【煉炭】狡いです煉獄さん 夏の暑い盛り、炭治郎の任務が煉獄と一緒になった。
夜になっても蒸し暑く、夜鳴き蝉の声がジワジワと騒がしい。
鬼の気配を探りながら人のいない街中の路地裏を、行燈を照らして歩いていく。
時折、行燈の火に向かって飛び込んでくる蛾や羽虫が、焔をジジと揺らし、歩く道行もゆらりとぶれた。
その時、炭治郎の鼻に腐臭が漂い、鬼のいる先を教えるかのように匂いの痕跡が道を示す。
「煉獄さん」
「うむ、君の鼻は実に頼もしいな」
匂いの痕跡が強いが、十二鬼月ほどでは無い。
しかしこの鬼も人を喰う鬼には違いない。その証に、鬼共のいる所には必ず血の匂いもするからだ。
鼻を突く嫌な匂いに顔を顰めながらも、目の前の煉獄の手がスッと炭治郎の前に伸ばされた。
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