奇妙な物語-幽霊トロッコ-とても奇妙な夢だったので、記録を残すことにした。
最初はよく見る現実と虚構の入り混じった夢だった。
私と油田くん、ナナチニキの三人は私の実家であろう風景の中で談笑しながら歩いていた。不思議なのはちゃんと人なのだ。ただし顔は暗い霧に覆われていて思い出せない。
油田くんはなにやら得意げに語っているが私たちはそれを聞き流しながら、タケノコのように生えまくっている金色のクリスタルを集めていた。黙々と。
「こんなに生えているものなんだねえ」なんてナナチニキに言いながらひょいひょ採る。油田くんは相変わらずきょろきょろしていたかと思うと「あそこだ!」と言って急に走り出した。
目の前にはぱっくりと割れた地面があった。
「見事に先が見えないな」
各々覗いては後ずさりを繰り返し、何か思案したかと思うとどこからともなく杖を取り出した。杖の先が光ったかと思うとあっという間に亀裂はなくなりただの地面があるだけだった。
「見事だねえ」「成功しただと!?」
そんな感じでクリスタル採取と亀裂修復は順調に進み夕方となったので実家に戻る。
おかんが夕飯を用意していたので今日の成果を称え合いながら食べた。
暗くなる前には電車に乗らねばと一同、駅へと向かう。
のどかな田舎道。
駅に着くと電車はおらず、金属製のトロッコが止まっていた。
一列2人乗りで背中合わせで四人、連結で農耕器具を積んでいた。田んぼ耕すような大型のやつ。どこからともなく現れた小さな男の子と母親がひょいッと乗り込んであっという間にトロッコは出発した。
その景色について驚くこともなければ何かを感じて話すこともなく、ただひたすらに次が来るのを待った。
次に来たのは同じくトロッコだった。
一列2人乗りは変わらず計6人乗り。
他に乗る人もおらず適当に一人一列で乗り込んだ。
不思議なことに風が体に当たることなく何かに守られている感じでトロッコは進む。電車のレールの上を。
下りに差し掛かりトンネルが見えた時それは起こった。
トンネルではない何かに突っ込んでいく私たちのトロッコ。
だんだんと体が圧迫される、気がつくとトロッコに乗っていない感じだ。
目の前にはピンク色…これは膜のようなものの中を進んでいる?押し出されるように着いたその先は地元では廃墟と呼ばれていた集落の公民館のような場所だった。
田舎の駅のホームのようなただ看板があるだけの場所に私たちは立っていた。
目の前には観光バス2台分ぐらいの人たちがいて、皆同じようにここに来た人たちらしかった。
「飲み物は建物の中などに自動販売機がありますのでそちらをどうぞ」
そんな声が聞こえたので、そちらを見るととても笑顔なお姉さんが案内をしていた。
笑顔はお面のようだった。
油田くんとナナチニキは何も気にすることなく、飲み物探してくるといい歩き出した。
私はトイレに行っておこうと建物の中を目指す。
廃墟という話だったが、ボロボロではない建物。チラシなどもそこにはある。
でもなんだか時が止まっている感覚を覚えた。
トイレに入る前に、いろんな肌で感じる違和感に気持ちが悪くなり、ここでは物に触れてはいけないような気がしたので踵を返し、建物を見て周ることにした。
そこかしこに笑顔で休憩する人がいる。みんな若い。年よりはいない。
たまにある自動販売機の品物はラインナップが古く、腐ってやしないかと疑って買いたいと思うものがなかった。
食べ物(おはぎとか)の無人販売もあった。その前に油田くんがじっと見ながら立っていたので声をかける。
「ナナチニキは?」
「飲み物を買うといってもうちょっと奥の方へ行ったからここで待ってる」
「なんだかここは様子がおかしい気がするから、とっとと出よう」
「確かに、なんかみんなずっとここにいる人たちみたいだもんな。ナナチに連絡してみるか」
油田くんがナナチニキに連絡するもつながらず。
仕方なく、散策を続けることにした。
公民館のような建物の周りは普通の住宅街が見えるが人の気配が全くなかった。
住宅を見回しているとサックスを吹く少女が見えた。
じっと見ていると音が聞こえてくるが、次の瞬間サックスだけ見えて少女が見えなくなった。
「あれはいったいなんだ?」
そう油田くんに問いかけようとしたとき、私のスマホにナナチニキから着信があった。
「いまどこにいる?」
「自販機で飲み物を買って飲んで一息ついたから合流しようと思うんだけど…周りに人が見当たらない…」
「まじか」
私と油田くんはナナチニキが向かった方向へ歩を進めることにした。
そして目にしたのは…
大量に倒れた人たちだった。
そしてそれをただ命令に従って山積みにしている人たち。
人形のような魂がない人たちを表情のない人たちが黙々と積んでいた。
ふと顔をあげるとどんな光景がそこかしこで起こっていた。まさかと思いナナチニキが倒れた人の中にいないか探してみるものの姿は見つけることができなかった。
油田くんと私は顔が青ざめたまま無言で降りたホームに戻り、公民館の方を見渡した。
結局ナナチニキとは合流できず、
ただ見まわしているところで目が覚めた。