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    hydroxidestar

    @ReinesReines

    ツバサ(紅)です。好き勝手に書いてます。よしなに

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    hydroxidestar

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    刀剣乱舞のぶぜんごとまついご。豊前ヴァンパイアと神父松井のパロ。昨日のやつにちょっと足しました!!続きます!!

    身体が熱い。頭がくらくらして何も考えられなくなる。

    (どうして僕はこの人に組み敷かれているんだ?)

    ≪吸血鬼――吸血鬼は、民話や伝説などに登場する存在で、生命の根源とも言われる血を吸い栄養源とする、蘇った死人または不死の存在。その存在や力には実態が無いとされる。 狼男、フランケンシュタインの怪物と並び、世界中で知られている怪物のひとつ。また、用語の転用として、不当に人々から利益を搾り取る人間なども指す。≫


    「ふう、今日のお仕事終わり」

    神父様さようなら~!と帰宅する子どもに手を振って松井は教会の戸締りを確認する。
    さっきの子で最後だな。明日から嵐になると言うからしっかり締めておかないといけない。
    ここは都市の中央にある教会である。松井はここの神父として宣教活動や信徒の世話に従事している。今日は土曜日ということもあって、17時からミサを行っていた。そのためいつもより子どもを連れての参加が多かったようにも見えた。

    「よし、戸締り完了」

    松井は敷地内にある司祭館に居を構えている。独り暮らしには少し大きい造りだが、使う部屋は限らているため問題はない。
    今日の夕飯はどうしようかと考えながら歩いていると、玄関の前に黒い塊があるのを松井は見つけた。

    カラス?いや、カラスにしては大きすぎるし、よく分からない。

    そろそろと近づいて見てみると、その塊は人だった。うずくまっていたから、塊に見えたようだ。
    もう夜も更けてきた。このまま外に放置するのを心配になった松井は、その者を担ぎ上げて司祭館の中へと入れた。
    呼吸はしているし、体温もまだある。よかった、死んではいない。

    来客用の部屋に入り、倒れていた者をベッドに寝かせる。顔は傷だらけだ。歳は自分と同じくらいだろうか。髪の毛はサイドが短く、真ん中で分けられていた。黒い髪がよく似合う――男だ。

    いまどきゴシック調の服を着ているのは珍しいと思ったが、好む者もいると聞いたことがある。この男が着ている服は年代を感じた。
    ぬるま湯に浸したタオルで顔や手を松井は丁寧に拭いていく。傷から菌が入り炎症でも起こしたら死に至る可能性は否定できない。

    「それにしても、この人はいったいどこからやって来たんだろう」

    今日のミサにはいなかった。旅人だろうか。いや、それにしては持ち物が少なすぎる。

    「……うっ」
    「あ、良かった。目が覚めた?」
    「……この匂い、まつい?」
    「え?」

    額に乗せていたタオルを取ろうと腕を伸ばしたところ、逆に腕を掴まれて松井はベッドに押し倒されてしまう。刹那、首筋に微かな痛みと熱を感じて噛まれたことを知る。

    (歯を、たてられている?)

    「――…ッう」

    首筋に唇が強く当てられて、血を吸われていると理解したのは強烈な痛みが襲ってきたあとだった。男は血を吸って満足したあと、舌で首筋を何度か舐めた。

    昔、書物で読んだことがある。吸血鬼の唾液には痛みを麻痺させるための軽い興奮作用と、傷口の再生を促す能力があるのだと。

    男は先ほどよりも血色が良くなり、ベッドサイドに腰を下ろした。

    「あー、生き返った」
    「ちょっと、勝手に人のこと襲っておいて生き返ったはないだろう」
    「うん? あんた、もしかして、神父か!?」
    「もしかしなくても神父です。僕は松井と言います。君はどうやら」
    「ああ、察しの通りヴァンパイアだよ。ヴァンパイアの豊前だ。懐かしい匂いがしたから来てみたら、あんた神父ってまさかかよ」
    「けれど、辻褄が合わない。ヴァンパイアは300年程前に絶滅したそうじゃないか」
    「俺が、その生き残りって言ったら、あんたはどうする?」

    生き残り、だって?
    豊前の問いに松井の思考は停止する。どういうことだ。このことがいま、血盟議会に知れ渡ったとしたら。

    「血盟議会はおろか、街は大騒ぎになるよなあ」
    「……うん、君を上に報告するのはしばらく止めておくよ。今は君も弱っているみたいだしね」
    「あんた正気か?」
    「弱っている者はヴァンパイアでも放っておけないよ。ところで、豊前と言ったね。さっき、君が名前を呼んだ『まつい』と言うのは…?」
    「ああ――おそらくあんたの先祖だと思う。匂いが同じだしな。あいつは、まついは俺を唯一恐れなかった人間だ」


    昔々。かつて吸血種と呼ばれるヴァンパイアと、人間種――所謂人間は暮らす中で境界線はなかった。しかし、次第に吸血種が人間種を襲うようになり、彼らの長老たちは話し合いの末に住む場所を決めた。吸血種は山側、人間種は海側に住むこととなった。境界線には魔術師が結界を張り、超えることの出来ない柵までが作られ平和に暮らしていた。

    「そこまではあんたも知ってるだろう?」
    「ああ。教えてもらった。この頃までは平和だったと」
    「平和ね…」

    しかし、上手くいかないのが種族の違いと言うもので。
    人間種は栄えたが、吸血種は混血を望まないために減少していった。
    加えて、吸血種が人間種を襲う事件が頻発したため、人間種の血盟議会は吸血種を絶滅させることを計画する。
    まず実行したのは、吸血種の貴族の抹殺。記念と称し城の晩餐会に招き、血と偽ったワインに毒を盛り、弱ったところで心臓をひと突きして殺害。城を燃やし、二度と生き返ることのないようにした。
    それからは吸血種でも弱い立場の者を捕えて地下牢に閉じ込めという作戦に出る。
    吸血種は人間と同じ食事こそ摂れるが、やはり血液を摂取しないと身体が維持できなかったようだ。人間種はそれを狙った。
    捕まった吸血種は日に日に弱っていく。抵抗できないところを見定め、心臓をひと突きして殺害する。
    こうして、300年前に吸血種は絶滅したと書き記されている――。

    「だったら、どうして、君は生きているんだい?」
    「俺はあの時、あんたの先祖に逃がしてもらったんだ。あいつはお人好しだったよ。俺が襲うかもしんねえって言うのに、そんなことはないって笑うんだぜ?バカみたいだろ」
    「そうか…うちの系譜でその人だけ名前に二重線があったのはそういうことだったんだ…」
    「あんたは、ほんとにあの時のまついと同じ匂いがするし、生き写しなんだろうな。なあ、あんたにお願いがあんだけど」
    「なんでしょうか」
    「あんたに、」

    俺の心臓を飲んでほしい。

    「はい?いま、なんて…」
    「だから俺の心臓を飲んでくれって言ったんだ」
    「待って待って。その心臓は確か限定の人にしか飲ませられないんじゃなかった?」
    「……もう、疲れたんだ。俺は吸血種の始まりの家系だ。永遠の命っていわれてるけど、あの日家族は死んだ。俺は運良く生き延びて今ここにいるが、もう、生きることに疲れた……」
    「豊前くん……」

    豊前は窓の外を見つめていた。
    彼はあの時からずっと1人で生きてきたことを思うと胸が痛んだ。

    「ねえ、豊前くん。ここで暮らさない?」
    「は?あんた、なに言って……」
    「僕は君の心臓を飲むことはできないけど、一緒の時間を過ごすことならできるよ」

    彼の過ごした空白を埋めることができたなら。松井は膝をついて、豊前の白い手を握った。

    「……はは、変な奴。ほんと、そっくりだよあんた」
    「よかった、やっと笑ってくれたね」
    「あと、もう1つお願いがあんだけど」
    「お願い多いね豊前くんは!?」
    「あんたの、松井の血を飲みたい。毎日じゃなくていい、2週間に1回でいいから。松井の血じゃないと、ダメみたいなんだ」

    豊前は捨てられた仔犬のような瞳で松井を見つめてくる。そんなの卑怯じゃないか。

    「はあぁ…分かったよ。その代わり、僕の助手としてしっかり働いてね」
    「さんきゅ。松井はやっぱ優しいな」

    豊前は歯を見せてにこりと笑う。当時はモテていたことが安易に想像できる。
    だが、松井は少し複雑だった。

    (君が見ているのは、僕じゃなくてかつての先祖の松井だろう?)

    たった、それだけのことなのに松井は何とも言われない気持ちになった。

    (何なんだろう、この感情は)

    彼はヴァンパイアで、自分は神父だ。
    間違ったことがないようにしないといけない。
    一気に情報が入ってきて脳がパンクしそうだ。

    「…はあ、とりあえずご飯作ろう」
    「え、俺も食いたい」
    「じゃあ、手伝って。その後はお風呂に入るんだよ」
    「えええ、風呂苦手なんだけど」

    松井の後ろにくっついて歩く豊前は、まるでカルガモの雛のようだ。

    (彼が元気になって、愛しい人に心臓を渡せるといいな)

    慌ただしい1日は騒がしく過ぎていった。
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    Lope

    DONE本丸クリスマスパーティーを抜け出して一人で居た長義くんのもとへりいだあと松井くんがやってきて……というところから始まる、長義くん一人称のぶぜまつです。

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    監視対象・江の者③ 誰も居ない夜の実務作業部屋。静けさが恋しくなって、この俺、山姥切長義は聖夜の宴からこの部屋へと抜け出してきた。ついでだから、江の者たちの最新の観察報告も政府に提出してしまおうか。俺は実務に使うものとは別の端末を立ち上げて、編集途中の文書ファイルを開いた。
     江の者の中でも、特に重要な観察対象は豊前江である。最近、新たに顕現した五月雨江・村雲江をともに『すていじのれっすん』、いわば歌舞音曲の稽古に誘って、そこからすぐにその二人も江の仲間としてまとめ上げていたようだ。そのような情報を踏まえると、やはり豊前江のその求心力には目を瞠るものがあると思う。
     その豊前江は今、同じ江の男士である松井江に想いを寄せている。その恋慕の情は、きっと豊前江と本丸を繋ぎ止める鎖になるだろう。そう考えて、俺はその恋が少しでも長く保つよう立ち回っている。
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