ラブラブだね「それで、そのときの余のテランスといったら……とても美しくてな……」
「私のツォンも負けてはいない。最中のときのツォンはいつもと違って獣になるのでな」
……もう二人とも酔ってるなぁ……。
そう思って僕は以前ご主人様が買ってくれた『人をだめにするクッション』のなかに身体を沈み込ませた。僕は人じゃなくてダークネイションだけど。
今日はご主人様の仕事仲間の『ディオン』という人が我が家に来ている。なんでも会社の社長をしているらしく、同じく会社の社長をしているご主人様と以前仕事を一緒にしたとき、意気投合したらしい。
「余のテランスは子犬のような顔をして……しかし、夜の営みのときは激しく私を暴いていく……それがとても気持ち良くて」
「同感だ。私のツォンも仕事の時は性の気配など一切出さないのに、二人きりになったら、途端に私を雄々しく求めてくる……そのギャップにたまらなく私はそそられる」
……二人とも惚気てるなぁ……。
僕はふわぁ……と欠伸をする。二人は食事をしてワインを飲んで、静かに、だが大盛り上がりしている。二人とも恋人が大好きなのだろう。僕もツォンと一緒にいるときのご主人様が大好きだ。なぜなら顔がキリッとしていても纏う雰囲気が柔らかいのだ。僕はまだ『ディオン』の恋人に会ったことはないけれど、顔を見たらわかる。もうメロメロの表情をしているんだから。
そのとき、『ディオン』のスマホから音が鳴った。『ディオン』がスマホの画面を確認し、ご主人様にすまなそうに話しかける。
「……っと、そろそろ時間だ。すまない。テランスが迎えに来てくれる時間だ」
「で? このあとは二人の『お楽しみ』……というわけか」
「そなただって、そうだろう?」
二人はくすくすと笑いあった。そして『ディオン』は帰っていった。帰るときに玄関口からわずかに見えた『ディオン』の恋人は優しそうな顔をしていた。あの人もまるでツォンとご主人様みたいに、『ディオン』を押し倒して、自分のだって交尾するんだ……と思うと不思議な気持ちになってくる。
『ディオン』達が帰って、家の中はしんと静まり返る。ご主人様は窓の方へと移動し、夜景を見た。僕もクッションから出て、ご主人様の隣に座る。
「さて、ツォンが帰ってきたらどんな反応をするかな」
あれ? ご主人様、ツォンに今日『ディオン』が来ること伝えてなかったの?
「きっと、嫉妬するだろうな……仕事仲間とはいえ、勝手に『男』を家に上がらせたのだから」
ご主人様は僕の頭を優しく撫でてくれる。ご主人様はこれから先起こることに期待している様子だった。
「ほらきた」
するとご主人様のスマホが鳴る。きっとツォンからだ。ツォンは何か察したのだろうか。
「ふふ……今日は熱い夜になりそうだ」
僕はご主人様を仰ぎ見た。ご主人様の瞳は潤み、頬は紅潮していて、なんだか僕までドキドキしてきた。
僕は二人の邪魔にならないように、そっとご主人様のそばを離れた。