お願いさ、少し笑ってせめてもの救いを残して お前が戻ってくるまでの十二年は多分、お前へ捧げた愛だったと思う。
あの日お前から未来の話を聞かされて、思ったのは『やっぱり』ってことだった。
オレの衝動はずっと腹の中にあって、それをなだめるために喧嘩している節があった。
オレは東卍の仲間が好きだし、東卍の仲間も何があってもオレについてくるだろう。
それこそ地獄だって。
エマとイザナを亡くして、失うものは何もなくなった。
いやきっと、今エマとイザナが生きていたとしても地獄へ進んでいく過程で亡くしていたんだと思う。オレが強くたって、いや強いからこそ矛先はオレの大事なものに向かうんだ。
東卍のやつらはオレのもんなんだからオレのために死んでいくのはしょうがない。
未来のオレはそう思ったんじゃないかな。
でもタケミっち、お前はオレに『違う』と教えてくれた。
東卍のやつら、一人一人に未来があって夢があって、死んでいいわけじゃない。
場地や真一郎が死んだ時の絶望を、他の誰かに押し付けちゃいけないって。
オレが未来で奪うものひとつひとつ、タケミっちにとって大事なものなら。
オレはそれを護るために、すべて手放す。
タケミっちがオレを信じてくれたなら、オレはそれに応えたい。
ヒナちゃんの手を取って皆に囲まれて、幸せになれ。
そこにオレがいなくても。いや、オレがいないからこそ完成する幸せだから。
それでもやっぱり、もう一度会えたなら。
「ありがとう」って笑ってほしい。
違う。それも嘘だ。
何も残さなければお前とのつながりなんて綺麗さっぱりなくなるのに、未練がましくビデオレターまで残して。
だってお前はヒーローだから。
オレを探して、そして叱り飛ばして。
この期に及んで救ってほしいだなんて。
それでも死ぬときに独りぼっちじゃないなんて、なんて幸福なんだろうって思ってしまったんだよ。
終わり。