元、悪魔祓いのクラージィ。
彼は悪魔祓いをクビになった後いろいろあってノースディンの屋敷にちょくちょく訪れるようになっていた。
「あ!クラージィさん!来られたんですね」
ある夜訪ねると、ノースディンは留守にしていた。いつかと同じようにドラルクに暖かい部屋に通される。彼は先程までこの部屋で机に向かっていたようで、本や紙、ペンなどが机の上に広げられていた。
「ああ、勉強の邪魔をしてしまったか」
「いえいえ、どうせそんな面倒なことやってませんでしたし!」
あっけらかんと言い放つドラルクに苦笑し、では何を書き付けていたのかと机に歩み寄った。
机に広げられた紙を見るとなにやら奇妙な物体がいくつも描かれている。
「ふふ〜ん、これは私の家族です!うまいもんでしょう?これがお父様とお母様、お祖父様それから……」
興味深げに見ていたクラージィの様子をどう解釈したのか、ドラルクは上機嫌でひとつひとつ指差しながら名前を呼んでいく。
(家族の似顔絵だったのか)
なんとも言い難い絵に反応に困っていると、ドラルクは、いいことを思いついた!という顔で再びペンをとった。
少しして、
じゃーん!と新たに書き加えた部分を披露する。
そこには先程と同じ独特なタッチで描かれた似顔絵が、ただしその人物は黒くウェーブした髪(らしきもの)をしている。
「これは……」
「ふふふ!トクベツですからね!」
いや〜さすが私!世界一優しくて気が利いちゃう!楽しそうなドラルクを見てクラージィも心からの笑みを浮かべた。
「ありがとう」
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「ノースディンは描かないのか?」
「ヒゲヒゲならこれですよ」
先程の紙の隅にグシャグシャっと試し書きのような線がひかれている。
「ヒゲだけ描いときゃじゅーぶんです!」
ざまあみろ!と笑うドラルクには、ノースディンのことも家族の一員だと思っているのだなという指摘はしないでおくべきだろう、と思うクラージィであった。