見ているモノその日、映画館で意外な人の姿を見かけた武道は思わず声をかけた。
「あれ、マイキーくん? 奇遇ですね、こんなところで!」
呼ばれた声にくるりと振り返った万次郎はこんな寂れた映画館で知人に声をかけられるとは思っていなかったのだろう。おや、と目を丸くして周囲をぐるりと見渡したが、駆け寄ってくる武道の姿を認めればすぐ、にぱっと笑った。
「あ、タケミっちじゃん。さっき同じの見てたかんじ? 暗かったから気付かなかったわ」
「オレも今、後ろ姿で気付きましたから。それより、マイキーくんもこの映画に興味あったんですね! あんま話題にはなってないんすけど……」
「ん~まぁ、そんなかんじ。ねぇタケミっち、この後ヒマだろ? 飯でもいかね?」
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