに耐えなかったと答える。そのまま受け取ったらそうなるよなと魏無羨は苦笑いした。藍家の人間はいつまでもお行儀の悪い所業に慣れない。
     大きな瞳で愛おしげに藍忘機を見つめる魏無羨は、その口で江澄の言葉は新しい言語と考えろという。琴語が得意だろう、藍兄ちゃん? 姑蘇も訛りがあるように、江澄の言葉は翻訳するとこうなると、自分の口からは魏無羨を罵る言葉を一言たりとも言いたくない藍忘機が仕方なく書いた江澄の言葉を、わかるように行下に訳して書いてくれる。
     曰く、あっちへいけは恥ずかしいから見るな、暇を持て余してるは音沙汰がなくて心配、穀潰しは退屈してないか様子が気になる…
     あまりにも良い方にとらえすぎているのではと藍忘機は思うが、藍思追から又聞きする江澄は、言葉と裏腹にひどく心配性なのはわかっていた。実際魏無羨も訳文に心配や気掛かりという言葉を良く書いた。気に障るの間違いだと思うが、似たようなものだというので、藍忘機は言葉の意味を調べにわざわざ蔵書閣まで調べに行った。意味は違かった。
     江澄の発言の意図を知ることは今後の付き合いにも影響があると説得された藍忘機は、仕方なく江澄の言葉を耳に入れる姿勢を見せた。だがやはり意味を反転させろと言われてもさっぱりわからない、虚言としか思えない。
     そのため、藍忘機は江澄の発言を確かに書き留めて、魏無羨に翻訳してもらうことから始めた。要するに、閻魔帳とは逆で、学習意欲の表れだったのだ。
     そんな藍忘機の書き付けに、魏無羨は笑いながら翻訳してくれるのだった。むしろ江澄という男はとても恵まれているなんて、その書き付けの量を見ながら藍忘機は思った。
     
     その日は珍しく藍忘機と江澄が麓の茶屋で子弟たちを待つことになり、仁王立ちした偉そうな江澄が不満そうに話しかけてきた。
    「藍ニ公子、お前が閻魔帳をつけていると噂になっているが本当か」
     藍忘機は心底渋々という態度を隠さず、江澄に向き直っていった。
    「閻魔帳ではない」
    「……書き付けてるのは本当なんだな」
     ぎろりと江澄は藍忘機を睨みつけた。藍忘機は答えなかった。肯定だが頷きたくない時は黙ることを江澄は知っていて、苛立たしく腕を組んだ。
    「どういうことだ、一体何が目的だ。説明しろ」
     確かに気分は良くないだろう彼に説明する必要があった。藍忘機はため息をついた。
    「……語学に使用している」
    「語学? どういうことだ、俺の発言をどう使っているのかと聞いている。どうせ魏無羨の遊びか企みだろう」
     不本意だがその通りだった。結局、二人は江澄の言葉を元に愛の言葉を囁いたり、二人で交換日記のように書を作っていくことを楽しんでいた。要するに江澄をだしにしていたところはあった。「魏嬰が」
    「あなたの言葉を、新しい言語だというので」
    「魏無羨…!」
     ぴくりと紫電から光が走るが、その程度で臆する含光君ではない。
    「訳してもらった」
     懐から書き付けを取り出して、ちらりと中身を見せる。含光君の書き付けに赤字の魏無羨の大胆な字が踊る。この時は本当に腹立ってると思う、江澄にここまで言わせるとは、さすがは含光君。わかってきたな、事実こそ江澄を怒らせるんだ、なぁ一体何を言ったんだ?
     一眼見るだに腹立たしく、江澄はついに紫電を出さざるを得なかった。
    「渡せ!!」
    「断る」
    「ふざけるな!」
    「私的な書き付けだ、確かにその場で書きつけるのは無作法だった、今後は改める」
     全く反省はしていなかったが、噂になることは避けたかった。不仲説が流れると魏無羨が悲しむからだ。江澄については特に不都合はない。
    「俺をお前らのおもちゃにするんじゃない」
     江澄の言葉に一瞬だけ藍忘機は目を開いた。魏無羨の意図を良くわかるとむしろ感心した。そしてそう思ったことに腹が立った。
    「いいかあいつは昔から、名言集なる変な書を作っては人のことを弄り遊び倒していたんだ。それをこの俺によく、この俺を題材にするとは…! 魏無羨、あいつめ、次に会ったら足を折る!」
    「書き付けているのは私だ」
     そう言ってるくせに、足を折るどころか話しかけさえしないくせにと藍忘機は思った。しかしなんと言おうと、道侶を傷つけるという発言を看過するわけにはいかない。
    「ほう、足を折られたいのか?」
     特に挑発に乗ることはなかった。無視をするとさらに紫電の光が強く輝いた。
     その時、いつも間の悪いことで有名な金凌が仕事を終えて、叔父に褒めてもらおうと駆け込んできた。
    「叔父上、終わりまし…含光君? この書は…」
     机の上の書物を眺めても、江澄のときとは違い、藍忘機は金凌を咎めなかった。金凌は書を破り捨てたりはしないだろう。金凌の様子を丁寧に観察して怪我がないことを確かめていた江澄は、一足静止するのが遅れてしまった。
    「金凌、見るな」
     全く江澄のいい分を聞かない金凌は、笑いながらこの書は的確だと言った。誰が書いたんだ? というから、藍忘機は魏無羨だといってやった。
    「なるほど、さすが、叔父上のこと、よくわかって、る、な…」
     外叔父の地雷を踏んだことをようやく察した金凌は、ジリジリと後ろずさった。怒りのあまり震えだした江澄に、金凌は危機回避が鋭くその場を退いた。飛びのいた後、その椅子が代わりに犠牲になった。

    「あっちへ行け!!」

     なるほど、これは確か魏無羨のいうところによる、恥ずかしいから見るなの意味だと藍忘機は思った。
     彼の最も親しい人からのお墨付きの本になったことを魏無羨に教えてあげようと藍忘機は思い、きっと聞くだに大声をあげて笑い転げるだろう姿を思い浮かべて口元をわずかに緩めた。
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