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    coitealight

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    coitealight

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    痴漢に助けてもらったポストを見かけ、裏でジャンハン変換していたところtoma先生に絡んでいただき嬉しくなって調子に乗って書きましたw 🏨もエレベーター等々toma先生発案だお。えっ待って??ほぼtoma先生のネタでは!!すいません😭
    ハ→リ、ジャ→ミカ前提の現パロジャンハンです。唐突に終わりますw

    現パロジャンハン 腕の時計は午後21時を過ぎている。

     電車で通勤していると、こういう類いの人類に時折出会うんだよなと思う。ハンジ・ゾエは心から疲弊した。職場ではただでさえ新規のプロジェクトを任されて、疲弊しているのだ。
     さっきから隣の男が自分の胸元を覗き込んでいたような気がしたのは気のせいではなかった。夏なのだ。しかも猛暑なのだ。私が薄着なのは仕方ないだろ。まったくもう、いい加減にしてくれ。
     この状況を脱するためにハンジは声にも多少出してみた。「ねぇ」「ちょっと」「あの、聞いてます?」だとか。だが隣の、ちょっと臭う、齢のほどは六十手前くらいだろうか、言葉は悪いがこのジジイは寝たふりをしながら肘を、勘違いでなければハンジの胸のあたりに当ててくる。その力はどこから湧いてくるのか不思議なほど力強かった。言いたいことを我慢できるタイプではないハンジも多少躊躇うほどに。さて、どうしたものか。

     そのとき髭を生やした背の高い、だがパッと見た感じは若者の男が、ハンジの逆隣に座った。隣は今、停車駅で客が降りて席が空いたところだった。
     肘の攻防戦を続けるハンジはしばらくそれに気づかなかった。隣から小さく「あの、」と言われてやっと気づいた。
     隣の若者は携帯のメモ画面をハンジに見せた。
    『席、変わってください。俺がそっち座ります』

     女神か? とハンジは思って若者の顔を見上げた。いや、女神はおかしい。救世主? いやどちらかというと馬づr―――何でもない、気のせいだ。ハンジは小さく頭を振った。立ち上がった若者は前髪をオールバックにし襟足の長い髪型をしていた。ハンジにはそれがオシャレなのかどうかはわからない。でもきっと若者の中ではイケてる髪型なのだろう。薄いグレーのスーツがキマっている。
     彼と席を変わった瞬間、オヤジの舌打ちが聞こえた。

     ハンジはそうして変態オヤジからの危機を脱した。唐突に現れた王子によって。王子? 多分そんな感じ。





     助けてくれた若者はハンジの家の最寄り駅の一駅手前で降りて行った。ハンジはそれを追いかけた。礼を言わなければと思ったのだ。一駅ぐらいタクシーでも、何なら歩いてもいい。
    「あの!」
     若者は改札の手前で振り向いた。
    「あの、えっと、ありがとうございました。すっごく助かったよ。どうしてもお礼を言いたくて」
    「いえ、全然。アイツ、クソみたいにしつこかったし」
    「本当に助かったんだ。ありがとう」
     若者は照れを隠したように笑った。それがやたら可愛かったので、ついハンジは言わずにいられなかった。
    「よければ何かお礼させてくれないかな。ご飯は?もう食べた?」
    「……これってナンパすか?」
     若者が眉を潜めた。
    「えっ、あっ、そ、そーなの? かな? アハハハ」
     ハンジがひきつった笑顔で返す。そんなこと思いもしなかったからだ。これではもしや痴漢よりも自分の方が不審者ではと思う。
     でも若者は顔の表情を緩めて言った。
    「変な人を助けちゃいましたね」
     若者が笑った。多分ナンパじゃないとわかったのだ。一緒に笑いながら、どっちかというと王子相手じゃなく弟にご飯を食べさせたい姉的気持ちだったんだなあとハンジは思い至ったが、それについては特に言わないでおいた。





    @@@






    「うああああ頭が痛いいいいい」
     ハンジ・ゾエはベッドの上で呻きながらのっそりと起き上がった。喉がひりついている。一刻も早く水を飲みたい。しかし何だか見覚えのない風景が目の前に広がる。装飾の激しい部屋。やたらゆったりと広いふわふわのベッド。横たわるよくわからない裸の男。
     は、おとこ?????

     ハンジは考えることをやめ、サイドテーブルに置いていたらしい眼鏡を掛け、とりあえず立ち上がった。ミネラルウォーターの蓋を開け、ぐびぐびと飲む。そうすると喉の痛みが随分マシになった。
     それから自分の装いを確認する。昨夜の飲みの記憶を辿る。
     助けてくれた若者の名前はジャン・キルシュタイン。初めて会ったとは思えないほどやたら話が合って楽しく飲んだ。焼き鳥をしこたま食べ、ハイボールを何杯も……何杯だろう……を飲んだ。いや、平日にしてはありえないほどお互い飲んだくれた。そしてこのザマだ。ラブホなう。
     ハンジは自分の身に付けていたキャミソールとパンツを撫でてみた。大丈夫だ、これはやっちゃいない、はずだ。確信をもてたハンジは言った。
    「あのー」

    「うう……」
     男も呻き声を上げる。ボサボサになった髪をがしがし掻きあげ、目を丸くしてハンジを見、「うわあっ」と叫ぶ。
    「えっあっマジで、嘘だろ、やっちまっ」
    「大丈夫だ、ジャン。私たちはやっていない。昨夜の我々は友情を育んだのみで終わったようだ。ただ宿泊場所を間違えただけ。おそらくだけど」
     ジャンは自分の履いているボクサーパンツを確認して、そして項垂れた。
    「そうすか……。よかったっす……」
    「とりあえず我々が今なすべきことは、シャワーを浴びて身だしなみを整え、何事もなかったように出社することだ。ジャン、やれるかい?」
    「やれます……」
     ジャンは項垂れたまま答えた。
    「いい子だ」
    「はあ」
    「私が先にシャワーを浴びてもいいかな?」
    「何でもいいです……」
    「ありがとう」
     昨日助けた女がやたら男前にシャワー室へ向かう朝チュン姿(やってはいないが)を頭を上げぼんやりとジャンは見つめた。自分は一体会ったばかりの女と何をやっているんだろうかと思いつつ。やりもせず。





    @@@




     二人の職場の方面は同方向らしい。お互い胃もたれが激しいがコーヒーは飲みたいと意見が一致したため、カフェに入る。店内は生き返るように涼しい。
     ジャンが、二人分のカップをテーブルに置いた。ハンジは砂糖抜きのカフェラテ。ジャンはブラック。朝チュンコーヒーだ。やってはいないけども。
     窓際の席に座り、熱いコーヒーを二人ですする。外は暑そうだ。

    「大分頭痛がマシになってきた」
    「俺もです」
    「ジャンっていくつなのかな」
    「26です」
    「わかっ。ジャンは女性に年齢を聞くのは失礼とかわかってそうなタイプだから自分から言うけどさ、ちなみに私は34」
    「それはどうも……」
    「私と友達になれそう?」
    「うーん、昨日やれなかったからな。なれそうです、友達」
     ハンジはゲラゲラ笑った。
    「なろう、友達。手始めにLINE交換だ。これならメモ帳機能を使わなくてももっと手っ取り早く君に助けてもらえる」
    「そんなしょっちゅう助けることあります? まあいいか。お互い叶わぬ恋をしてますしね。なれます、友達」
     ジャンはスマホでQRコードをハンジに差し出した。
    「えっ何のこと」
    「言ってたじゃないですか。何で気づかないんだよリヴァイ~~とか。飲みながら散々。リヴァイが誰か知らないっすけど」
    「そ、そ~だっけ……? アハ…アハハ……」
     挙動不審気味のハンジは少しぬるくなったカフェラテを一気に胃に流し込んだ。そしてジャンのQRコードを読み取り、LINEにスタンプを送った。





    「俺、ここなんで」
     目の前には高層ビル。ここは国内でも有名な貿易会社株式会社パラディ。「俺、中途で入ったんすよ。まだ一年も経ってない」
    「……うっそ……。私もここの社員だよ」
    「嘘」
    「ほんと」
    「そんなことってあります?」
    「あるんだねぇ……。こんな少女漫画的展開。いやまぁ私たちはやってはいないんだけど」
    「そうです。やってません」
     無罪を主張する罪人のように、二人は今朝からやたらと同じ台詞を復唱する。そのまま口をぽかんと開け、二人は見慣れた職場を見上げた。そしてハッと正気に戻る。ちゃんと家から出勤したような顔を繕いながら自動ドアを通る。
     ジャンもハンジも何事もなかったようにその日もその次の週もまたその次の週も、仕事に精を出した。


     ハンジとジャンはそれからも時折、一緒に飲みに行った。月に一回くらい。ハンジが二回奢ってジャンが一回奢るみたいなペースだった。特に関係のない部署にお互い所属していたため、社内ではたまにしかすれ違わない。偶然すれ違った日の週末の金曜日の朝にLINEで飲みに行かないかと誘うのがパターンだ。そういや飲み友がいたと思い出したように気楽に。
     そう、彼らはどこか似た者同士で一緒にいて気楽だった。昔からの知り合いのように、取り繕わず話すことができた。お互いの好きぴのこととか。二人とも前進しない恋の悩みを抱えていたのだ。





    @@@





     冬がやって来た。ハンジの抱えていたプロジェクトは無事に成功し、春の人事異動では異例の早さで管理職になるのではと噂されていた。


     明日から年末年始の休みに入ると言うのに、ハンジは部下の失敗をカバーして残業していた。部下は彼氏と会う約束をしていたのだ。
     青春。いや社会人もまだ青春なのだろうか。いや青春だろ。何にせよ眩しい。そんなの応援しかできないじゃないか、とハンジは自問自答の末思う。特に何の予定もない仕事人間の私がやればいいだけだ。てかもはや仕事と結婚すればいんじゃね、私が!? とハンジは自虐的に思いながらエレベーターに乗り込んだ。



    「何すか、仕事と結婚って」
    「うわあああっ」
     ハンジが腰を抜かしそうになった。背後にはジャンがいた。今から帰るのだろう、スーツの上にちゃんとコートを着て、仕事用のキレイ目のリュックを背負って立っている。多分ジャンは服のブランドとかにうるさそうだ。客観的に見てその姿は結構悪くない、というか様になっている。そして霊ではなさそうだ。

    「い、いつからいたの」
    「ずっと乗ってましたけど」
    「そ、そう……。あの、私、何か言って……?」
    「仕事と結婚すればいんじゃねって言ってましたね。末期ですね」
    「……確かに末期かもしれない。口に出したつもりはないのに口に出てるなんて」
    「ヤバいっすね」
    「そうなんだよ、ヤバいよ」
     ハンジは溜め息をついた。
     その時エレベーターがガタガタッと振動した。電気も点滅してどうやら只事ではない。
    「何っっっ!?」
    「………。あー、マジか。故障じゃねーの、これ。最悪。オーイ」
     ジャンが非常時ボタンを押しながら、外部に話しかける。返答はない。
     エレベーターに閉じ込められた二人。
     どこまでも少女漫画的なのを否めない展開に、二人は困惑気味に顔を見合わせた。




    @@@




    「ハンジさん、すげーっすね。何か異例の早さで出世するとかしないとか」
    「……どうも」
     少しでも場の空気を和らげるために話しているのに、反応に困っている上司を見てジャンは首を傾げた。ひょっとして照れているのだろうか。

    「管理会社、来るまで一時間くらいかかるみたいです。大丈夫ですか」
     ジャンは結局同期に連絡しまくり、そのつてでエレベーターの管理会社と繋がった。何のための非常ボタンなのだろう。年明けに上に報告せねばとジャンは思う。
    「トイレは行ったばかりだから大丈夫」
    「はあ」
     照れているのもあるだろうが、いつものように勢いがないハンジにジャンは心配になってきた。

    「あの、何で元気ないんですか」
    「わからない。大きなプロジェクトが終わって、評価されて私はきっと偉くなる。でも結局何も得ちゃいないって気分」
    「あー、そうすか……」
     女は大体気分が乱高下するものとジャンは何となく知っているが、この上司に至っては意外だった。いつも明るくて前だけを見て進む、そういうタイプの人間だと思っていたから。

    「寒くないですか」
     ジャンは着ていたコートをハンジに掛けた。
    「ううう染みる……温もりが尊すぎて死んじゃうかもしれない……」
    「何言ってるんですか、一生ここで過ごすんじゃないんですから」
     ハンジは鼻をすすっている。まさか泣いているんだろうかいや泣いてねーだろ、とジャンはハンジの顔をちらりと見て思い直す。

    「私、多分、寂しいんだよ。寂しいってことに気づいてしまった2024年年末。さあここからどうやって立て直す」
    「好きな奴にも気付いてもらえねーですしね」
     ジャンは煽る。するとハンジもノッてきた。
    「そう!そこなんだよ!」
    「俺もそうですよ。てかハンジさんのほうが俺よりかなりマシな状況だと思いますよ。俺は誘いました。でも絶対的好きぴがいるらしいです。マジでクソ。とりつく島もねーし。玉砕かも」
    「ちょっと飲みに行かない間にそんなことになってたのか……」
    「そうですよ。でもハンジさんも伝えた方がいいと思いますよ、気持ち」
    「えええええ!? 相手とはたまに話すだけなんだよ!? いいの?」
     ハンジは狼狽えながら思案している。その姿を見てジャンは何故かこの女の前でいい子でいることをやめたくなった。



    「それとも」
    「え」
    「俺と慰め合ってくれます?」
     ハンジが答える前に、ジャンがハンジにキスをした。軽く唇と唇が触れる。
     閉じ込められているうちに冷たくなってしまったお互いの唇はすぐに離れて、「あー、悪ィ……」とジャンは言った。
     ハンジはパニックになりながら返す。
    「き、君のことは好きだよ! 心からうん、好きだと思う! でもさあの、何というかあのそのそう、弟! 弟みたいなもんだと思っ」
    「……うるっせーな」

     ジャンがハンジの後頭部を掴んだ。多分それは逃げられないように。ジャンは今度は強く口付ける。
     こんなの弟なんかじゃない。ハンジには訳がわからなかった。訳がわからないまま、口づけに応じながら、どこか冷静に考える。ああ、ジャンも傷ついているのだと。
     傷ついた男と寂しい女が同じ空間にいたらどうなるか。こうなったって仕方ないじゃないか。そうやって無理やり理論づける。
     ハンジもジャンの首筋にそっと手を回した。深くなるキスに、荒くなる息づかい。どちらのものかわからなくなるくらい混ざる唾液。冷たかった唇は互いの熱を交換してどんどん熱くなる。
     自分達は今すぐここではないどこかに移動するべきなのだ。出会ったあの日、助けてもらったあの日にしなかったことを今すべきなのだ。
     誰かとキスするなどいつぶりだろうかとハンジは思った。あんなに寒かったのに、身体が溶けるように熱い。










     時間にして一分もするかしないうちにエレベーターがガタリと鳴った。そしてすぐにドアが開く。懐中電灯で明かりを当てられたハンジとジャンはぽかんと明かりの先を見た。
    「何やってんだ、お前ら」

    「りばっ」
    「みかっ」
     ジャンとハンジは鬨の声を上げて、顔を見合わせた。それから管理会社の職員の名札を見た。『リヴァイ・アッカーマン』『ミカサ・アッカーマン』とあった。これはジャンの、ハンジさんの好きな奴の名前じゃないか。好きな相手は社内にいるって飲みながら言ってたけどそういうことかよ!!とお互い思う。道理で社内でなかなか見つからないはずだ。
     ていうか、管理会社は家族経営の会社……? いやそんなことはどうでもいい。

    「おじさん、この人たちはこの会社の社員さん。そんな言葉遣いをするべきじゃない」
     管理会社の女が言った。ミカサだ。
    「そうだな」
     管理会社の男が言った。リヴァイだ。

    「私たちは何も見てない。……ので、大丈夫。来るのが遅くなり申し訳ないと思ってる」
     いや言葉遣いはどっちもどっちだろ、てかバッチリ見ただろ、と唾液にまみれた間抜けな顔で、ジャンもハンジも同じことを思った。




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    coitealight

    MAIKING先日からちまちま書いてるジャンハン小説です。三回目です。書いたらすぐ流さないとつらい発作?が出ているため流していいですか😭短いんですけどすみません😭大して見直してないためおかしい箇所あると思いますが見逃してください🙇
    現実パロジャンハン③ 鼻を擦ったあとはジャンの唇がハンジの首筋にキスを落とし始めた。ハンジは天井を凝視しながらどうすることもできずにいた。抗えない。たすけてくれ。拒絶するなら両手でジャンを押せばいいのだ。でもあぁそうなんだよできない。ハンジの腕はわなわなしている。ジャンの温もりを身体が受け入れたがっているのがわかる。なぜなら寂しい女なので。
     眼鏡をそっと外される。キスの場所が移動してきて、首筋から今度は目尻の辺りだ。ちゅ、ちゅ、といちいちわざとらしく音をたてているなコイツはけしからんとハンジは思った。

    「拒否しないんすね」
     ジャンがあざとく耳元で囁いた。見えてないけど多分ニヤリとした顔で。あざとすぎてしぬマジでたすけてくれお前は弟的存在のはずてか私の好きなのはリヴァイのはずと一気にハンジはよくわからない神様のようなものに気持ちを吐露し、祈った。特に助けはこなかった。ジャンが優しい手つきでハンジの前髪を上げ、おでこにキスしたあと、ハンジを見つめ言った。
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    coitealight

    MOURNING痴漢に助けてもらったポストを見かけ、裏でジャンハン変換していたところtoma先生に絡んでいただき嬉しくなって調子に乗って書きましたw 🏨もエレベーター等々toma先生発案だお。えっ待って??ほぼtoma先生のネタでは!!すいません😭
    ハ→リ、ジャ→ミカ前提の現パロジャンハンです。唐突に終わりますw
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     電車で通勤していると、こういう類いの人類に時折出会うんだよなと思う。ハンジ・ゾエは心から疲弊した。職場ではただでさえ新規のプロジェクトを任されて、疲弊しているのだ。
     さっきから隣の男が自分の胸元を覗き込んでいたような気がしたのは気のせいではなかった。夏なのだ。しかも猛暑なのだ。私が薄着なのは仕方ないだろ。まったくもう、いい加減にしてくれ。
     この状況を脱するためにハンジは声にも多少出してみた。「ねぇ」「ちょっと」「あの、聞いてます?」だとか。だが隣の、ちょっと臭う、齢のほどは六十手前くらいだろうか、言葉は悪いがこのジジイは寝たふりをしながら肘を、勘違いでなければハンジの胸のあたりに当ててくる。その力はどこから湧いてくるのか不思議なほど力強かった。言いたいことを我慢できるタイプではないハンジも多少躊躇うほどに。さて、どうしたものか。
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