無題「入るぞ」
ノックと共に廊下から声がかかり、返事をする。
宿の自分の寝床に横たわる女の子の姿を見て、ブネは絶句した。
今回訪れた村はバルバトスが以前来たことがあり、特に親しくしている人がいた。知り合った頃は元気だったが身寄りがなく、バルバトスを兄のように慕っていた。
今は脳が病に冒された影響で意識がないが、体はまだ生きているらしい。回復する見込みはなく、医者も完全に匙を投げている。死んではいないが、元の生活に戻れるわけでもない。ずっとこのままなら、還らせた方が彼女にとっても良い。そう考えて、自分がやると申し出た。
ひと通り説明すると、この村に来てからやたら一人で行動していると思ったら、とブネは呆れてため息をついた。
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