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    tsuka_mori

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    tsuka_mori

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    ラジオの牛丼→BoPの独歩歌詞→え、これって銃独じゃん…
    非常に安直な流れなのは自負してるけど、これが私の脳みそなんで…安直なんで…

    #銃独
    cannonStreet

    深夜の発見時刻が22時を過ぎた頃から、早く帰ることを諦めた。終電までに帰ればもうそれでいい。

    いつも通り外回りを終え会社へ戻った後、自分の報告書や上司や同僚から押し付けられた仕事を片付けていた独歩は、ディスプレイの表示時刻を見てため息交じりにそう思った。どうせ集中が切れたこの状態で仕事を続けたところで、すぐに終わる量でも無い。ちょうど先程まで聞いていたラジオも話題のキリもついたところだ。それならばと続きの作業を諦め、休憩がてらコンビニに向かうことにした独歩は、耳につけていたイヤホンを外し財布とスマホを手に所属部署のフロアを離れた。
    流石にこの時間帯だと廊下で誰ともすれ違うことなく、昼間は多くの人が乗り箱詰めになっているエレベーターも独占状態で乗ることが出来る。普段からこのぐらい人が居なければ、もう少しは気楽に乗れるのになぁ。と思いながら、奇しくも顔見知りになった警備員に会釈しつつ裏口から外へ出ると、昼間の暑さは何処かへ消え去り、代わりに背広越しに冷えた風が衣服の隙間から入ってくるのを感じる。

    「さむっ…もう秋か…」

    夏が終わりを告げ秋に変わりつつあることを肌で感じながら、秋と言えば運動、食欲、芸術…と、まるで連想ゲームの様にひとり思いを馳せつつ数百メートル先のコンビニを目指して歩を進める。常に時間に追われているサラリーマン達が集うこのオフィス街では早い、安い、旨い、の三拍子が揃う定食屋や牛丼屋などが繁盛するのだろう。どこも24時間営業で展開するお店が多く、客足を集めようとどの店も様々な工夫を凝らし、期間限定秋メニューを謳い文句に掲げあちらこちらで誘惑の罠を張り巡らせている。
    それらの店の外観を眺めながら、ふと以前にブランド肉の懸賞を送ったことを思い出した。どうせ自分ごときが送ったものだ。それが当たることなどまず無いだろうが、もし、もし何かの手違いで当たった際には一二三と寂雷先生とで鍋を囲むのも悪くないな、と少し想像しただけであっという間に独歩の脳内では肉の味が支配し、腹の虫が悲鳴に近い鳴き声を上げだした。

    誘惑という名の魔の手がいよいよ魅力的に映りだした頃、ようやく目的のコンビニにたどり着いた独歩であったが、以前まで空きテナントだったお隣にいつの間にか牛丼屋が新しく入っており、思わずそちらに視線が釘付けになる。まだ開店して日が浅いのだろうか、店の前には開店を祝う花がせせこましく並んでおり、ただえさえ狭い入り口が余計狭くなっているように感じた。
    まだ深夜とも言えない時間帯だからだろうか、店内に入っている客の人数はまばらで、今の独歩にはもう誘惑だらけの窓に貼られているメニューを視界に入れつつ店内を眺めていると、ちょうど窓越しに店員と目が合ってしまった。流石に目が合ったら入らざるを得ない、なんとも申し訳ない気持ちになり、入るつもりなんて無かったのになぁ。と思いつつ当初の目的地を尻目に入り口へとそのまま足を進めた。

    自動ドアの扉が開く前から威勢のいい歓迎の声が聞こえる。中はカウンター席がメインで、お世辞にも広いとは言えない間取りである。カウンター前に立ち客と対応している定員はバイト学生だろうか、気持ちのいい元気な笑顔を浮かべながら券売機での購入を勧められた。
    俺も、新社会人の頃はあんなにはつらつとしていただろうか。今となっては思い出せない若かりし頃の自分を想像しながら券売機の前に立ち、何を頼もうか全く考えていない事に気付いた。外で見た売り出しメニューもそそられるものがあるが、券売機を眺めながら独歩は先程まで残業中に聞いていた恋人のラジオを思い出していた。

    『牛丼を食べるかどうか、ですか。流石、面白い事を訊いてきますね。』
    『勿論、食べるならつゆだくです。そしてトッピングは、そうですねぇ…私はチーズか大根おろしをおすすめします』

    ある日いつも通り唐突に中王区から通達が届き、その内容というのが各ディビジョンから毎週一人ずつ選ばれ、リスナーからのお便りをもとにパーソナリティを務めるという期間限定のラジオ番組が組まれた、というものであった。独歩も銃兎の放送より前に務めており、自分なんかが答えたところで何がいいのだろうかと思った記憶があった。
    ここ最近はお互い業務に追われており中々時間が作れず、会うことは勿論連絡すらままならない日が続いていた。
    流石にこの歳で業務に支障をきたしてまで時間を作ろうとは思わないが、全く平気かと言われると素直に肯定は出来ないところがあり、要するに若干の寂しさが募っていた。今まで業務で紛らわしていた独歩であったが、最近はそれすら怪しいところがあり、残業中なら多少ながらになってもいいだろうと聞いていたのだった。

    どうせ休憩するなら区切りのいいところまで、と聞いていた最後のお便りが偶然牛丼の話をしているところだった。思い返せば普段食事に行くときは、大抵居酒屋か行き慣れたバー、はたまたコンビニで酒だけ買って立ち話したりそのまま銃兎の家へお邪魔したりと、これまでこういうチェーン店に足を運んだ事がなかった。
    あの人の口からつゆだくやらトッピングやら、そもそも牛丼を食べるなどと想像しがたい単語を淡々と並べられた時は意外だな、と、その箇所ばかり繰り返し再生するほどである。集中力が仕事からラジオの方へと傾きだした頃、その行為が段々おかしく感じられ、いったん休憩するに至った次第であった。

    そこまで思い返していたところで、自分の後ろにはいつの間にか数人列が並びだしていることに気付いた独歩は思わず悲鳴を上げ慌てて券を購入し、並んでいる人たち全員に謝り倒しながら勢いよくカウンター席に座り、店員に券を投げつけんばかりに渡した。
    余りにも慌てていた為にお釣りも受け取っておらず、すぐ後ろに並んでいた同じサラリーマンから手渡され恥ずかしさで卒倒しそうになりつつも、お礼と謝罪を交互に述べる独歩であった。

    気持ちを落ち着かせるために水を一気に飲み干し、スマホを手にする。通知を見てみると、いつも通り一二三から連絡が入っていた。一二三の場合は連絡というか、ほぼこちらの返事を待つことなく様々な話題が放り込まれるため、報告を受けている感覚に近いものがある。
    一通り目を通したところで、そのすぐ下に銃兎との履歴を見つけた。最後にいつ連絡したのか日付を見ると、もう少しでひと月経ちそうな程である。普段独歩自身から連絡することはほぼ少なく、大体は銃兎から連絡をもらいそれに返事を返すだけで終わっていた。流石に毎度お手間ばかり掛けさせて申し訳ない、と気にしていた独歩だがなにか他愛もない話題を作れるほどの日々を過ごすことも出来ず、結果ずるずると空白の期間が長引く一方であった。

    「お客様、お待たせしました!牛丼つゆだく、チーズトッピングです!」

    カウンター越しに受け取り湯気が立ち昇るどんぶりを眺めながら、確かに、このトッピングは試したこと無いな。と思うのと同時に、恋人の好みを新しく知ることができ、心くすぐられる何とも言えない感覚に襲われていた。
    普段だとすぐ箸に手を伸ばすところだが、スマホに手を伸ばした。折角の機会だ、自分から手始めに写真を送ってみようと、思わず笑みが零れ落ちた。
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    tsuka_mori

    DONEラジオの牛丼→BoPの独歩歌詞→え、これって銃独じゃん…
    非常に安直な流れなのは自負してるけど、これが私の脳みそなんで…安直なんで…
    深夜の発見時刻が22時を過ぎた頃から、早く帰ることを諦めた。終電までに帰ればもうそれでいい。

    いつも通り外回りを終え会社へ戻った後、自分の報告書や上司や同僚から押し付けられた仕事を片付けていた独歩は、ディスプレイの表示時刻を見てため息交じりにそう思った。どうせ集中が切れたこの状態で仕事を続けたところで、すぐに終わる量でも無い。ちょうど先程まで聞いていたラジオも話題のキリもついたところだ。それならばと続きの作業を諦め、休憩がてらコンビニに向かうことにした独歩は、耳につけていたイヤホンを外し財布とスマホを手に所属部署のフロアを離れた。
    流石にこの時間帯だと廊下で誰ともすれ違うことなく、昼間は多くの人が乗り箱詰めになっているエレベーターも独占状態で乗ることが出来る。普段からこのぐらい人が居なければ、もう少しは気楽に乗れるのになぁ。と思いながら、奇しくも顔見知りになった警備員に会釈しつつ裏口から外へ出ると、昼間の暑さは何処かへ消え去り、代わりに背広越しに冷えた風が衣服の隙間から入ってくるのを感じる。
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