僕はあなたを許さない「今回のことは! 一生! 許しませんからね」
人差し指を突きつけながら、ところどころ掠れた叫び声でサギョウにそう言われて、俺は──嬉しくなって、しまった。
だから笑ったんだ。その拍子に込み上げて来た血を吐いても、なお。
「おい」
自身も顔のところどころに擦り傷を作って、白い制服を紅く染めてそれでも、駆け寄って、来て、くれた、お前に伝え、たい。
「……んだ、お前……」
「あ うるせぇ! もう喋んのやめてくださいって! ──ったくひとりで変な無茶するからこんな……!」
「ありがとう」
「は」
そこから暫くの記憶は曖昧だ。
救急隊員への返答はそれなりにしていたはずだがあまり自信はない。
だが。
「……何笑ってんですかあんた。ていうかあのときもそうでしたよね?」
と、見舞いに来てくれたサギョウに
「一生許さないということは、一生近くに居てくれるという意味なんだろう? そう考えたら顔も綻んでしまうというものだ」
と、ようやく伝えられたので俺はとても満足している。
……まぁ、それを聞いた瞬間、
「……入院期間延ばして差し上げましょうか? この機会にごゆっくりおやすみくださいよ?」
と、右拳を振り上げたサギョウを宥めるのに苦労したのだが。
今となってはそれも、懐かしい笑い話だ。