with you 色付いた銀杏の葉が散り始めた。
場所によっては初霜や初雪もあったようだ。
あんなに眩しかった真夏の太陽も、今は薄明るいだけ。
季節を問わず帰路はだいたい明け方、一日の中で最も気温の低い時間帯。
食料を買う為に寄った二十四時間開いているスーパーマーケットは、人もまばらで冷蔵冷凍食品の扱いも当然あるから更に肌寒い。
開けていた上着の前を閉めながら、特にこれといった考えもなく、思うまま、籠に入れていったのは葉野菜、根菜、きのこ、肉、などなど。
然程大きくない買い物袋いっぱいの食材を下げて、少し歩いて着いた寮の前。
「あ」
「あ」
向こう側──実家の方向だ──からやってきた先輩と目が合った。
お互いが次に視線を移したのはそれぞれが持っているもの。
僕が持っている袋、の、口からは白菜が見えているはず。それも含めて入っているのは鍋の材料。
一方、先輩が小脇に抱えている箱には、土鍋、と書いてある。
「え、買ってきたんですか?」
「うん……今日寒いから、お前と鍋がしたくて」
「気、合いますね」
歩み寄って袋を広げた。
「僕も同じ考えだったんですけど、でも結構雑にあれこれ適当に買ってきちゃった、鍋は普通の使えばいいかなとか思って」
「俺は取り敢えず土鍋を買って、お前が了承すれば一緒に材料を買いに行こうと思っていた」
「これで足ります?」
「充分だ!」
「っし!」
さっきまで冷えていた身体の内側から熱が溢れた。
「早く入ろう先輩、僕急に腹減ってきた!」
「ああ、俺もだ!」
かじかんでいたはずの手も指先までぽかぽか、握った先輩の手もあったかい。
「ねぇ先輩、その土鍋うちに置いておいていいの」
「もちろんだ!」
「やった! ありがとうございます! そうだ、うち昨日炬燵出したんですよ!」
「最高じゃないか!」
開けた玄関扉、部屋は冷え切っているんだろう、だけどそんなの問題にならない。
先輩と一緒なら、どんな季節だって楽しめるのだから。