欠片集めの行く末 どこか俯瞰して見ているような、不思議な人という印象だった。優しく大らかな人が多い南の国らしく、誰とでも手を取り合って話すことができる人。でも北の生まれらしく、ちょっとずれた倫理観も併せ持っていて――あの時握った手の冷たさは、まだ覚えている。
「考え事?賢者様。」
「…いいえ。この紅茶、美味しいなって。」
「それは良かった。ルチルが薦めてくれた甲斐があったな。」
満ちた月が、夜空を輝かんばかりに照らしている。日付の変わる間近、ひっそりと開かれた小さなお茶会。不定期に開催されていたそれは、いつの間にか満月の夜に固定されるようになった。大抵はフィガロが飲み物を用意してくれているが、たまに任務先などで見つけた茶葉などを晶が持参する事もある。
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