Knights of Night② 今、何が起きた?
僕から吸血鬼の気配がする。
そう言われて、直前の先輩の態度と質問からある程度は予測していたとはいえどうしたってびっくりしつつ、そしてまたおかしな輩に知らないうちに何かされたのかとうんざりしていたんだ、僕は。
そんな僕自身の口から直後に出たのは、
「素晴らしい! 合格じゃ!」
という、訳の変わらない言葉。
僕の意思じゃない、なのにそれは間違いなく僕の声。
直後、視界と思考はそのままに、他の全てが勝手に動き始めた。
「ダンピールとは素晴らしいものじゃのう、意識の欠片でしかない朕の気配をも感ずるとは。 それとも、ぬしが格別に優れておるのかの?」
相変わらず『僕』は勝手に喋ってるし、緩く握った片手を顎に当てて首を傾げるなんて気取った仕草、しようともしていないのに当たり前のようにしてる。
だけどさっきの合格云々を聞いた途端、身構えて腰の刀に手をかけて、臨戦体制のままこっちを油断なく睨んでる先輩にかなり安心した。もしものときはこの人が何とかしてくれるだろうと。
なのに、
「じゃがぬしとの邂逅は僥倖じゃ。 ぬしならば朕の望みを叶えられよう」
「……望み?」
ますます眉を顰めた先輩が、僕、の中にいる何かと会話をし始めた。
それが、無性に腹立たしかった。
「そうじゃ。 ……ダンピールよ、主は朕の──」
だから、僕は叫んだ。
「勝手に話を進めるなぁー!」
ダメ元とすら思ってなかった、ただ怒りに任せての僕の──僕自身の大声は、現実に声となって暗い路地に響いた。