breath「……はあぁぁぁー〜……」
盛大なため息に、俺は背筋が凍りついた。
今は、いわゆる事の最中。
座った上に乗せて繋がった身体。
揺すりながらでも、口付けるのも抱きしめるのも容易なこの体勢は気に入っていて、今も例外なく首に腕を回してもたれてきたサギョウの熱に溺れて、いた、のに──
俺の肩に顎を乗せたサギョウの、深い深いため息で、体温が下がった、気がする。
俺のやり方が悪いのか?
この体勢に不満があるのか?
そもそも行為に乗り気ではなかったのか?
昂ぶりからとは違う冷や汗が湧くのを自覚しながら思案する間も、途切れていなかった、長い、ため息、が──
「……っ、き、もち……ぃいー〜……」
と、続いて──
一瞬の思考停止ののちに、理解したのは、頭よりも身体の方が、早かった。
「……っぅあっ ……な、っんでまた、でっかくしてんですかぁ〜……?」
……自慢か? と続いたサギョウの低い声に慌てて我に帰った。
「いや違っ……! 違うんだその……っ!」
「裂けたらどうすんですか、しばらくできなくなるでしょ」
頭を起こしたサギョウの恨めしそうな半眼は間近。
「んん〜……?」
黙り込んでしまった俺は、そんなにも慌てふためいた顔をしていたのだろうか。
……していたのだろうな。サギョウが、じっとりとさせた瞼をすぐにくるりと開いて、それから眉尻と目尻を下げてから、
「どうか、しました……?」
と、遠慮がちに触れるだけの口付けをくれたから。
「う……いや、その……」
勘違いだった。あれはため息ではなく単なる深い一呼吸に過ぎず、サギョウは、視線も態度も、全てで俺を、案じてくれていて、今も心配そうに揺らぐ瞳に俺だけを映している。
全てを話せばサギョウは笑い飛ばしてくれるだろう、軽やかに、清々しく。
そう、自然に確信できて、俺は溢れてしまう笑みを隠さず抑えず、深く口付けてから、話し始めた。
「いや実はな──っふふ……──」
自嘲を交えつつの打ちあけに、サギョウは思った通り、
「……っふは、なぁんだ、それでかぁ」
と、軽やかに清々しく笑ってから、
しっかりと口付けて、力一杯抱きしめてくれた。