双子の悪ふざけ「―――今年も皆で今日の夜を過ごせたことを嬉しく思います。仕事納めまであと四日、どうぞご安全に願います」
「ラーサー社長が取締役になられて、早二年か…。恒例のパーティーも先代とはまた異なる趣で、これはこれで良いものだな」
「会の中にプレゼント交換があるとは、新しい試みもまた童心に帰れて良いものだ。ミス・ドレイスのプレゼントは誰に渡ったのかな」
「その手に抱えられている箱がまさに私のセレクトだ、ミスター・ガブラス」
「本当か。それは驚いた」
「恐らくお気に召して貰えると思う。誰の手に渡っても活用して貰えそうな品を選んだつもりだが、やはり貴方がたをイメージして選ぶのが一番スムーズだったな」
「…ほう。貴方がた…か」
「どちらを使うか、弟君と相談して決めると良い」
「………。いつから気付かれていたのだろう」
「本気で訊いているの?貴方がた兄弟は確かに瓜二つだが、近しい者からすれば一目瞭然だよ。私もこう見えて、弟君とはそれなりに付き合いは長いから」
「はは。貴女の名前は弟からよく伺っている。いつも弟がお世話に…」
「こちらこそ。中々楽しいサプライズだったよ」
▽
「いつまで臍を曲げているんだ。食事が冷めるぞ」
「………」
「俺に言わせれば、お前たちが本気でバレないと思って企てたこと自体が愉快で仕方ないのだが。今頃バッシュもお前の同僚に見破られているだろうさ」
「前は騙せた」
「それは本当に、”前”の話だろう。しかも相手はバッシュとまだ付き合いの浅い新兵だ。状況も相まって冷静に見分けられなかったのも無理はない」
「ふん。直ぐに頭に血が昇るタイプかと思ったが、案外冷静だな。こんな大切な夜に恋人が替え玉を寄越すなど言語道断だろうが」
「さっきも言ったが、愉快だと思うばかりさ。良い機会だ、俺がバッシュに相応しい男かどうかを見極めて行くと良い」